“超”私的エクストリームな瞬間
株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長
白石徳生
写真/宮下 潤 動画/トップチャンネル 文/東 雄介 | 2015.02.10
株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長 白石徳生(しらいしのりお)
1967年、東京都生まれ。拓殖大学政経学部を卒業後、90年に株式会社パソナジャパンへ入社。96年、パソナの社内ベンチャー制度を利用し、ビジネス・コープ(現ベネフィット・ワン)を設立、取締役に就任。2000年6月から現職。2004年にJASDAQ上場、2006年に東証二部上場。福利厚生のアウトソーシングを主事業とし、総会員数は約620万人。富裕層向けサービスとしてプライベートクルーザーのチャーターサービスも提供している。
「船になんて、昔はこれっぽっちも興味がなかったのに……」という白石氏が、突如としてクルージングに魅入られたのは、15年ほど前のこと。ベネフィット・ワンを創業し、軌道に乗せるまでの「仕事オンリー」だった時期を経て、ようやく気持ちにも事業にも"ゆとり"が生まれた頃だった。
「書店で、ふと手にした雑誌に載っていた『メガヨット』の写真を見て、衝撃を受けたんです。美しいデザインもさることながら、ダイニングやベッドルームまである、まさに『海上を移動する家』です。カッコ良かったですね。それで、すぐに船舶免許を取得して、『ベイライナー』という小さな船を買いました。事業を拡大させて、もっと大きな船を手に入れよう、と夢を描きながら」
果たして、その夢は着々と実現しつつあるようだ。現在、白石氏はゴールドコーストに1艇、国内には自社の会員用クルーザーとして4艇を所有している。
「要は、趣味と実益を兼ねてクルージングサービスを会社の事業にしているんです。欧米ではクルージングが文化として確立されていますが、日本は海洋国家にもかかわらず圧倒的に立ち後れている。私たちの手でその文化をつくりあげていくには、自分たちで実践していないと、旬を読むことは難しいですから」
さて、ひとくちにクルーズといっても、その楽しみ方は一様ではない。船を所有し愛でる楽しみもあれば、運転する楽しみ、仲間と海上パーティーへと繰り出す楽しみもある。では、白石氏にとってはどうか。
「僕は大型客船でのんびり長旅をするのも好きだし、自分で運転するのも好き。特に、ゴールドコーストに所有しているような船は、圧倒的なスピード感を味わえます。1人で海に出るか、皆で海に出るかでもまた楽しさが違う。1人で早朝、誰もいない海で船を走らせる気持ち良さはたまりません。
ただ頻度でいったら、仲間と一緒にわいわいパーティーすることが多いかな。海の上で音楽を聞いたり、お酒を飲みながらおしゃべりしたり。夏の夜の東京湾クルーズなんて実に素晴らしい。海外旅行をすれば、その土地で船をチャーターする。数えてみたら、もう100以上の海に出ています。僕にとってクルージングは、非日常でも、ストイックなものでもない。船がいつも側にある日常が好きなんです」
船はライフスタイル、常に自分の身近に存在するもの。それ故に、クルージングは遊びにも、仕事にもなり得るのだろう。
実際、白石氏は「仕事とプライベート、オンとオフの区別はない」という。
「経営者仲間とクルーズに出れば、自然と仕事の話にもなります。広い海の上で、ギラギラと輝く太陽を浴びて、お酒が入ると陸上とは全くレベルの違うコミュニケーションが生まれる。立場が似ているもの同士、深いところまで話が及ぶこともしばしばです。
それと、クルーズ中に新しいアイデアがひらめくことも多いんです。これは昔、先輩に教わったことでもあるんですが、机の前にじっと座っていて良いアイデアは生まれない。常に体を動かして脳を活性化させろ、と」
それにしても、今やベネフィット・ワンのサービス利用客は、会員数620万人を超えている。SUPER CEOとして多忙を極める白石氏は、一体どうやってクルージングの時間を捻出しているのだろう。
「効率的な時間の使い方を考えればいいんです。ビジネスとプライベートを一緒にして楽しんでしまうとかね。船は、そのために欠かせないツールの一つ。例えば、大切にしたい取引先の人と会ったら、まずクルージングに誘っちゃうんです。そこで親しくなれれば、クルージングと接待と友人付き合いがいっぺんに叶いますからね。第一、仕事も遊びも、より一層楽しめるようになるじゃないですか」
人生の目的は「楽しむこと」と明言する白石社長。だが、その"ゆとり"を初めから手にしていたわけではない。創業からおよそ2年間は赤字が続いた。会社に泊まり込み、仕事以外のことを考える余裕もなく膨大な量の業務をこなした。そしてようやくつかんだ"ゆとり"なのである。
「その"ゆとり"をまた仕事に注ぎこむ生き方もあると思いますが、僕はほかにも楽しみたいことが山ほどある。事業の拡大にともなってひとつずつ、そういう楽しみを手に入れる。それが仕事に向かうモチベーションを高めることになるんです。確かに、創業して間もない頃は、そんなことを考える時間も、余裕もないかもしれない。でも頑張れば、きっと叶います。そして、その時がきたら、ぜひ一緒にクルージングを楽しみましょう!」
vol.56
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