“超”私的エクストリームな瞬間

【ドラム】

音楽は人生の一部。ずっとバンドをやっていきたい

保険マンモス株式会社

代表取締役社長

古川 徹

写真/宮下 潤 文/藪下佳代 | 2013.12.10

とある週末、都内のスタジオに集まったバンドの面々。演奏が始まるやいなや、その腕前に誰もが唸る。それもそのはず、このバンドのドラマー・古川社長は、かつてプロとして活動していたというのだ。CEOになった今もなお、情熱的にドラムを叩き続けるそのわけは。

▲バイオリン 小林明香/ギター 中野秀昭/ベース 鈴木裕幸/キーボード 倉田澄也

保険マンモス株式会社 代表取締役社長 古川 徹(ふるかわとおる)

1964年、滋賀県生まれ。早稲田大学商学部卒。大学在学中、ロックバンド「聖飢魔II」でデビュー。才能に自信が持ちきれず、約半年で脱退。大学卒業と同時に旭化成に入社。安定志向の大企業の中で、息苦しさを感じるようになり、当時成長著しいソニー生命へ転職。約4000人の保険営業マンの中で最高職位であるエグゼクティブライフプランナー(部長)に7年で昇格。その後、インターネットで、保険商品の比較ではなく、「選択基準を啓蒙する」良質な保険情報を発信すると同時に、相談者と生保系FPをマッチングさせるサービスの事業アイデアで2005年起業。保険情報サイト「保険マンモス」は、約4年という短期間に月間100万人の訪問者を誇る。著書に「めちゃくちゃ売れてるZAiが作った保険の本 保険は三角にしなさい!~生命保険で500万円トクする魔法~」(ダイヤモンド社)。

力強いヴァイオリンの音色に、軽快にリズムを刻んでいくドラムとベース、息もぴったりなギター、キーボード……。今回、演奏してくれたのは「Spain」というジャズナンバー。

「ほんとうに好きな楽曲なんです。ヴァイオリンはプロとして活躍している小林明香さんです。今回、ジャズサンバのリズムのこの曲を選んだのは、僕自身、サンバが得意だというのと、バンドのメンバーとのインプロビゼーション(アドリブ)がたっぷりできる、自分の一番好きな音楽スタイルだからなんです。

今回は撮影までに練習時間がなくて、しかもそれぞれの楽器にマイクを立てない一発取りだったので大変な緊張感(笑)。多少のミスもありますが、臨場感がでていて良いものが撮れているんじゃないでしょうか」

趣味というにはいささか本格的にすぎるかもしれない。

「それぞれ別の職業を持っていますが、音楽の仕事を受けたりしているメンバーもいます。なかなか忙しくて集まれないですけどね。

私は普段は週末に30分位はドラムを叩きたいと思っている感じですね。正直なかなか時間を取れていませんね。ライブをやる前などはもう少しがんばりますが(笑)。

それと、実は今、レギュラーバンドのキーボードが体調不良で現在活動停止中なんです。キーボードの倉田さんとは最近一緒にやるようになって、曲には迷ったんですが好きな曲SPAINをやろうと考えました。ギターとベースは昔からよくやっている仲間です」

※「このメンバーでのSPAINは初めて。収録日に約一時間合わせて、即録画した。音声の修正加工は一切できない一発撮りで。全体の音のバランスを、生音の状態で取る必要があり大変だった」(古川社長談)

高校時代はロック、学生時代はフュージョン、社会人になりジャズへと傾倒。いまのバンドスタイルになった。

ドラムという楽器とは、中学2年生の時に出合ったという。それ以来、ドラム一筋。中学、高校とバンド活動を楽しみ、大学時代にはプロを意識し始めた。

「デーモン閣下の聖飢魔Ⅱではない、ほかのバンドを手伝っていて、それはフュージョン系バンドでした。聖飢魔Ⅱがソニーのコンテストに受かって、デビューすることに決まったんですが、2代目のドラマーが脱退して。

そんな時、閣下から『やってみる?』という話があって。1カ月くらい悩みました。化粧して、逆毛立てて、スティックも回さなきゃいけないですから。けっこうスティックまわす練習しましたよ(笑)」

聖飢魔IIに入ったのは、世を忍ぶ仮の姿だったという大学3年生の時(古川氏は現在「人間」だが、当時は「悪魔」だった)。三代目ドラマーのジャギ古川として活躍した。

しかし、数カ月後に脱退を決意。スーツに身を包んで旭化成に入社、同社に10年勤務する。その後ソニー生命で9年活躍。その経験を生かしてウェブで保険の集客をする「保険マンモス」を立ち上げた。

その紆余曲折の人生のなかにも、いつどんなときも変わらず、ドラムがあり、いくつかのバンドとそのメンバーが傍にいた。

「今回のメンバーは中でも一緒に音楽が楽しめる、ほんとうにいい仲間達ですね。音楽のことを一言では表現しがたいけれど、人生の一部。年齢と共にだんだんと音楽への解釈が深まってきているのがわかります。合奏しながら、音でコミュニケーションする時も、その感覚がよりこなれてきていて、ほんとうに楽しい」

中2の時、本当はギターをやりたかったがドラムへ。「すぐに8ビートが叩けたので、才能あるなと(笑)」

仕事と趣味。それはつまりオンとオフとはよく言われることだが、古川社長にとっては「どっちも、オン」。

「音楽も仕事も集中してやるけれど、複数の人がチームで表現していくという意味では同じなんです。仕事も“表現”ですね。

バンドのなかで、ドラムという立場はすごく大事です。ドラムの力でそのバンドのダイナミクスのレンジが決まってしまう。大きな音が出るだけに、音楽全体を壊してしまうリスクもあります。だから、ドラムのセンスの善し悪しがバンドの善し悪しにも大きく関わってくるのです。

ドラムって一般的に後ろにありますが、メンバーや全体の動きを見ながら、コーディネートしていく立場。そういう一歩引いた視点は、会社の経営と同じだと思っていて。

社長は、社員というプレーヤーが最高のプレーをできるように環境を作ったり、面白い仕事をつくったりする役割。バランス感覚もすごく大事だし、ドラマーと経営者に求められる資質には共通点があると思っています」

ドラマーとして切磋琢磨すればするほど、仕事にも好影響が出る。そのいい循環が、社長になった今もバンド活動に真剣になってしまう理由なのだろう。

「これからも、もちろん限られた時間のなかではあるけれど、10年、20年と、成長していけるようなバンドになるといいなと思っています」

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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