スーパーCEO列伝

【ロングブレス】導入企業が急増 仕事のパフォーマンスを上げる呼吸とは

株式会社ロングブレス・スタジオ

ボディ デザイナー

美木良介

文/杉山直隆 写真/宮下 潤 | 2021.08.10

「呼吸だけで身体が見違えるように引き締まる」と一大ブームを巻き起こした呼吸法「ロングブレス」が今、経営者たちの間で注目を集めている。かねてから経営者の実践者は多いが、昨今の在宅ワークの広がりを受けて動画配信サービスをスタートすると、社員のヘルスケアのために導入する企業が急増。考案者である美木良介氏のもとには法人からの講演依頼や問い合わせが殺到しているという。美木氏をはじめ、自ら実践する経営者たちにインタビューし、ロングブレスがビジネスシーンで求められる理由を明らかにする。

株式会社ロングブレス・スタジオ ボディ デザイナー 美木良介(みき りょうすけ)

1957年、兵庫県生まれ。高校在学時は野球部に所属し、1974年の春のセンバツと翌年夏の甲子園には三塁手として出場。法政大学進学後も将来を嘱望されたが、肘の故障のため野球を断念。大学卒業後はレコード会社のオーディションに応募。1981年1月に『涙きれいだね』で歌手デビューを果たす。1984年のNHK連続テレビ小説『心はいつもラムネ色』で、主人公の親友を好演し注目を浴びる。以降はテレビドラマ・映画・舞台・CM、また歌手として幅広く活躍中。現在は「ロングブレス」の考案により、さらに活躍のフィールドを拡げている。著書に『美木良介のロングブレスダイエット』『美木良介のロングブレスダイエット 1週間即効ブレスプログラム』『ジャパネットの社員が毎朝実践する ロングブレス 1週間即やせプログラム』などがある。

あのテレビ通販会社が、毎日10分間のロングブレスを行う理由

「3秒吸ったら……7秒息を吐く。はい! 1、2、3……」

2020年3月の緊急事態宣言下、通販大手ジャパネットホールディングスで毎朝行われていたオンライン朝礼のなかで、10分間の「ロングブレス」が実施された。ロングブレスの考案者である美木良介氏の動画に合わせて、100人以上の社員がエクササイズをするものだ。実は同社の髙田旭人社長はロングブレスを2年以上続ける実践者。自社へ導入した理由を次のように語る。

「コロナ禍で在宅ワークをするようになった社員たちが運動不足を解消でき、精神的にも元気になれることはないかと考え、美木さんに『朝礼で行えるロングブレスの動画をつくってもらえませんか』とお願いしました。すると『飽きないように』と、月~金で全く異なるエクササイズのメニューを用意していただきました。社員たちは『腰痛や肩こりがかなり楽になった』『運動嫌いでもできる』『頭が冴えて仕事がはかどる』などと非常に好評です」(株式会社ジャパネットホールディングス 代表取締役社長 兼 CEO 髙田旭人氏)

ロングブレスの効果に目をつけた企業はジャパネットだけではない。この1~2年でさまざまな業界・規模の企業が、美木氏に講演やトレーニングスタッフ派遣を依頼している。美木氏は言う。

「この数年で多くの経営者とお会いする機会がありました。どうすればコロナ禍で在宅ワークを余儀なくされた社員たちの健康を守れるか……。経営者の方たちと話すと、皆さん、その方法を非常に真剣に模索していると感じます。私の身体は一つしかありませんが、全国の企業からの要望に応えるために、2021年5月から『ロングブレスオンラインスタジオ』という動画配信サービスを始めました」

株式会社ロングブレス・スタジオ ボディ デザイナー・美木良介氏

ロングブレスの本質はインナーマッスルを鍛えること

ご存知の方も多いかもしれないが、そもそもロングブレスは、呼吸法を基本としたエクササイズだ。ボールを抱えるように両腕を広げて息を大きく吐き出す独特なスタイルが印象的だが、それはほんの一部に過ぎない。

ロングブレスの本質はインナーマッスルを鍛えることにある。インナーマッスルとは、身体の深部にある深層筋のこと。上半身と下半身をつなぐ「腸腰筋」、腹筋の内側にある「腹横筋」、背骨を支える「多裂筋」などがその一例だ。

