Passion Leaders活動レポート

[パッションリーダーズ]定例セミナー

目的を達成するための「ワクワク」と「予祝」 逆境を乗り越えるリーダーの心の在り方

株式会社てっぺん

取締役会長

大嶋啓介

文/宮本育 写真/阿部拓歩 | 2021.02.10

COVID-19の第3波が到来し、多くの企業が厳しい経営に迫られるなか、社員や企業を守るため、リーダーである経営者はどうあるべきなのか。
パッションリーダーズ全国定例会恒例の基調講演で、そのヒントが得られた。登壇したのは、今回で6回目となる、株式会社てっぺんの大嶋啓介氏。現在は経営の一線から身を引き、高校野球部などのメンタルトレーナーとして活躍。これまで22校を甲子園に送った経験をもとに、現在のコロナ禍を生き残るため、組織や団体の力を最大限に引き出す、リーダーのメンタルの在り方について語った。

株式会社てっぺん 取締役会長 大嶋啓介(おおしまけいすけ)

1974年、三重県桑名市生まれ。2004年、居酒屋から日本を元気にすることを目的に、居酒屋「てっぺん」を創業。てっぺん独自の「本気の朝礼」がテレビや雑誌等で話題となり、年間1万人以上が見学に、さらには修学旅行で中学生や高校生が朝礼体験に訪れる。2006年には、居酒屋業界全体の活性化を目的に、NPO法人居酒屋甲子園を設立。2007年には、外食産業に最も影響を与えた人に贈られる「外食アワード」を受賞した。さらに、2018年には『前祝いの法則』(ひすいこたろう氏との共著)を出版し、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019」にてグランプリを受賞。現在は、“予祝”を取り入れたメンタルトレーニング「予祝メンタル研修」を開発し、2015~2020年にかけ、100校以上の高校野球部の強化研修に携わる。そのうち22校が甲子園に出場。「日本中の子どもたちに夢を与えたい」という思いで、全国を飛び回っている。

居酒屋「てっぺん」の経営者から、教育者、メンタルトレーナーに

大嶋 僕は、株式会社てっぺんの社長から身を引き、今は一切経営に携わっていません。現在は、経営者時代から思い描いていた子どもたちとかかわりたい、学校をつくりたいという夢に向けて、学校講演を中心に活動しています。

なかでも、一人ひとりの能力を引き出し、チームの力を最大限に発揮するメンタルトレーニングが得意で、2015~2020年の間で100校以上の高校野球部とかかわり、22校が甲子園に出場しました。そしてその半分以上が初出場もしくは20年以上ぶりの出場で、2019年には夏の甲子園に27年ぶりに出場したという國學院大學久我山高等学校もかかわらせていただきました。他にも、同高校のサッカー部が準優勝、ハンドボールでは高岡向陵高等学校が日本一になりました。一番嬉しかったのは札幌大谷高等学校で、2018年秋に明治神宮野球大会で初優勝、創部10年目にして初めて甲子園に出場しました。このように色々な形で貢献させてもらっています。

これらの学校すべてで、居酒屋てっぺんで行っているチームづくりについての講演をしたのですが、改めてどのようなことをしているのか紹介します。

スポーツだけではない。どの分野もメンタルが成功の鍵

僕は、小学生のときから野球をやっていましたが、メンタルの弱さが原因で、いざというときに力を発揮できない、という経験をしてきました。それは中学に入っても続き、ついには挫折してしまったのです。

そして、24歳のときにうつ病を発症し、当時、営業マンとして働いていた会社を、わずか1年で逃げるように退職しました。しかし、このままでは終わりたくないと思い、日本におけるメンタルトレーニングの先駆者である西田文郎先生のもとで心の勉強を始めたのが、メンタルトレーナーになったきっかけです。

メンタルについて勉強すると、夢の実現や目標達成、そして困難を乗り越える際も、メンタルの在り方がどれだけ重要か、よくわかってきます。

スポーツの世界でよく使われる「心技体」という言葉のとおり、体よりも、技よりも、心が大事とされているので「心」が一番上にきています。どんなに技術を磨き、体を完璧に仕上げても、士気が下がっている、不安や恐怖があるといった状態では十分なパフォーマンスを発揮できませんし、そのことがすぐ結果に出るのがスポーツです。ですが、これはスポーツに限った話ではなく、ビジネスや勉強を含む、すべての分野において言えることで、結果を出されている方は、どんな状況でも心の在り方を大切にしていることがわかってきました。

最高のパフォーマンスを発揮する心の状態とは

スポーツでも、ビジネスでも、最も力を発揮する基本的な心の状態は3つあるといわれています。

1つめは「自信があるとき」。絶対やれると信じる力が働いているとき、パフォーマンス力は上がります。逆に不安や恐れがあるとき、特に企業のトップである経営者がそのような心の状態になったとき、組織は崩壊します。コロナ禍で経営者がどれだけ明るく振舞えるか、それがリーダーとしての在り方で最も大事なことだと心から感じています。

2つめは「集中しているとき」「冷静なとき」。これも大切で、集中力はトレーニングで養えますし、冷静さは呼吸法で取り戻せます。

3つめ、これが最も重要なのですが、力を発揮するのに一番大事なことは「楽しむこと」。最強のメンタルとは「楽しんでいるとき」なんです。近藤代表をはじめ、株式会社DDホールディングスの松村社長、株式会社串カツ田中の貫社長など、会社を大きくされた方々の話を伺うと、皆さん、人生も、仕事も、困難も、すべて楽しんでいらっしゃる。各国の有能な経営者を見てきた、アンソニー・ロビンズという世界NO.1の自己啓発コーチがいますが、その人も「最高のリーダーの条件は、最も仕事を楽しんでいる人だ」と。

