“超”私的エクストリームな瞬間

【極地ウルトラマラソン】

未知の世界を見てみたい、 という気持ちが強いのは ビジネスでも同じ

インフィニティ・ベンチャーズLLP

共同代表パートナー

小野裕史

写真/宮下 潤 動画/トップチャンネル 文/山祥ショウコ(lefthands) | 2014.06.10

モバイルサイトの創世記から起業し、ベンチャー企業の投資家へと進化してきた小野代表。体重オーバーの元ゲーマーが、なぜ北極・南極・砂漠など極地でのウルトラマラソンを完走するまでに進化できたのか。

インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナー 小野裕史(おのひろふみ)

東京大学大学院理学科研究科在学中から個人でモバイルメディアを複数プロデュース、2000年よりシーエー・モバイルの創業に携わる。100以上のモバイルサイトをプロデュースし、会社を業界トップクラスへと成長させる。2008年1月にインフィニティ・ベンチャーズLLPを設立、グルーポン・ジャパン、サンシャイン牧場Rekoo Japanなど国内外のベンチャー企業に投資を行うとともに自ら投資先の企業の経営に参画。2009年からランニングを開始。以来、今までに南極・北極・砂漠・富士山など過酷な条件の長距離マラソン多数完走。

休みの日にはゲーム。人生35年間運動歴ゼロ。今より20kg重い体重だったインフィニティ・ベンチャーズLLP共同代表の小野裕史さんを北極でマラソンを完走するような男に変えたのは、やはりゲーム。任天堂のWii Fitだった。

「ある日Wii Fitのバーチャル・ランニングをやってみたんです。部屋の中で走るとそれに合わせて景色も変わる、という。でも所詮家の中なのでぐるぐる回るだけだとあまり面白くなくなってくる。『じゃ、外走ろうか』とリアルランニング・デビューしたことが始まりです」

初心者らしく、最初は5kmのウォーキング程度。しかしそこからいきなり飛躍してしまうのが、小野共同代表パートナーの小野代表たるゆえんなのか。ランを始めて3ヶ月後のフルマラソンにいきなりエントリーし、完走してしまうのだ。

「ランニングを始めたのが2009年の8月。エントリーした福知山マラソンは11月。フルマラソンを申し込んでから、その前に一度ハーフを走っておこうと10月のハーフマラソンも申し込みました」

聞けば聞くほど、もう無茶苦茶である。しかも、フルマラソン初挑戦にして4時間9秒という完走記録は、決してビギナーズラックや記念受験的なものではない。

「これは起業と同じアプローチなんですよ。無理かもしれないと思えるような高い目標を設定する。それを達成するため期限ごとの中期目標を設定する。その中期目標を達成するために毎日やることを決めて、積み重ねていくんです」

とはいえ、経営では作業分担したり、タスクをアウトソーシングできたりするが、ランニングはとにかく自分で走らなくては話にならない。積み重ねた距離と練習が、そのまま自信となる。

「僕はちゃんとコーチについたことはないんです。インターネットという本業の力を発揮してリサーチ、トレーニング方法や最新理論を自分で探しました。ただ、走る体が出来るまでは怪我も多く、そういう時もポジティブに割りきって筋トレだけをやったりとか」

目一杯楽しみたい。だからマイナス50度の極地でも忍者のコスプレで走った。忍者らしさを増すために腰に巻いた赤い布に汗が氷結し、体調不良となるハプニングも、すべて楽しむ。

かくして、サブフォー・ランナー(フルマラソン4時間を切るランナー)まであとたった9秒、という悔しさが、小野共同代表パートナーをどんどんランニングへとのめり込ませていったのだった。

ランニング歴11ヶ月でウルトラマラソン=100km初完走。2年目にはゴビ砂漠250kmマラソン19位で完走。3年目にはついに北極でのフルマラソンに挑戦、完走(北極の気温はちなみにマイナス50度)。南極100kmマラソン、2位で完走(北極よりも寒暖差が激しく一日で20度近く気温が上下)。

その間「どうせなら目いっぱい楽しみたい」とコスプレで走ることにも目覚め、大会のときには大根や忍者の格好をするようになる……もはや起業家というよりお笑い/アスリート!?

「いやいや、僕はベンチャー投資家です(笑)。ビジネスマンとアスリートは本来似ているところがあります。ビジネスとは、“新しいチャレンジをして、うまくいかなかったら、その対処方法を考えていくこと”。

例えば僕が尊敬するリチャード・ブランソンはヴァージン・グループの創業者で今は宇宙旅行ビジネスに進出しているけれど、元々は雑誌を創刊するところからスタートしてますよね。彼自身、気球レースなどの冒険に果敢に挑戦している。アスリートも目標を設定してチャレンジしていく」

「未知の世界を見てみたい・体験したい。ワクワクする。インターネット事業を始めたときと、過酷なランニングレースに挑むモチベーションは同じところにあります」

アタカマ砂漠マラソン250kmはチームで走った。自分の荷物は自分で担いで走るノーサポートの大会なので、荷物をギリギリに軽量化するも、大根の衣装はしっかり持参。

一見ただの“変わった人”に見えるコスプレでのランにも、小野代表ならではの思いがある。それは「恩返し」だ。

「心の弱い自分はすぐに言い訳を見つけて休んだり辞めたくなったりしてしまう。でも走るときに『ありがたい』『楽しい』と感じるのは、沿道やインターネットで応援してくれている人たち、大会スタッフのサポート、それに僕と同様自分と闘いながら走っている周りのランナーの存在なんです。

そういう人がいないと、走り続けることはできないでしょう? なので、彼ら彼女らに、走ることで恩返しができないだろうか、と考えて始めてみました」

そもそも大根やらバナナやら忍者やら、そんな格好でマラソンを走るなんて「ありえない」わけで、見ている誰もがついクスッと笑ってしまう、と小野代表。なるほど、確かに。

過酷なウルトラマラソンを走るようになって、小野共同代表パートナーには20kgの減量以外に何か目覚ましい変化があったのだろうか?

「変わりましたね。マインドセットが鍛えられました。例えば100を目標にしていると、実際、100到達できるかできないかのラインに落ち着きます。でもそれをいきなり単位がヒトケタ違う1000、という極端に高い目標をドカンと持ってくると、もう100の達成なんてちっぽけなもの、という錯覚が起きるんです。それに取り組むうちにいつの間にか100という当初の目標もやすやすとクリアしている。

ランニングでいうと『今日11km走ろう』と決めてると『まだ5kmか』『まだ8kmか』と感じますが『40km走ろう』と決めて走りだすと11kmはあっという間に通過しています。それと同じです」

SUPER CEO Back Number img/backnumber/Vol_56_1649338847.jpg

vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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