株式会社ターマイト・クリーン
代表取締役
中澤 武
写真/田村和成 文/西倫世 | 2021.11.10
株式会社ターマイト・クリーン 代表取締役 中澤 武(なかざわ たけし)
1980年和歌山県生まれ。地元の串本高校に在学中、シロアリ駆除会社でアルバイトをしたのをきっかけに、害虫駆除業に就くと決意。老舗だったターマイト・クリーンに入社し、駆除スキルや接客対応力を評価され事業を継承。2018年に法人化し、2019年には香川県丸亀市の株式会社讃岐白蟻工業の代表取締役に就任した。
「害虫なくして僕あらず」と話す中澤武社長。害虫駆除のエキスパートとして多くの案件を手がけてきた。個人宅だけでなく、和歌山県のジオパーク、世界遺産登録されている熊野速玉大社の害虫駆除にも貢献している。
「懇意にさせてもらっている親方の紹介で神宝館の修繕工事に関わっています。もともとはシロアリ駆除のご依頼でしたが、ここは屋根瓦の下に土があり、ここに土がある限りはシロアリが再発する可能性がある。次世代に余計な負担をかけないためにも、土を樹脂に変える提案をしました」
新型コロナウイルス感染症により、世の中が大きく変わった2020年。世間の衛生管理への意識が向上することによって、害虫駆除のニーズは高まった。
「協力企業とともに飲食店をまわり、オーナーさんに衛生管理の大切さについてお話しています。定期的な害獣駆除サービスに除菌サービスもプラスしたプランを立ち上げたところ、喜んでいただけています。厚生労働省からHACCP(ハサップ)が発表されていますし、国からの助成金が出るケースもあるだろうし、これからさらに需要は増えるのではないでしょうか」
40歳という若さながら、誰に対してもフラットな目線で意見を伝え、経営者という肩書きにこだわらずフットワーク軽く現場に足を運ぶ。そんな社長の姿は地元でも有名なようで、あるとき意外な電話があった。
「同業社の社長の息子さんから連絡があり『うちの父ががんで余命が短い。僕は事業を引き継いでいないので、中澤さんにサポートしてほしい』という相談で。面識がなかったし突然だったので驚きましたが、お話を聞いたのち、顧客や取引先の一部を引き継ぐことになりました」
昨年、香川県丸亀市にある株式会社讃岐白蟻工業の代表取締役に就任。資本金が1000万円あり、連結決算するメリットもなかったため、社名や取引先はそのまま引き継ぎ、社員1名を取締役に抜擢。9月に入社した新入社員と2名に事業を任せているが、売り上げは急上昇。ここでも中澤社長の手腕が光る。
「働く人材のやる気が出る給料体制を用意するのが僕の仕事。そこさえクリアにすれば一生懸命働いてもらえると信じています。実際にこちらの社員は驚くほど売り上げをあげてくれているんですよ。香川県って実は和歌山県からフェリーで2時間の距離。新宮市の人口は3万人弱ですが、丸亀市は10万人、近隣の高松市は20万人、岡山市は70万人なので、とても大きなマーケットです。四国八十八箇所もあるためお寺も多く、これまでのノウハウも生かせるため、僕にとっては好立地でした」
現在のターマイト・クリーンの従業員は4名、丸亀の讃岐白蟻工業は2名と少数精鋭。プラットフォーム戦略で規模を拡大していく企業が多いなか、今は‟ネオプラットフォーム化“が大事だと断言する。
「組織って大きすぎると、細かい部分に目が届かなくなるでしょ。現代は小さなほころびが大きな問題に発展しがちなので、大きな会社にメリットは感じてないんです。連合艦隊みたいに小さいけれど強いチームをつなげていくほうが、本当の意味で強い。ある意味、シロアリと同じですね。小さい巣を無数につくる。これからも経営に困っている同業他社をサポートし、別法人として事業を拡げていきたい。それが今の時代、生き残る術だと考えています」
「床下にもぐり害虫に薬をまく、いわゆる3Kと言われる仕事ですが、3T(楽しい仕事、楽しい人材、楽しい会社の3T)にしたい。
今使っている薬剤は人体の安全面にも配慮されているし、お客様からは本当に感謝していただけるし、世界遺産など貴重な建造物を守ることもできる、とても意義がある仕事です。
中国や香港を旅行した際、現地の親切な方との出会いもあり、飲食店の現状を見ることができました。そこでも害虫駆除の需要を感じ、今、着々と海外進出の準備中。
これからもっとこの仕事の知名度を上げて、次世代が『俺の仕事はシロアリ駆除やねん』って自慢できるような業界にしたいですね」
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