それは高校野球も同じです。甲子園の常連である仙台育英学園高等学校がそうで、劇的サヨナラ逆転勝ちといった、とんでもない奇跡をよく起こすんです。どうしてそんなに強いのか、佐々木順一朗元監督のお話を聞いてわかりました。

答えは、誰よりも監督自身が楽しんでいるから、なんです。発想もすごくて、ディズニーランドのようなチームを目指していたり、TBSの「SASUKE」をつくろうとしていたり、それをクリアできないと練習に参加できないとか。さらに、ピンチに対しても日頃から仕込んでいます。ピンチになったら部員をどう笑わせるかとか、暗雲とした空気になったらどう変えるかとか。それらが大逆転を起こしているんです。

つまりは、「ワクワク」なんですよね。心が喜んでいる最上級が「ワクワク」です。居ても立っても居られない状態、行動したくてたまらない状態です。師匠である西田先生も、「成功するからワクワクするのではない。ワクワクしている人が成功しているだけだ」とおっしゃっています。「いかにワクワクするか」、そう考えている人たちが結果を出してきたんだと、心から思いました。

では逆に、避けるべき心の状態は何かというと、「深刻になること」です。昔の人たちは「深刻になると貧乏神が憑りつく」と言い、深刻になることを忌み嫌っていました。一方で、「笑う門には福来る」や「喜べば、喜びごとが、喜んで、喜び集めて、喜びに来る」ということわざがあるとおり、やはり、明るい心でいることがとても大事であることがわかります。

夢や困難に対して、深刻になって対処したり、「やらないといけない」というネガティブな気持ちで向かっていっても、なかなか結果に結び付きません。それよりも、夢が叶ったときや、困難を乗り越えたときのイメージをして、そのときのワクワク感や喜びを感じながら、今やるべきことを行っているほうが結果を出せます。

つまりは、手法や手段よりも「心の在り方」が重要ということ。言い方を変えると、「どんな心で、何をするか」。これが成功する心の在り方の方程式です。

日本に古くからある「予祝」で願いを叶える

そして、もう1つお伝えしたいのが、「予祝」です。これは「あらかじめお祝い」し、心を喜びの状態にする、日本に昔からある願いごとの叶え方。その代表が「花見」です。桜をめでる花見は豊作を願う宴が由来で、満開の桜をたくさん実った稲穂に見立て、今年もたくさん収穫できて良かったねと、お酒で乾杯する前祝いなんです。台風が来たらどうしようとか、日照りになったらどうしようとか、深刻になっても良くないことが起こるだけ。ならば、豊作だと決め込んで、飲んで歌ってお祝いする。そうして心を喜ばせることで、心が喜ぶ現実がやってくる、というものなんです。他にも、盆踊りや新年の挨拶もそうです。

ここで皆さんに予祝を体験してもらいたいです。2021年、過去最高の1年になったということにしてもらいたいんです。

想像してみてください。2020年は本当に大変な年で、今もその状況は続いています。しかし、この経験を通じて、学んだこと、気付いたことがあったと思います。これらを成長に変え、2021年に挑みました。そしたら、本当に素晴らしい結果になりました。

どんな素晴らしい結果になりましたか? ワクワクしながら考えてみてください。そして、それを言葉にしてください。

幸せになる最後のとどめは「感謝すること」

最強のメンタル状態は「ワクワク」することと言いました。ただ、楽観的にワクワクするのではなく、5つのワクワクが揃ったときに、組織やチームはものすごいパワーを発揮します。

1つめは「志」にワクワク。何のためにそれをやっているのか、誰を喜ばせたいのかに対するワクワクです。2つめは「夢や目標」にワクワク。夢が叶ったときを想像したときにわき起こるワクワクです。3つめは「練習や鍛錬」にワクワク。大変なことも、きついことも楽しみながらできるかということです。4つめは「困難やピンチ」にワクワク。どんな状況も楽しめるかということ。そして、5つめが「自分の成長や可能性」にワクワク。これが全部できたとき、最高のチームになります。

そして、幸せへの最後のとどめが「感謝」している状態です。高校球児で例えるなら、野球ができることに感謝、仲間に出会えたこと・仲間になれたことに感謝、監督やコーチといった指導者に感謝、そして、いつも支えてくれている保護者への感謝。この気持ちを引き出すことで、球児たちはものすごい力を発揮するんです。

具体的にどのようなことをするかというと、球児たちに支えてくれる人たちへ向けて感謝の言葉を書いてもらいます。まずは今までどんなことをしてもらったのかを箇条書きにし、最後に「ありがとう」と添えてもらう、簡単な文章です。ご飯をつくってくれてありがとう、ユニフォームを洗ってくれてありがとう、という感じで。それをもとに最終的に手紙にします。

保護者の方々にも、お子さんが生まれたとき、どんな気持ちだったかなど、手紙を書いてもらいます。それをお互いに読んでもらい、そして試合に挑むんです。

球児の心に芽生えた、「支えてくれた人たちを甲子園に連れて行きたい」、「試合に勝って喜ばせたい」という思いが、夢を叶える力になるのです。

こういうときだからこそ、明るい心で未来を見つめる

いつCOVID-19が終息するのかわからない、先の見えない今を僕たちは生きています。こういうときだからこそ、深刻になるのではなく、僕たちリーダーが明るい心で引っ張っていく。それこそが本当に大切なことだと思います。

「どんな心で、何をするか」──これがこれからの未来を切り開くためのキーワードであると、心から信じています。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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