“超”私的エクストリームな瞬間

過酷な競技に情熱を燃やす男たち【トライアスロン】

株式会社ゼットン 代表取締役社長 稲本健一/株式会社エー・ピーカンパニー代表取締役 米山久

写真/松井康一郎 文/大野重和(lefthands) | 2013.04.10

いま、CEOたちの間で密かなブームとなっているのがトライアスロン! スイム、バイク、ランの3種目を戦う中で、自らを律し、鍛え、体力と精神力の限界に挑む。そんな過酷な競技に情熱を燃やす、2人を取材した。

株式会社ゼットン 代表取締役社長 稲本健一/株式会社エー・ピーカンパニー代表取締役 米山久  

●株式会社ゼットン 代表取締役社長 稲本健一(いなもと けんいち):1967年12月11日名古屋生まれ。93年、期間限定ビアガーデンのプロデュースを手掛けたのをきっかけに飲食ビジネスの世界へ。95年、株式会社ゼットン設立。レストランウェディングにも進出。2009年、東京・横浜・名古屋に展開するアロハテーブルのフラッグショップをワイキキにオープンするほか、横浜マリンタワー再生にも携わる。現在、東京・名古屋を中心に65店舗を展開。飲食を通して街の活性化、新しい文化の醸成に取り組んでいる。

●株式会社エー・ピー カンパニー代表取締役 米山 久(よねやま ひさし):1970年、東京都生まれ。不動産業、販売代理店、海外挙式のプロデュース業などを経て、2001年APカンパニーを設立。ダーツバーを出店して、飲食業に参入。04年、みやざき地頭鶏専門居酒屋「わが家」を出店。06年、宮崎県に農業法人を設立、自社養鶏場と加工センターを立ち上げる。08年度外食アワードを受賞。11年、自社で定置網漁を開始し、漁業でも第一次産業へ進出。12年、東証マザーズ市場に上場。現在は13業態139店舗を展開。

稲本 そもそもスタートラインに立てた人は、みんな勝者だと思うんです。挑戦しようと思って、そこにいるだけでね。あと、レース中に選手同士が互いを応援し合うような競技もトライアスロンだけ。究極の個人競技的団体競技だよね。

米山 僕はこれまでゴルフ一辺倒だったんですが、稲本さんとか憧れの先輩たちがトライアスロンをやっていて、カッコよさそうだったから。いま5年目くらいかな。

稲本 俺は8年目。最初は、ロンドンマラソンに出てたんですよ。そうしたら、そこで会ったプロアスリートの白戸太朗氏っていうアイアンマンが「トライアスロンをやってみたら」ってすすめてくれて。「でも俺、泳げないし」って断ったんだけどね。後から、飲み屋でつい「やる」っていっちゃったんですよ。それが3月くらいの話で、すぐ7月のロンドン・トライアスロンにエントリーしちゃった。

渋谷の区民プールに毎日通って、闇雲に泳ぎましたよ。それで、とうとう大会になったんだけど、意外にも3時間を切る好タイムが出て、「俺ってイケる!」って。ところが、次にロタ島の大会にエントリーしたら、脱水症状であっけなく倒れた。やっぱり奥深いんだなと、身を以て知りましたね。

米山 僕は銚子マリーナトライアスロンが最初。実は僕も平泳ぎしかできないのに、エントリーしちゃったんですね。そしたら、ウエットスーツ着てて身体が浮くから、足が全然かけない。溺れかけながら、なんとか完走しましたけどね。その後、猛烈に練習しましたよ。やっぱり、泳ぐのが一番ハードル高い。

「挑戦し続けるために。俺はトライアスリートとして生きる」(稲本)

稲本 でも40歳過ぎて、新しいことに挑戦できるっていいじゃないですか。ここ5、6年くらいかな、特に経営者の間でブームになってきましたよね。フィジカルもメンタルも鍛えなくちゃっていうのがあるんでしょうけど。とにかくリスクが多くて、危機対処能力が付くんです。

米山 トライアスロン、キツいけど楽しいですよね!

稲本 トライアスロンで知り合った仲は、苦楽を供にするから、繋がると深いよね。相手がどんな大きな会社だろうが関係ない。手加減もありえない。だからこそ、完走した後に一緒に見る景色っていうのが、まるで違ってくるんです。

米山 これからの限られた時間をどう過ごすかって、考えるじゃないですか。そうしたら、もっと刺激ある環境に自分を置いて、高めていきたいなって。実際、走り抜いたときの達成感は、半端ないですよ。

稲本 会社を経営していくって、ゴールがないじゃないですか。でもトライアスロンでは、ゴールのすごい感動を何度も経験できる。

米山 知らない人と抱き合って、喜びを分け合う。あの感動って、ほかにないですよね。

「なくてはならない、僕のライフスタイルそのもの」(米山)

稲本 トライアスリートって、ジェームズ・ボンドっぽいと思うんですよ。あんなに泳いで、自転車こいで、まだ走ってる! みたいな。男ならやっぱり、そういうタフさに憧れますよね。

米山 僕は散々ゴルフをやってきたけど、趣味を訊かれたら、トライアスロンって答えます。下からも尊敬されるしね。

稲本 トライアスロンって、本当に難しいし、辛い。ただ何度も気持ちは折れるけどリタイヤできないんですよね。ゴールを約束した友達と、最後に美味い酒を飲みたいから。

米山 僕はレース中に心が折れそうになったら、仕事の大きな壁とか、ムカつく奴とかのことをいつも思い出すんです。その中で戦って勝ち抜いたら、不思議とすごい自信を持って帰れるんです。なんていうんだろう、トライアスロンって、もう僕にとっては、ライフスタイルそのものなんですね。

稲本 生き様だよね。トライアスロンはライフスタイル。だからこそ、トライアスリートとして挑戦し続けて生きていけるんだよね。

愛車を前に立つ、ゼットン稲本社長(右)とエー・ピーカンパニー米山社長(左)。鍛え上げられた肉体は、プロアスリートさながら。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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