腰痛や肩こりに悩むビジネスパーソンは少なくないが、それには姿勢が関係している。運動をしないでデスクワークばかりしていると、体中の筋力は弱ってくる。当然、インナーマッスルも同様だ。すると身体を支えられなくなるので、姿勢が悪くなり、腰痛の原因にもなる。

「インナーマッスルを、おへその下にある“丹田”を意識しながら強く呼吸を吐いて鍛えるのが、ロングブレスの基本的な考え方。3秒吸って15秒吐くことから始め、慣れてきたら3秒吸って7秒強く吐く。こうした呼吸を毎日何度も繰り返すだけでも、インナーマッスルが着実に鍛えられます。すると、姿勢が良くなり、腰痛も解消されます」(美木氏)

◆実践! ロングブレスの基本動作3ステップ

※【】内は体内の動き

①片足を半歩後ろに引き、肛門をキュッと締める【骨盤底筋群が上に上がる】。上半身を反らさずに後ろに倒し、後ろ足に重心を置いた状態で両腕を頭上に伸ばして鼻から3秒かけてゆっくり息を吸う【横隔膜が下に下がる】

②両腕を左右に広げてスタンバイ。肩甲骨を締め、手のひらは外側に向ける

③胸の前に大きなボールを抱え潰すような姿勢で、7秒かけて息を「フーッ」と強く吐き出す【腹横筋が収縮】

全身に力を入れて行う!

◆慣れないうちは下腹部にある丹田(たんでん)を意識する呼吸法もおすすめ。おへそから指3本下の場所にある丹田に手を当て、お腹が凹んでいることを確認しながら鼻から3秒間で息を吸い、お腹を凹ませた状態を維持しながら15秒間で息を強く吐く。限界まで息を吐きだすのがポイント。

ロングブレスのプログラムは強く息を吐く呼吸に、さまざまなレベルの筋力トレーニングを組み合わせてインナーマッスルをより強く鍛えていくものだ。深く呼吸をすることで酸素が細胞の隅々にまで行き渡る。すると代謝が上がるので、脂肪が燃焼し身体が引き締まる。また、体温が上がり、免疫力も高まるという。「朝にロングブレスをすると、頭がシャキッとして、仕事が進む」との声も多い。

20年以上苦しみ続けた腰痛を、1カ月半で克服

経営者がロングブレスに注目する理由の一つは、理論の正しさを美木氏が自分自身の身体で証明しているからだろう。

美木氏がロングブレスを開発したきっかけは、20年以上にわたって苦しんでいた重度の腰痛がある。30代の頃にウエートトレーニングで痛めた腰が、映画やドラマに出演し続けることでジワジワと悪化。その痛みは50歳を過ぎた頃、爆発した。

「あまりの激痛に吐いてしまうほどでした。撮影に行くのが怖くなり、鬱(うつ)のような状態になっていました。これではドラマもバラエティも出られない。仕事にならないわけです。そこで事務所に『仕事を休んで、腰を治すのに専念する』と伝え、ありとあらゆる治療を試しました」

ところが、西洋医学も東洋医学も美木氏の腰痛は治せなかったという。もはや自分で治すしかない――。そう考えた美木氏は独学である方法に行き着いた。それが「呼吸法」だった。

「ある医師から『呼吸法を使ったリハビリがある』と聞き、試したことがありました。それ自体は効かなかったのですが、心のどこかで“呼吸法”というものが引っかかりました。そこで、呼吸に関する書籍を数十冊読みあさったところ、『強く呼吸を吐くことでインナーマッスルが鍛えられ、筋肉が天然のコルセットになる』ことがわかってきたのです。腰が痛くて筋トレも何もできない以上、残すところは“呼吸”しかないと考えました」

腰の痛みに耐えながら、毎日強く息を吐くことを愚直に繰り返した美木氏。すると、想像以上のことが起こった。約1カ月半で、あれほど苦しんだ腰の痛みが消え、さらには13.5kgのダイエットにまで成功したのである。

「私自身がウエートトレーニングで腰を痛めた経緯があるので、ロングブレスでは『絶対ケガをしないトレーニング』を追求しています。だから老若男女幅広い方に信頼されるのだと思います」

『ロングブレスの魔法 呼吸を変えれば人生が変わる!』

当時俳優だった美木良介氏がロングブレスを考案してから約10年。2021年10月には、多くの人たちの身体に影響を与えたロングブレスの奇跡体験の数々をつづった書籍を発売。

