ヒラメキから突破への方程式
ロケットベンチャー株式会社
代表取締役
龍川 誠
写真/宮下 潤、動画/トップチャンネル、文/福富大介 | 2015.08.10
ロケットベンチャー株式会社 代表取締役 龍川 誠(たつかわ まこと)
1985年生まれ、法政大学出身。中学時代に読んだ数多くの実業家関連の書籍に影響を受け「世の中をより良くしたい」と、起業家を志す。大学時代より、音楽ビジネス、Webサイトの制作、飲食店の立ち上げ、通販化粧品等のECサイトの運営など、様々なビジネスを行う。2013年12月、ロケットベンチャー株式会社を設立。女性向けキュレーションメディア「4meee!」「4yuuu!」を運営し、2015年2月、約6億円の出資によりエニグモ社の子会社に。
幼少の頃から「大きな事を成し遂げたい」という思いを抱いていた龍川氏は、大学に進むと化粧品ブランドや女性向けEコマースなど、さまざまなビジネスを立ち上げる。持ち前の社交性も功を奏し、この時期にネットワークは急速に広がった。
やがてビジネスを通して、文化やトレンドは女性がつくっていることを確信。女性が何を考え、何を求めているのか、それが龍川氏にとって最大の関心事となった。女性の「可愛くありたい!」という思いを実現するために必要なものとは? 24時間・365日、女性の心理ばかりを探求し続け、たどり着いた答えが“情報”だ。
「女性は自分を輝かせるために、女性誌から最新の情報を得てきたことに気付いたのです。しかし、スマートフォンが爆発的に普及したことよって環境が大きく変わりました。彼女たちはスマホを駆使して、より最新の情報へ、今までよりもはるかに気軽にアクセスできるようになった。これは僕にとってもチャンスだと感じました」
龍川氏はスマートフォンでの利用を意識した女性向けメディアを立ち上げるため、2013年12月にロケットベンチャー株式会社を設立。創業メンバーとなる双子の桑山姉妹の存在も、ビジネスの立ち上げを後押しした。
「ひとりは開発のプロで化粧品マニア。もうひとりは検索エンジンを熟知したSEOマスター。この2人と組むことが決まった時点で、ある程度“イケル”という感覚はありました」
さらに龍川氏のネットワークには、ファッションモデルなど常に最新トレンドが身近にあり影響力を持った女性たちもいた。スタートの時点でヒットのお膳立ては整っていたかのように見える。
ただし、やりたいことはあってもそれを実現するための資金は潤沢とは言えなかった。投資家を説得するにも、確かな根拠が求められる。
「キレイな事業計画書を作ってビジネスモデルが有望であることを説明することは可能かも知れませんが、確かなことが何もないスタートアップにとって一番大事なのは“人”。ビジネスをやる人間が熱意や諦めない精神を持っているか、仲間を巻き込む力があるかどうかが大事。つまり全ては人間力なんです」
龍川氏の人間力が評価されたのだろう、資金面でのハードルを何とかクリアし、ロケットベンチャー設立から半年後の2014年6月、20代を中心とした女性向けキュレーションメディア「4meee!」がローンチ。しかし、できたばかりのメディアに人は集まらない。
「大事なのは、ユーザーがそのメディアを訪れる“理由”だと思いました。女性は誰でもお気に入りのブランドがあります。それはブランドが女性を惹きつけてやまない存在だからです。
そこで、僕らもまずはブランドを構築することに専念しました。僕らのブランドを愛してくれるユーザーはどんな人なのかを細かく分析して、その人たちに響くコンテンツをアップし続けたのです」。
コンテンツの書き手は「キュレーター」と呼ばれるユーザーと同世代の女性たちだ。
「Web上にはコンテンツがあふれており、どの情報を信じたら良いのかわからなくなっています。そこで信頼できる“キュレーター”によって情報を再編集することにしました。キュレーターは必ず実名で、自分の言葉で情報発信します。オリジナリティはブランド構築のために徹底的にこだわった部分です。
現在登録されているキュレーターは300~400名ですが、これは最新のトレンドをいち早くキャッチするため。数多くのキュレーターによる多様な情報との接点が必要だからです」
既にある程度の知名度と影響力があり、周囲から“アイコン”として注目される女性たちが、「世界中の女子を可愛くする。」というロケットベンチャーのビジョンに心から共感してくれたのも大きい。インフルエンサーである彼女たちの積極的な協力によって、「4meee!」の認知は爆発的に広まり、ローンチからわずか1ヵ月後、月間ページビュー100万を達成。新規メディアが軌道に乗った瞬間だった。
「今後は、僕らのメディアを通して購買につなげたい」
これまでブランドを強く意識したメディアづくりに注力してきた龍川氏だが、いよいよ次のステップに踏み出した。情報を受け取ったユーザーが、メディアで紹介されているコスメなどの商品を購入し、それを使うことによって可愛くなる、という流れを推し進めようというのだ。
「既に日本国内では実現できていますが、海外を視野にいれた場合、言葉の問題があって難しかった。自分たちのメディアを翻訳することはできますが、商品を提供するECサイト全てを外国語対応にするのは現実的ではありませんから」
そこで、2014年2月にグローバルなファッション通販サイト「BUYMA」を有するエニグモの連結子会社となった。これによって、一気にマーケットは世界に広がる。
「世界中の女子を可愛くする。」ために、世界へと本格的に踏み出した龍川氏。今まで以上のスピードで成長するロケットベンチャーと龍川氏から、当分目が離せそうにない。
vol.56
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