ヒラメキから突破への方程式

目指すは「強豪」ではなく「魅力的なチーム」

千葉ジェッツふなばし島田慎二社長の地域から愛されるプロスポーツチームのつくり方

株式会社千葉ジェッツふなばし

代表取締役社長

島田慎二

写真/芹澤裕介(島田氏)、©CHIBAJETS FUNABASHI/Take-1(千葉ジェッツ) 文/竹田 明(ユータック) | 2018.07.13

Bリーグの試合風景
Bリーグに所属する千葉ジェッツふなばし(千葉ジェッツ)は、千葉県船橋市に本拠を置くプロバスケットボールチーム。地元のファンとスポンサーに支えられている市民クラブである千葉ジェッツは、魅力的なチームとなってファンに試合会場に足を運んでもらい、地域経済に貢献するのを目的のひとつとしている。観客動員数リーグナンバーワンを誇る人気チーム、千葉ジェッツが掲げる“地域愛着”の思いに迫る。

株式会社千葉ジェッツふなばし 代表取締役社長 島田慎二(しまだ しんじ)

プロバスケットボールチーム・千葉ジェッツふなばし クラブ代表。1970年生まれ、新潟県出身。日本大学法学部卒。1992年、マップインターナショナル(現エイチ・アンド・エス)入社。1995年に独立、複数の旅行会社を立ち上げ、2012年、株式会社ASPE(現千葉ジェッツふなばし)代表取締役に就任。公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ理事、一般社団法人日本トップリーグ連携機構理事などを歴任。

強さはあくまで魅力のひとつ

「魅力的なチームをつくるのは永遠の課題」と語るのは、千葉ジェッツふなばしの運営会社社長の島田慎二氏。弱小チームだった千葉ジェッツを、数年で天皇杯(オールジャパン)を連覇する強豪に育て上げた敏腕経営者だ。

「私はバスケットボールの素人ですから、現場のことはヘッドコーチに任せています。クラブの経営者として強いチームをつくるためにできることは、資金力をつけるために経営を健全化して、しっかりとした収益を上げられるクラブにすることです」

島田慎二インタビュー写真

プロクラブチームの主な収入源は、スポンサー収入」「チケット収入」「グッズの売上」「ファンクラブアカデミーの会費」の4つ。極端な言い方をすれば、チームが負け続けても、ファンがアリーナに足を運んでチームを応援してくれれば、クラブは儲かる。

「そういう意味では、強いチームよりも、魅力的なチームを目指さなければなりません。“強い”は魅力的なチームの一要素であり、絶対条件ではありません。

魅力的なチームとは何かをみんなで考えた結果、千葉ジェッツのバスケスタイルである『アグレッシブなディフェンスから走る』ができました。もちろん毎試合、勝利を目指しますが、もし負けても感動を与えられるように、選手が懸命に頑張る姿を見てもらいたいと思っています」

Bリーグ試合風景

積極的な守備から始まる超速のゲーム展開が持ち味。 写真/©CHIBAJETS FUNABASHI/Take-1

チームは、運営会社とともに「千葉ジェッツふなばしを取り巻く全ての人たちと共にハッピーになる」という活動理念を掲げている。それを共有することで、社員もチームも同じ方向を向くことができ、ファンのためのバスケットボールを実践できるようになったという。

千葉ジェッツふなばしのホームページ画像

千葉ジェッツふなばしのホームページより

負け続けるチームを応援するファンは少ないかもしれない。しかし、負け続けていても応援してくれるファンにも、届けられる何かはきっとあるはずだ。ファンはチームの勝利を願い、チームを信じて応援し、試合会場に足を運び続ける。そこで見たいのは選手やチームの“勝とうとする姿勢”だ。千葉ジェッツが掲げる理念の正しさは、昨シーズンを超える2017-2018シーズンの総観客動員数(15万5895人/1試合平均5196人)が物語っている。

「ジェッツは“地域愛着”を掲げています。地元の人々から愛され、船橋になくてはならない存在になるのが目標です。『ジェッツの試合がある日は忙しいね』と地元の商店に言われたり、『ジェッツの試合が見たいから船橋市に転居した』という人がいたりすると最高にうれしいですね」

Bリーグの試合風景

写真/©CHIBAJETS FUNABASHI/Take-1

アリーナ建設よりもやるべきことはほかにある

Bリーグ屈指の熱狂的なブースター(ファン)をもつ千葉ジェッツの周囲には、専用アリーナの建設を期待する声も多い。しかし、現時点で島田氏は専用アリーナ建設の予定はないと断言する。

「天皇杯連覇やBリーグファイナル進出など、早い段階で結果が出たのはラッキーな面もあります。観客動員数1位になったといっても、まだ7歳のひよっこチーム。人間でいえばようやく小学生になったばかりです。

100年続くチームになるため、チーム理念の実現に向けて、まだまだ努力が必要です。今はアリーナ建設に割く資金や人的労力を、目の前にいるファンのために使いたいんです」

船橋アリーナ チアリーダーによるパフォーマンス

現在、ホームゲームは千葉県船橋市にある総合体育館(通称:船橋アリーナ)で行われている。観客席数は約5000。 写真/©CHIBAJETS FUNABASHI/Take-1

フライトクルー(チアリーダー)らによるハーフタイムショーやタイムアウト中のパフォーマンスも好評。 写真/©CHIBAJETS FUNABASHI/Take-1

未来を見据えるあまり、目の前にいる人たちに対してできることをおざなりにしたくない。いま千葉ジェッツを応援してくれる多くのファンに喜びと感動を与えたい。島田氏はあくまで“地域愛着”の姿勢を貫く構えだ。

「1万人収容のアリーナを5年かけてつくるよりも、5000人のアリーナで今の倍の価値がある試合をして、チケット代を値上げしても試合を観に来てくれるファンづくりに励みたいと思っています。やりたいことよりも、やるべきことを優先するのが、プロのビジネスマンとしての選択です。

でも、誰かが船橋に新しいアリーナをつくって運営してくださるなら、喜んで本拠地として使わせてもらいますけどね。広いキレイなアリーナの方がいいですから(笑)」

島田慎二のインタビュー写真

千葉ジェッツのファンとは誰を指すだろうか。プレーを応援するため試合に訪れる地域住民はもちろん、ホームに足を運んだ人たちのために飲食やグッズなどのサービスを提供する商店や、パートナー契約を結ぶ地元企業、株主、そしてスタッフもファンだろう。様々な考えを持つ多くの人たちの思いに応えるために、千葉ジェッツは日々、エキサイティングなプレーをし、勝利を目指す。

Bリーグ ファイナル2017-18は惜しくもアルバルク東京に敗れ準優勝に終わった。しかし、アグレッシブに戦う姿と「日本一」という夢を見せ続けることが、すべてのファンに報いることになるはずだ。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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