スーパーCEO列伝

RIZAP急成長の裏側

瀬戸健代表の結果を出すための発想法

RIZAPグループ株式会社

代表取締役

瀬戸健

写真/宮下 潤 文/髙橋光二 マンガ/株式会社M41  | 2017.10.10

太っていたタレントが見違えるほど健康的でスリムになり、明るく堂々とした姿をみせるCMで大ブレイクしたプライベートジム「RIZAP」。そのキャッチフレーズとして「結果にコミットする」と言い切り、30日間無条件返金保証制度で裏付けられたサービス品質が人々を引きつける。
2012年2月の1号店オープン以来、5年半で120店舗・累計会員数約9万人と
急成長を続けている。このプライベートジムの成功哲学を軸にゴルフ、英会話、料理と結果にコミットする分野を拡大。
さらに、「『人は変われる。』を証明する」というグループ理念のもと、ジーンズメイトをはじめとするアパレル会社などのM&Aを積極的に行い、美容・健康、ファッション、ライフスタイル、といった領域に“RIZAP経済圏”を広げている。「自己投資産業でグローバルNo.1」を目指す、同グループ代表者・瀬戸 健氏の経営哲学に迫る。

RIZAPグループ株式会社 代表取締役 瀬戸健(せと たけし)

1978年、福岡県出身。高校3年の時、体重70kg超の彼女と付き合い始め、本人が望むダイエットに真剣に協力し3か月で25kg痩せることに成功し「人は変われる」という強烈な原体験をする。明治大学商学部中退後、2003年の24歳のときに健康食品の通販会社である健康コーポレーションを創業。大豆の栄養素を抽出したサプリメントを発売するも売れず、おまけの「豆乳クッキー」が好評を博す。これを「豆乳クッキーダイエット」と商品化し2年目の売上高8億9,000万円と大ヒット。4年目に100億まで伸ばしたところで競合の登場により売り上げが急落。代わって、グループ会社が販売した美顔器のヒットにより、グループ全体で100億を維持。そして、2012年2月にパーソナルジム「RIZAP」1号店をオープン、自ら考案した「結果にコミットする」のフレーズを使ったCMでブレイクする。

瀬戸健の考える 「コミットメント経営論」

「みんな分かっていそうで実はよく分かっていない」「当たり前のようにあるから誰も深く考えてみない」瀬戸氏のコメントは、常に“本質”を追求している姿勢を感じさせる。だからこそ、「結果にコミットする」という本質を衝いたコンセプトを抽出できたのだろう。その根底にある経営哲学を伺った。

01「結果にコミットする」

パーソナルジム「RIZAP」の原点にあるのは、18歳のとき、彼女のダイエットを成功させたこと。70kg超だった彼女は「痩せたい」と望んでいましたが、自分一人ではできなかった。

そこで僕は“ダイエットオタク”になるまで勉強し、毎日のように「できるよ!」と励ましながら彼女のダイエット食を考え、一緒に走ったのです。そうしたら、3か月で25kgの減量に成功。「人は変われるんだ!」と実感しました。

ではなぜ、ありとあらゆるダイエット情報は溢れ返っているのに多くの人はうまくいかないのか。極論を言えば、人は誰でも食事制限をし、運動をすれば痩せられます。できないのは、やり切れないから。

だからこそ、やり切るための、愛情をもって寄り添うサービスが必要だと思いついたのです。そこで業界を見回してみると、そんなサービスはどこにもありませんでした。

「結果にコミットする」というキャッチフレーズを考え、CMをビフォー・アフターの映像とキャッチフレーズだけにそぎ落としました。人が本来持っている良さを引き出し、自信に溢れた表情を見せればサービスの魅力を感じ取ってもらえると確信したからです。

02「緊張感は本気をもたらす」

「結果へコミット」の自信をわかりやすくアピールする裏付けとして、「結果が出なかったら理由を問わず全額返金」する制度を考えつきました。社内は「そんな制度をつくったら、みんな返金を要求するのでは?」と大反対。

そこで私はこう言ったのです。

「では、我々はプロとしてお客様に何を提供して対価を得るのか? トレーニングを教えることか? お客様が望んでいるのは、トレーニングを教わることか? そうではなく、その結果として痩せることではないのか? その結果を実現させてこそ、プロと言えるのではないのか?」

返金制度があると、トレーナーにはより一層の緊張感が生まれます。より一層真剣に、そして本気になるのです。だからこそ「思わず食事制限を破ろうとしたとき、トレーナーを裏切る気持ちになってできなかった」と言うお客様がたくさんいるのです。

