スーパーCEO列伝
株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ
代表取締役会長
野尻佳孝
写真/宮下 潤 文/上阪 徹 マンガ/シンフィールド | 2014.08.11
株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役会長 野尻佳孝(のじり よしたか)
1972年6月4日、東京都生まれ。95年、明治大学政治経済学部を卒業し、住友海上火災保険(現・三井住友海上火災保険)入社。法人営業部でベンチャー企業の株式公開支援を担当しながら、自ら起業すべき方向を模索する。1998年、ブライダルビジネスでの起業を決意し、株式会社プラン・ドゥ・シー(現・株式会社Plan・Do・See)に転職。そこでビジネスノウハウを習得し、同年10月にテイクアンドギヴ・ニーズを設立。ハウスウェディングの仕掛け人となる。2001年にナスダック・ジャパン(現・新JASDAQ)上場、2004年には史上最短で東証二部上場、2006年に東京証券取引所市場第一部への指定を果たす。2010年、同社代表取締役会長に就任。現在は、同社グループの株式会社アニバーサリートラベル取締役、株式会社グッドラック・コーポレーション代表取締役会長、天愿?婚?有限公司(中国・上海市)董事長、T&G WEDDING ASIA PACIFIC Co., Ltd. 董事長を兼務する。
今また真の総合生活プロデュース会社、そしてグローバルカンパニーへ進化するべく力強く前進し始めたT&G。2020年度の自分たちがあるすべき姿を「2020Target」として掲げ、ビジョン実現のため彼らが打ち出した戦略とは?
日本の約15倍、年間1000万組の婚姻数がある中国市場に進出したT&Gは、野尻氏自ら行った綿密な市場調査と営業活動により、現在10を超える5つ星ホテルと提携。中国の伝統的なスタイルと先進的な欧米スタイルをミックスさせるなど、同社が提供するオリジナルウェディングの企画力とハイクオリティなサービスは、すでに高級ウェディングブランドとしてアジア各国で認知されており、香港、台湾、インドネシア、ベトナムへの進出も果たしている。
今後はハワイ、グアム、バリ島に持つ直営施設や現地スタッフといったインフラと商品開発力を武器に、アジアにおけるデスティネーション・ウェディング※1を強化。日本のホスピタリティの素晴らしさを海外へ広めることを目的に、国内外の大手旅行代理店と協働で新たなブライダルマーケットの創出に取り組んでいる。
※1 居住地や勤務地より遠く離れた海外や国内のリゾート地で挙式を行う、旅行を伴うウェディングスタイル。
ハウスウェディングやリゾートウェディングなど、新たなウェディングスタイルを提案してきたT&G。2012年には、そのこだわりと企画力をさらに進化させ、会場や形式にとらわれない、より先進的なウェディングプロデュースサービス「オートクチュールデザイン」を本格始動させた。
ただし、その実現には経験豊富なウェディングプランナーをはじめ、各分野のプロフェッショナルとオリジナル商品が必要になるため、提供料金も極めて高額になる。そこで野尻氏は、中国に自社工場を設立。これまで自分たちが手掛けた商品を内製化することで生産コストを抑え、顧客ターゲットを拡大。“日本発 世界基準”をキーワードに、新らたなフリースタイル・ウェディングの開発に乗り出した。
世界のライフスタイルが今、変わりつつある。例えば、かつて「ラグジュアリー」と言えば、高級ブランドや外車、豪邸といった「贅沢な生活」を思い浮かべたものだが、昨今はロハス、エコ、グリーン、サステナブルなどを意識した生活や企業の取り組みこそ「クール」と言われる時代。
野尻氏は「こうしたサードウェーブともいえる現象は国内産業のあちこちに影響を及ぼし、それに乗り遅れた企業や自治体は衰退の危機に陥ってしまうのでは」と不安を募らせる。そこで、今までホテルのコンサルティング事業などを通して培ったノウハウを積み上げ、地域の街づくりや活性化に貢献できるホテルや店舗の開発事業を強化。
徹底したローカル雇用、地産地消、地域緑化、リサイクル、健康促進にこだわった業態を実現させ、どんな人も気軽に立ち寄って寛ぐことができるサードプレイスを提供。人の心を、人生を豊かにする新たなカルチャーの創出をめざし、多様な人や企業と積極的にコラボレーションして様々な化学反応を起こしていく。
2020年を最終年度とするT&Gの長期ビジョン。「グループ売上高1,000億円、グローバルカンパニーの実現」を目標に、デスティネーション・ウェディングを中心とした海外進出の加速、国内ハウスウェディング事業のさらなる強化、ホテルの婚礼受託事業の拡大を主な重点戦略として揚げている。
vol.56
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代表取締役社長
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