サービス力

経営者と社員の想いをつなぎ、人と組織の成長をサポート

株式会社Office REVO

代表取締役

中村雅子

写真/中田浩資(リンガフランカ) 文/桑原恵美子 | 2021.11.10

「自分たちの声が組織のトップに届かない」と訴えるスタッフは多い。同様に、「自分の想いがスタッフに響かない」と悩む経営者も多い。経営者の意識改革を通じて“想い”の断絶を解消し、組織を強化する手腕に定評のある、株式会社Office REVO代表の中村雅子氏に、その極意を聞いた。

株式会社Office REVO 代表取締役 中村雅子(なかむら まさこ)

静岡県富士宮市生まれ。大学卒業後、地元の地方自治体職員として18年勤務。大病を患い死をも覚悟したことを契機に心理学を学び、フリーランスの講師に転身。そのなかで、経営者と社員の想いをつなぐ存在となることが自分のライフワークだと感じ、2009年12月に株式会社Office REVOを設立。

大病で死を意識し、「広い世界で自分を試したい」と人生観が大きく変化

静岡県富士宮市の老舗商家の跡継ぎとして生まれた、株式会社Office REVO代表の中村雅子氏。心理学を学びたいという希望をもっていたが、地元に残ることを強く希望する親に従い、地元の大学に進学し、卒業後市役所に就職した。

「新人研修で最初に言われたのが、『女性はニコニコしてお茶を出していればいい』ということ。でも私は大の“改善好き”なので、そういった古い体質の役所こそ、改善しがいがある職場だったのです。ニコニコ笑ってお茶も出しつつ、いろいろなことに口も出していましたね(笑)」

柔和な笑顔の下に隠された中村氏の胆力、そして問題点を適確に見抜く鋭さが自然と周囲に伝わったのだろう。市役所では、広報や情報政策、選挙管理委員会、教育委員会など、広い範囲を見渡せる部署を次々に経験。労働組合の女性部長として団体交渉にも臨み、女性職員の不公平な昇級制度を改善に導いたこともある。しかし「初の女性管理職になる」という夢を抱き始めた頃に突然、大病が見つかる。幸い命は助かったが、一時は声も失いかけ、再発の不安と戦いながら壮絶なリハビリに取り組んだ。

「社会全体が、人にとって一番大切なことを見失っているような気がします。根源的なことを再インストールすることが必要なのでは」(中村氏)

「描いていた人生設計が根底から崩れてしまったことが、人生の優先順位を見直す大きなきっかけとなりました。狭い世界での安定した生活を望む気持ちが消え、広い世界で自分の力を試してみたい、本当に学びたかった心理学を学び、それを使って人を助ける仕事がしたいと思うようになったのです」

「育てられる」「育てる」ことを経験してこなかったシニアが多い

その後、再び心理学を学びなおし、カウンセラーやコーチの資格を取得。40歳で市役所を退職し、フリーの講師として研修会社に所属し、一般社員からエグゼクティブまでを対象にしたさまざまな階層別研修、課題別研修に登壇した。二度の病の再発を乗り越え、10年間で指導した受講生は実数で30,000人を超える。

「そのなかで気づいたのは、業種や職種を問わず、多くのスタッフと経営者が“想いを伝える”ことの難しさに悩んでいるということでした」

スタッフと経営者、両者の通訳となって想いをつなぎ、組織力強化の支援をすることこそが、自分の追い求めていたライフワークだと気づいた中村氏は、2009年12月に人材戦略コンサルティング会社、株式会社Office REVOを設立。社名の「REVO」は「revolution(革命)」からとった。サービス内容を一言で言うと、「組織強化のためのコンサルティング」。具体的には自らが組織の内部に入り、「組織診断」を行った上で、採用から育成までの人材戦略、業務マニュアル整備、各種企業研修を提供している。

強固な信念で事業をけん引してきた経営者の意識を改革するのは、容易なことではない。最近では組織に半年から1年間ほどの長期にわたって入り、時間をかけて社員や経営者からヒアリングをし、じっくりとコンサルティングや研修をすることが増えている。そこで痛感しているのは、トップにいるシニアたちの“教え下手”。

「生まれてからずっと離れず暮らしている静岡が、大好き。静岡の企業を豊かにして、東京からUターンする人を少しでも増やしたい」(中村氏)

「自分たちが若い頃には『仕事は見て盗め』と言われてきているので、若い人に教えるすべをもっていない人が多いのです。そもそも、家庭でも『育てる』という根源的なことにかかわっていないので、未完成な存在への耐性が低い。仕事でも家庭でも重要な『人の育て方』をどこからも教わらず、学んでいないことを自覚すらしないままトップの立場に立ってしまった方がとても多いと感じます」

そうしたことを根気よく指摘し続けると、最初はうろたえたり反発したりするシニアも、次第に意識が変わっていき、最終的にはより自信をもってのびのびと部下と接することができるようになる。中村氏に全幅の信頼を置くようになり、後継者問題まで相談されることもあるそうだ。

「そんな強固な信頼関係を築けたときが、一番うれしいですね。今後の目標は、女性活躍推進、シニア活用など課題となるテーマのプログラムをかたちにすること。また、官民連携のプロジェクトのコーディネートやマッチングにも取り組んでいきたいですね」

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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