スーパーCEO列伝

ベンチャー支援の専門家が3つの背景を分析

【メルカリ急成長の理由】あらゆる好機をとらえてユニコーン企業に

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

事業統括本部長

斎藤祐馬

図表/QB System 文/杉山直隆  | 2018.02.13

日本発のユニコーン企業として、ますます期待が高まるメルカリ。わずか5年でここまでかけ登れた理由はどこにあるのか? ベンチャー支援の専門家、斎藤祐馬氏に伺った。

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 事業統括本部長 斎藤祐馬(さいとうゆうま)

1983年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。2006年公認会計士試験合格、監査法人(現・有限 責任監査法人トーマツ)入社。2010年より社内ベンチャーとしてデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社事業を立ち上げ、3年半で全国20の活動拠点・150名体制への拡大に成功。著書に『一生賭ける仕事の見つけ方』(ダイヤモンド社)がある。

【Analysis01】市場規模が拡大し続けるシェアリングエコノミー

市場規模が拡大し続けるシェアリングエコノミーの図

出典:(株)矢野経済研究所「シェアリングエコノミー(共有経済)市場に関する調査(2017年)」

シェアリングエコノミーが世の中に浸透

「メルカリが急成長した背景のひとつとして『シェアリングエコノミー』が世の中に浸透したことがあげられます」と話すのは、数多くのベンチャー企業を育ててきた斎藤祐馬氏。

シェアリングエコノミーとは、ネットを介して場所やモノ、乗り物、人、お金などの遊休資産を個人間でレンタルしたり売買してシェアするという新しい経済の動きのこと。民泊やカーシェアリング、クラウドファンディングなどが代表で、メルカリが手がけるフリマアプリもそのひとつだ。

シェアリングエコノミーの市場規模は右肩上がりの成長を続けている。矢野経済研究所の調査によれば、2016年度は503億円に達したという。

「欧米での経験則から『消費税が8%以上になると、消費税がかからないCtoCのシェアリングエコノミー市場が拡大する』と言われています。2014年4月に日本の消費税率が8%に上がったことは市場の成長を大きく後押ししたといえるでしょう」(斎藤氏)

もうひとつの背景は、スマートフォンの急速な普及。2015年にはスマホでネットを利用している人が5割を超えた。誰でも気軽に、いつでもどこでもネットを使える環境が整ったわけだ。音楽や動画、ゲームをはじめとしたさまざまなアプリが登場する中で、シェアリングサービスのアプリも人気を博している。

【Analysis02】リユース市場をフリマアプリが席巻

リユース市場をフリマアプリが席巻している図

出典:経済産業省「平成28年度電子商取引に関する市場調査 報告書」

それにともなって、買い物スタイルも変わってきた。少し前までは、ネットショッピングといえば、BtoCのネットショップでの買い物を、モノのシェアリングサービスといえば、ネットオークションを指していた。

しかし、フリマアプリが登場するとともに市場は激変。経産省の推計によれば、2016年のフリマアプリの市場規模は3052億円に。ネットショップの2300億円を抜き去り、ネットオークションの3458億円に肉薄している。

「スマホは頻繁にチェックするものなので、良い商品を出品すれば数分で取引が成立することも。このスピード感が、忙しい時代に支持されたのでしょう」(斎藤氏)

芸術的なタイミングでフリマアプリ市場に参入

メルカリが急成長を遂げ、瞬く間に企業の評価をあげ、ユニコーン企業(企業の評価額が10億ドル以上の未上場企業)のひとつに数え上げられるようになったのは、これ以上はないと言えるほど教科書的な絶妙のタイミングで新市場に参入していったからだ。

メルカリがフリマアプリに参入したのは、消費税率が8%に上がる直前、スマホシフトが起こる直前の2013年7月。当時は、フリル(2016年楽天が買収)やショッピーズをはじめ、フリマアプリ市場にベンチャー企業が続々と参入をはじめた時期だ。

