ヒラメキから突破への方程式
株式会社メイション
代表取締役社長兼CEO
近藤 浩
写真/芹澤裕介 文/松本 理惠子 | 2017.08.16
株式会社メイション 代表取締役社長兼CEO 近藤 浩(こんどう ひろし)
1974年生まれ。愛知県出身。地元私立大卒。卒業後は営業職に就いた後、株のデイトレーダーへ転身。2003年、小学校の同級生と、結婚式の2次会幹事代行業を事業とする有限会社メイションを愛知で起業。2007年、東京に本社移転。2010年、LMNホールディングス株式会社に社名変更し、株式会社メイションを新設分割により設立。
今でこそ、メイションの「スマ婚」や「2次会くん」は、ブライダルシーンに新しい風を送り込んだブランドとして確固たるポジションを築いているが、サービス開始当初は壁もあった。
まだ「スマ婚」を始める以前、2次会代行サービス「2次会くん」をスタートした当初は、認知度不足のために会場側から敬遠され、提携を拒否され続けたこともあった。それを打開したのは、メディアへの露出だ。
「大手ブライダル雑誌のライバル誌が創刊するタイミングで、私たちのところにも掲載の声がかかりました。新聞で紹介された記事を見て、面白いと興味を持っていただけたようです」
まさに蟻の一穴。その後、テレビなどのメディアに取り上げられるたび、「2次会くん」への反響は大きくなっていった。また、さらなるサービスの浸透は、口コミの力によるところも大きい。近藤社長は目の前にある潜在的な顧客を見逃さなかった。
大体、1回の2次会で参加者は50~60名ほど。「この人たちは次の顧客になる可能性を秘めている」と気づいた近藤社長は、2次会の写真を閲覧できるプラットホームをつくり、そこに参加者たちを誘導する仕組みを構築。すると、口コミでサービスが広がり始めた。
「当時、結婚式サービスを口コミで広めるという発想は、この業界に無かった気がします。2次会に参加した人が、その後結婚することになったときは、友人が使った会場は避け、別の会場を探す傾向にありますからね。2次会参加者向けのPRをしても仕方がないと、あまり力を入れていなかったのでしょう」
他社が看過しているターゲットに目をつけ、アプローチを仕かける戦術が功を奏して、「2次会くん」の名はどんどん拡散していった。
»適正価格が価格破壊に「スマ婚」でブライダル業界に新風呼んだ無駄なしスマート発想
名古屋で始めた「2次会くん」のサービスは、その後、東京、大阪へも進出。そこに集まるニーズはやがて、「スマ婚」という次のサービスを生み出すことになる。しかし、それは既存のブライダル業界に殴り込みをかけるかのような破格のサービス、ただ始めても浸透しない。要はやはりPR戦略だ。
「『スマ婚』のサービス開始時は、『2次会くん』でためた利益をすべて投入し、勝負を懸けました」
人気タレントをイメージモデルに据え、CM、電車ポスターなど、大阪を中心に大々的にPRを行った。
「大阪に展開を絞ったのは、『スマ婚』を受け入れやすい土壌があると思ったからです。そして、CMの費用対効果を考えたときに、一番コストパフォーマンスが高いとも考えました」
結果は大当たり。CMを見て衝撃を受けたメディアから取材が殺到した。知名度は瞬く間に関西を飛び越え、全国区となる。
勝負どころといい、ターゲットの絞り込みといい、PRを仕かける“ここぞ”の狙いは、近藤社長が株トレーダー時代に培った勝負勘に裏打ちされているかのようだ。その後、関東、福岡、愛知へと展開した「スマ婚」は、徐々に業界の理解も得ながら、提携式場を増やしていった。
「そもそもは新郎新婦に“適正価格”で結婚式をしてほしいと始めたサービスですが、実際に利用した新郎新婦からは、ドレスから引出物まですべて持ち込み自由で『自分たちらしい結婚式ができた』との声をいただきます」
日本のブライダル市場は年々縮小傾向が続いているが、一方で、入籍のみで結婚式をしない“ナシ婚”カップルや、自分たちの理想を形にしたい“わがまま婚”カップルなど、ニーズの多様化も顕著だ。
そんな市場の変化を的確にとらえ、メイションは、「スマ婚」の他にもハワイでの「海外でスマ婚」 や、海外ウェディング後のお披露目パーティー「1.5次会婚」 などのサービスも提供している。
「今は再婚や授かり婚などの理由で、『派手な結婚式はできないが、何らかの形でお披露目のセレモニーはしたい』という方も多くいます。そういう層のニーズにも応えられるサービスを今後は増やしていきたいですね」
メイションの経営理念「MAKE AN IMPRESSION 感動をあたえる。」には、近藤社長の“お客様の人生を幸せにする”という思いが反映されている。近藤社長にとって「幸せ」とは何だろうか?
「人生の幸せとは“思い出の質と量”と考えます。ブライダルに限らず、様々なライフイベントを通して、お客様と一緒に思い出をプロデュースしていきたいと思っています」
vol.56
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日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
代表取締役社長
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