返金制度は、自信の表れ。“絶対に痩せます”と言える品質を担保しているのです。

03「Giveの最大化」

“Give & Take”という言葉が好きで、よく使っています。この言葉は昔からあり、非常に多くの人が知っている反面、陳腐化し誰も気にしていないのではないでしょうか。しかし、消えずに残っているということは、必要性があるからです。昔からある言葉にこそ、重い意味が込められていると思っています。

当たり前のことですが、企業活動が対価なきボランティアでは従業員の生活を成立させることはできません。企業活動を通じて社会に価値を提供し、初めて従業員の給与の原資となる対価を得ることができます。その対価を上げたいのであれば、先に“Give”=価値を高めるしかないのです。

「給料を上げてほしい」という従業員の欲求は、結構なことだと思います。しかし、その前に私は「では、あなたはどんな価値を提供してくれるのか?」と問いたい。そして、その価値についてあいまいにしている企業が非常に多いのではないかと感じています。

会社は10を期待していたのに、従業員は7でいいと考えていた。そんなギャップは双方にとって不満や不幸のもとです。だからこそ、徹底的に話さなければなりません。毎日体重計に乗るように、日々、従業員はどれだけ価値が創造できているのか、コミュニケーションすべきだと思います。

04「土俵を変える」

「RIZAP」の商品力の決め手は、マンツーマンでトレーニングを提供するトレーナーにあります。ですから、トレーナーの採用にはこだわり抜いており、採用率は今でも3%程度。ゲスト(お客様)とは、世界レベルで活躍するトップアスリートとトレーナーのような関係性を築いてほしい。

世界レベルで活躍するには、とてつもなく厳しいトレーニングをやり抜くことが必要で、アスリートはトレーナーを信じ切ることができなければなりません。そんなトレーナーはまた、とてつもない情熱や思いやり、コミュニケーション力、そして人間性を備えているものです。

落とされた方のなかにも、素晴らしい経歴や技術の持ち主が数多くいます。そのほとんどは「1回あたりいくら」のパーソナルトレーニング経験者です。

しかし、トレーニングはたいてい1回で終わり、続けるのも痩せるのもお客様次第、というのが実情です。既存のトレーニングジムと我々とは、そもそもの土俵が違います。逆にいえば、土俵を変えたからこそ、「RIZAP」は受け入れられていのだと思います。

06「ワクワクするビジョンを見せる」

「結果にコミットする」という考え方は、組織マネジメントにも通用すると思いますし、当社で実践しています。トレーナーとお客様の関係は、上司と部下の関係に近しい。上司はトレーナー同様、部下と「何を成し遂げたいのか」というビジョンを共有する必要があります。ビジョンは部署ごとにもつ必要があり、そのビジョンを示せる者にリーダーの資格があるのです。

そのビジョンは、メンバーが思わず「やりたい!」と思うようなワクワクするものでなければなりません。そんな魅力的なビジョンを実現するためにはどんなアクションを取る必要があるのかを具体的に示すのです。部下が知りたいのは「この部署は、どんなことを、何のために、どのように実現しようとしているのか」ということだからです。

ところが、目標数字を示し「いつまでにやれ」としか言えない上司がたくさんいます。目標数字そのものに意味はありません。単なる尺度や目盛りに過ぎないからです。「10kg痩せるとこんなきれいな体になる!」という目標を実現したとき、きれいな体になったことに価値があるのであって、10kgという数字は目安にしか過ぎない。そう考えれば、よくわかることです。

06「人は一生輝ける」

RIZAPは、このほど静岡県牧之原市と高齢者を対象とした健康増進プログラムを実施しました。健康寿命の延伸を目的として、3か月間、トレーニングと食事のアドバイスを行うというものです。

27名中23名が最終日までの全プログラムを終了させ、平均13.6歳の体力年齢の若返りという理想的な結果となりました。筋肉は何歳になってもつくということが科学的に証明されています。介護予防につながる筋肉トレーニングも、やるかやらないかだけ。

今回はマンツーマンではなく複数名を対象に行い、RIZAPメソッドの成果を確認できました。今後は、「元気リーダー」となっていただく高齢者の方を選出し、競争も取り入れながら楽しくトレーニングを行い、街ぐるみでイキイキ元気になる活動を広げていきたいと思っています。

私の義父は70歳を過ぎていますがRIZAPでトレーニングを行い、3~4か月で体脂肪率が30%台から9%に減り、できなかった斜め懸垂ができるようになりました。義母もウェストが50cm台とスリムになりイキイキしています。

人は一生輝けるのです。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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