一方、この時点ではヤフーや楽天、DeNAといったネットオークションを手がける大手企業が参入してくる気配はなかった。いずれの企業もPC 向けのプラットフォームを強みにサービスを展開してきたため、自社のサービスと食い合いになるスマホ向けのサービスの展開には二の足を踏んでいた。いわゆるイノベーションのジレンマだ。

メルカリは、フリマアプリ市場参入をテーマに、先発組をベンチマークし、改良すべき点を徹底的に研究。優秀なメンバーを集め、課題をひとつずつ解決していった。

また、発足時からグローバル展開を掲げていた。これまで日本のベンチャー企業の多くは、まず、日本で成功して上場を果たし、その資金で世界に出るというルートを目指していた。それに対して、メルカリは最初から世界を目指すと宣言したわけだ。

「グローバル展開を視野に入れていたことによって、対象となる市場規模が何倍にも膨らんだ。メルカリの成長に対する期待もそれだけ高くなるわけです」(斎藤氏)

【Analysis03】成長を後押しするタイミングの妙

メルカリの成長を後押しするタイミングの妙を示す図

たとえば、日本国内のフリマアプリ市場は、現在3000億円だが、仮に人口比で単純計算すれば、日本の2倍の人口を持つアメリカなら6000億円市場、5倍のEUなら1兆5000億円市場が広がっている可能性がある。

市場規模が大きくなれば、ベンチャーファンドの投資資金の上限も変わってくる。2016年には一度に84億円もの資金を調達して話題になった。

加えて、メルカリの収益モデルはわかりやすい。収益は手数料として徴収する取引額の10% なので、ダウンロード数が一定数以上にいった瞬間に一挙に黒字化する。狙っている市場規模が大きい上に、黒字化の予測もつきやすい。だからこそ、スピーディーに多額の資金が集められたのだろう。

その資金で、優秀な人材を集め、優れたサービスをつくりあげ、完成するとテレビCM を流した。一般に新興企業は信用力がないのでテレビCM を流すのは常套手段だが、その量は、ハウスメーカーや自動車メーカー並みと桁違い。多くの人が大手企業が手がけている安心なアプリといったイメージをもったはずだ。

「連続起業家」の時代

「もうひとつ着目しているのは、メルカリもアメリカでは主流となりつつある連続起業家、『シリアルアントレプレナー』が立ち上げた会社であるということです。創業者の山田進太郎会長は、過去に立ち上げたインターネットサービス会社のサービスの一部をぴあやGMOパートナーズに譲渡したり、会社そのものをZyngaに売却した経験を持っています」(斎藤氏)

ひと昔前のベンチャー企業は、IPO を目指し、創業者が一社にずっといるものだった。しかし、現在の主流はM&A。会社が軌道にのったところで、創業者は企業を売却。売却資金をもとに、再び、新しい起業にチャレンジする人が増えてきたのだ。

「連続起業家の強みは経験があること。子育てはひとり目は非常に大変なのに、二人目になると楽なのと同じです。人脈や実績があるから資金もスタッフも集めやすい。また、マネジメント、時代の変化の潮目の読み方なども格段にうまくなっています」(斎藤氏)

ミクシィで執行役員CFO を経験した現社長の小泉文明氏をはじめ、名だたるメンバーが集結してくるのも、連続起業家が立ち上げた会社だからだろう。

「現在、メルカリは世界進出への試金石と言われるシリコンバレーでがんばっています。ここで成功すれば、次は世界中から資金が集まるようになりますので、メルカリがアメリカで成功できるかどうかは、日本のベンチャー企業全体の重要な問題です」(斎藤氏)

もし成功すれば、メルカリを生み出した「日本」という国、日本の他の起業家にも目が向けられるようになるからだ。実際、フィンランドのロビオというゲームメーカーがシリコンバレーで成功を果たすと、「フィンランドのベンチャー企業」への投資が増えた。

メルカリが成功すれば、同様に世界の投資家の視線は、日本のベンチャー企業にも向くようになるだろう。それによって、ベンチャー企業のチャンスは格段に広がっていくのだ。

「このような意味でも、メルカリ成功への期待が高まるわけです」(斎藤氏)

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