『ロングブレスの魔法 呼吸を変えれば人生が変わる!』(幻冬舎、10月27日発売予定、1320円予価)

ロングブレスと経営者は相性◎、ヘルニアを克服した人も

このような経緯で生まれたロングブレスは、以前から経営者の愛好家が多かった。理論が明快で、短時間で効果が出る点が、結果が全てで、理屈で物事を考え、効率を求める経営者気質にマッチしたのだろう。エグゼクティブ向けプログラムを用意すると、多忙な経営者たちが相次いでパーソナルレッスンに訪れるようになった。

冒頭で登場したジャパネットHDの髙田社長もその一人だ。2019年から通い始め、多忙の合間を縫って今でも週2回トレーニングしている。

「以前から負荷系のトレーニングはしていたのですが、ロングブレスを始めてからは明確に身体が絞れましたし、寝付きも良くなりました。『ロングブレス』というとキャッチーな名前から突飛なことをするように見えますが、実際は理にかなっていて、納得感があります」(髙田社長)

出版社の幻冬舎の見城徹社長のように、4年間続けるヘビーユーザーもいる。

「目に見えて全身が締まりましたし、身体の調子が良くなりました。全身に血が巡り、細胞が活性化されるからでしょうね。週1回、美木さんのもとに通っているのですが、今では行かないと気持ちが悪い。突発的な仕事が入ってきたとしても、ロングブレスのレッスンを優先しているぐらいです」(見城社長)

美木氏のように、ロングブレスによって腰痛がなくなった人も少なくない。エンターテインメント大手セガサミーホールディングスの里見治紀社長は椎間板ヘルニアを克服した。

「通い始めはほとんどメニューをこなせませんでしたが、数回通ったら歩けるように。今ではゴルフもできるようになりました。その効果を実感し、社員研修もお願いしました」(里見社長)

こうして効果を実感した経営者たちが、昨今の健康経営への意識の高まりやコロナ禍での働き方の変化をきっかけに、自社にもロングブレスを導入するようになったのは当然の流れといえよう。

撮影していてまず気づくのは美木氏(撮影時63歳)の姿勢の良さ。軸がビシッと若々しい

【法人向けプランも】ダイエット、腰痛・肩こり、小顔矯正などのプログラムを動画で

2021年5月にスタートした動画配信サービス「ロングブレスオンラインスタジオ」。きっかけのひとつは企業からの要望だが、あらゆるニーズに応えられるよう、多様な動画プログラムを用意している。

具体的には、身体を引き締めるメニューが盛りだくさんの「ダイエット」、美木氏が腰痛を克服したメソッドが分かる「腰痛・肩こり改善」、表情筋を鍛える「小顔矯正」、70~80歳代でも無理なくできる「シニア」といった具合だ。

コロナ禍でメンタルが不安定になっている人も多いことから、身体を動かすプログラムだけでなく、座禅・瞑想もプログラムに取り入れている。また、酵素の力を活用してダイエットをする食生活についてもレクチャーが受けられる。

「講演に行くたびに、『美木さんのおかげで20kgやせました』『腰痛が治りました』と会う人会う人からすごく感謝されるのは、私にとっても大きな喜びです。私が講演に行けない地域の方にも、ロングブレスを知っていただき、役立ててほしい。ロングブレスオンラインスタジオはそんな思いで始めました」(美木氏)

これらの動画プログラムは、法人向けプランの場合は、1,000人未満の企業だと月10万円で全社員が見放題(予定価格、要問合せ)。「最初は肩こり・腰痛プログラムを見ていたけれども、体重が気になってきたからダイエットプログラムも見よう」といったことが自由にできる。また、個人は月3,300円で視聴可能(年払3万3,000円)。

「この仕組みなら、経営者や従業員だけでなく、そのご家族にも見ていただけるはずです。呼吸を変えるだけで身体が引き締まり、免疫力が高まり、ケガもしない。そんなロングブレスを一人でも多くの人に体験していただくことが、私の願いです」(美木氏)

自身の腰痛を治すために生まれたロングブレスが、コロナ禍に苦しむ個人や企業、ひいては閉塞感漂う日本全体の救世主になる、といったら言い過ぎだろうか。しかし、多くの人々に求められるこのエクササイズは、今やそれだけの社会的使命を帯びつつある。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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