株式会社戦
代表取締役
浅川真紀
写真/守澤佳崇(office WORKS) 文/宮本 育 | 2021.01.12
株式会社戦 代表取締役 浅川真紀(あさかわ まき)
1978年生まれ、北海道札幌市出身。様々な職を経て、社会保険労務士・行政書士事務所に就職。そこで約9年間勤務し、2014年に独立、株式会社戦(いくさ)(旧:株式会社和)を設立。現在、同社事業のほか、動物救済活動、バリアフリー工事業者の斡旋事業など幅広く活躍している。
「すべての出来事に今は感謝しかありません」
そう力強く話すのは、株式会社戦(いくさ)(旧:株式会社和)の浅川代表。彼女は徐々に筋力が衰えていく難病クーゲルベルグ・ヴェランダー病とリウマチにより、長時間の歩行や起立が難しく、わずかな段差にも苦労する日々を経て、今は車椅子での生活をおくっている。しかし、そのような障がいをものともせず、約9年間、社会保険労務士・行政書士事務所で働いていた。そこでの仕事には、相当な苦労があったという。
「確かにつらかったのはありますが、おかげで多少のことではへこたれなくなりましたし、あの逆境を乗り越えたからこそ今があると実感しています。前職での経験は私の財産です」
前職を辞めることを考えた時、頭をよぎったのは担当する顧客のことだった。自分が辞めることで困る人がいるかもしれない……。そう思った浅川代表は、2014年、自らを「Gimpluencer(ギンプルエンサー)」(「gimp(足の悪い人)」と「influencer(影響力をもつ人)」を組み合わせた造語)と称し、起業を決意する。
雇用形態別による留意点や、会社と従業員の間で実際にあったトラブルをまとめた各種手引書は欠かせないアイテム。
同社は、各士業の専門家と提携し、登記、税務、許認可(処遇改善等)、助成金、就業規則、給与計算、社会保険等の労務関連手続きなど、ビジネスに関する総合的なサポートを行うコンサルティング会社だ。企業に徹底的に寄り添うサポートが評判となり、紹介で人の輪が広がった結果、顧客の99.9%以上が紹介でつながった会社や個人事業主で構成されている。
売上も創業当時は月数十万円ほどだったが、現在は約数百倍にまでなったという。自分を信じ続けてきたやり方が間違ってなかった、と確信できた瞬間だった。さらに、次のような事業展開も計画している。
「就労が難しい障がいのある人たちに、つまみ細工やレジンでオリジナル迷子札などをつくってもらい、それらを販売。売上の一部を動物救済活動団体等に寄付する取り組みも。この事業には、彼らに夢や希望を見つけてほしいという思いがあります。例えば、自分がつくった商品が褒められれば、もっと良いものをつくろうと意欲的になります。そういった成功体験が積み重なり、自信が生まれることで、外出してみようとか、企業の面接を受けてみようとか、独立してみようとか……。障がいをもっていても外に出る勇気や機会が増えると社会が変わり、社会が変われば国が変わると信じています。障がいのある人たちに、まだまだ優しい社会ではないのは残念ですが、そういう目的もあり、この事業を続けていきます」
障がい者の可能性を広げると同時に、街全体のバリアフリー化も目指す試みだ。そこには、障がいの有無にかかわらず、誰もがいつでも好きなところへ行ける住みよい世の中になってほしいという願いが込められている。
2017年5月からは、新たに共同生活援助事業(グループホーム)を運営。自らが骨折した時の経験から、介助を必要とする人と介助をする人との心や体の限界を感じたのがきっかけだという。また、共同生活援助事業(グループホーム)に特化し開設からの総合支援サービスを行うことで、地域や企業と障がいのある人たちをつなげ、なおいっそうの障がい福祉向上を目指していく。
これまでの体験をすべて力に変え、精力的に活動する浅川代表。この人に相談すれば何とかしてくれる――。そんな頼もしさをきっと多くの人が感じていることだろう。
「お客様は神様じゃなくて、親友だと思っております。だから、こんな質問してもいいのかな?と思う前に、『とにかく連絡をして』『自分で判断しないで』『気を使わないで』とお願いしています。これは公私混同かもしれませんが、相手のことを常に考えて仕事をしたら自然に公私混同になりますよ。そうじゃなければコンサルタントなんてできません。他人事だけど他人事にしてはいけない、それがこの仕事だと思います。ひとりで不安になっても寂しくなっても私たちがいる、それくらいの覚悟と気持ちでお客様と関わっています」
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