“超”私的エクストリームな瞬間
SBCメディカルグループ
代表
相川佳之
写真/宮下 潤 文/薮下佳代 | 2013.10.10
SBCメディカルグループ 代表 相川佳之(あいかわよしゆき)
1970年神奈川県生まれ。1997年日本大学医学部を卒業し、癌研究所附属病院麻酔科に勤務。1998年より大手美容外科に勤務し、数千件の美容外科手術を経験。2000年に独立し、神奈川県藤沢で湘南美容クリニックを開業。徹底した顧客志向を貫き、料金体系の表示、治療直後の腫れ具合の写真を公開するなどの美容業界タブーを打ち破りながら、2020年2月までに湘南美容クリニックを101院にまで拡大させる。またSBCメディカルグループとしては美容医療のみならず、一般内科等の保険診療や、不妊治療や再生医療等の先進医療も手がけている。
場所は、羽田空港。大きなジャンボジェットが絶え間なく滑走路を行き交い、大空へと飛び立って行く。ここ羽田空港にプライベートジェット機や新聞社のヘリなどが飛び立つ、一般には立ち入ることのできないエリアがある。
車で案内されたそこには、大小さまざまなジェット機が並んでいた。国旗が描かれた海外からのものもちらほら。毎度、ここから、相川院長も飛び立つのだという。
北は北海道・札幌から、南は九州・福岡まで、全国にクリニックを持ち、経営者として、それらのクリニックを移動することが多いという相川院長。
「自分の好きな時間に行けますし、神戸から仙台など、通常のエアラインでは路線がないところを飛びたいので。今日とか明日とか、思い立ったらすぐ融通が効くのも魅力。国内だったら、どこでも飛んで行けるんです。明日も大阪へ行って、そのあと仙台へ行く予定ですね」
フライトの準備が始まった。相川院長が乗り込み、操縦席へと座る。ヘッドセットを着け、計器をチェックする。白衣を着、ドクターとして執刀する相川院長は影をひそめ、この瞬間はパイロットの姿へと変わる。
「とにかく、運転するのが好きなんです。でも実は高所恐怖症だったんですよね」
思いもよらない言葉にスタッフ一同驚いた。いまの姿を見ていると、にわかには信じることができない。もちろん、飛行機なんて全く興味がなかったのだという。
しかし、いまから4年前、経営者セミナーに参加した際、「自分の弱点を克服する」というプログラムにチャレンジしたら、克服できたのだそうだ。
「その時、たまたま同じチームにセスナに乗ってる人がいて、その人の話を聞いて、急に空好きになっちゃって。翌月にはすぐに免許を取りに行ったんです」
飛行機の免許を取った後、相川院長は続いてヘリの免許も取得した。
「3.11の際、医療物資が足りないとき、車で11時間かけて東北へと運びました。けれど、道は穴があったりでガタガタ。迂回したりしなければいけなくて。ヘリなら目的地へそのまま行けて有利だなと。その時、ヘリの免許を取ろうと思い立ったんです」
ジェットとヘリで空を制覇した相川院長は自らの操船で海にも出るという。
「クルーザーも操縦するのが好きなんです。よくドクターや看護師さんを連れて海へ出かけます。広大な海を自由自在に行ける。空を飛ぶのとはまた別の醍醐味がありますよね」
仕事の合間をぬって、免許取得のために勉強したという相川院長。多忙極まりない生活のなかで、そのモチベーションは一体どこからくるのだろうか。
「好きでやってますから。何も考えず、ただ好きだからですよ。ある意味、自分の命をかけて“遊んでる”。それ以上のスリルはないですね。ほかの遊びでこれ以上はない。一度ハマったら戻れないですよ」
ジェット、ヘリ、クルーザー。これらは相川院長にとって、移動手段でもあり、命をかけた遊びでもある。だからこそ、この時間はなにものにもかえがたい。自分にとって必要不可欠な、まさに“エクストリームな瞬間”なのだ。
「周囲からは、心配だから乗らないでくれと言われるけれど、やめられない。僕は、やりたいことがあったら絶対やる。そうしないと後悔するし、時間は限られているから、すべてのことに全力で取り組む。そう決めているんです」
人生に待ったなし。妥協も一切しない。ドクターとして年間1万件を越える手術を執刀し、経営者とドクター2つの顔を持つ。その姿からは多忙すら楽しんでいるようにも見える。
閉鎖的であった美容医療の世界を変えようと、次々に新しい取り組みを取り入れ、ここ数年でいまや大手のクリニックに匹敵するほどの大躍進を遂げた湘南美容外科を率いる。「美容医療をもっと身近なものにしたい」と、地方にもクリニックを広げ、全国制覇を目指すという。
夢は「伝説のクリニックをつくる」こと。その目標に向かってこれからも飛び続ける。
vol.56
DXに本気 カギは共創と人材育成
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
代表取締役社長
井上裕美