Passion Leaders活動レポート

[近藤太香巳シリーズ講演plus+]

Afterコロナは、スモールカンパニーにとって圧倒的チャンス 「挑戦するなら、今しかない」

株式会社ネクシィーズグループ

代表取締役社長 兼 グループ代表

近藤 太香巳

文/桑原 恵美子 写真/阿部拓歩 | 2022.02.02

2011年のパッションリーダーズ設立から10年がたった今、ビジネス界を直撃しているのは、長引くコロナ禍。あらゆる業界にパラダイムシフトが起こり、多くのビジネスマンが進むべき道を見失いつつある。不安と閉塞感に満ちたこの時代の指針を、パッションリーダーズの創設者である近藤太香巳代表理事が語った。
(2021年12月22日に開催されたパッションリーダーズ全国定例会より)

株式会社ネクシィーズグループ 代表取締役社長 兼 グループ代表 近藤 太香巳(こんどう たかみ)

1967年11月1日生まれ。19歳のとき、50万円を元手に会社を創業。34歳でナスダック・ジャパン(現ジャスダック)へ株式上場し、37歳で2004年当時最年少創業社長として東証一部に上場。2015年グループ2社目が上場を果たす。エネルギー環境事業、電子メディア事業、経営者交流団体「パッションリーダーズ」のいずれも日本一の規模にまで拡大。新プロジェクトであるセルフエステBODY ARCHI(ボディアーキ)を全国に展開中。常に新しい事業領域にチャレンジを続け、ビジネスパーソンから若者まで情熱あるリーダーとして圧倒的な支持を得ている。世界的経済紙・Forbes(フォーブス)による『Forbes Asia’s 200 Best Under A Billion 2018』に選定。『JAPAN VENTURE AWARD 2006』最高位経済産業大臣賞受賞。『シーバスリーガル ゴールドシグネチャー・アワード2019 Presented by GOETHE』ビジネスイノベーション部門受賞。2020年、業界をリードする環境先進企業として、環境大臣より「エコ・ファースト企業」に認定。

「資本家」と「実業家」の違い

近藤氏 日本では、中小企業が99.7%を占めています。仮に日本に企業が400万社あるとして、400万社すべての社員数を足して400万で割ったら、5~6名といわれています。もちろん1人でやっている人もいれば、100人でやっている人も、1,000人でやっている人も含めて、平均が5~6名。まさに日本は中小企業で成り立っているということなのです。

そのなかでわれわれは何かというと、「資本家」ではなくて「実業家」なんです。資本家と実業家の違いは、資本家は資本を持っていて、その資本力によって資本を増やしていく人。商売して利益を上げて、その資本以上のお金をもうけていくというのが、資本家です。一方、実業家とは、自分たちのものではないお金を増やしていく存在のことです。「良いサービスを守る」ということでは資本家も実業家も一緒ですが、「良いサービスを提供し、そのお金を増やしていく」のが実業家です。

「お金があったらできるのに」という言葉をよく聞きますよね。もし1000万円あったら、2000万円あったら、1億円あったらできるのにということは、実業家は絶対に言ってはいけない言葉です。だって、0から1をつくっていき、0から100をつくっていくのが実業家なわけだから、最初はないのが当たり前なのです。

じゃあどうやったら、0から1をつくるためのお金、拡大するときのお金が集まるのか。実はその方法はひとつしかありません。

例えば、ボロボロの10坪のお店でもそこに行列ができていたとしましょう。「10坪でこれだけお客が集まっているのだったら、もっと大きな店にしたらどうなるだろう」と誰もが思うでしょう。それは金融機関でも投資家でも同じです。だから、最初の一発目のバズりが重要なのです。自分たちでブレイクさせて「すごいな」と思わせること。周囲を驚かせる“プチ爆発”を起こさないと、資金も集まってきませんし、未来が描けない。そこが実業家と資本家の絶対的な違いです。ベンチャー企業は実業家。だから「お金がないからできない」なんて言い訳しちゃ駄目なのです。

商売は「つくる」と「売る」2つの行為しかない

つきつめて言うと商売というのは、「つくる」「売る」、この2つの行為しかないと思っています。「つくる」という行為には、「商品をつくる」もあれば「サービスをつくる」もあるけれど、どちらにしてもお金が必要になります。だから僕の場合、「売る」という行為、つまり営業からスタートしたわけです。僕は「売る」から入ることによって、資金が少ししかなくてもスタートできましたし、お客さまとの会話で多くを学んだことで、営業力や企画力が磨かれたと思います。

今、ネクシィーズ・ゼロと僕がやっている事業で最初にブレイクしたのは、LED事業です。このサービスは電気料金をコストダウンしながらLEDに切り替えることができるので、ブレイクしました。そこから10年たって、品目数はLEDに限らず冷蔵庫、空調から、お店まるごとまで同じ方式でできるようになりました。品目は44万8,000品目、サプライヤー、メーカーは300社以上というところまで来ています。

なぜここまで拡大できたかといえば、営業を通してお客さまの声が聞けたからです。冷蔵庫も欲しい、空調も欲しい、イノベーションもしたい。いろんな声を聞きながら、気がついたら10年で44万8,000品目になっていったということです。こういう企画力も、営業をすることによって身につきました。

コロナ禍によって起こった良い変化

うちの会社は営業会社なので、やはりコロナ禍で大きなダメージを受けました。でも「良かったな」と思うことがいくつかあります。今日は時間がないのでその中のひとつだけお話します。

会社というのはこれまで、人を増やし、事務所を大きくしていくことが「拡大」だととらえられていました。でも今は違いますよね。コロナによって、事務所に来たくても来られない状況になったからです。そこで当社では、新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、「ユニット制」を導入しました。営業チームを1ユニット6人制にしたのです。100人、200人もいてそれがクラスターになったら、大変なことになりますが、6人だけなら、クラスターが発生しても6人にとどまります。その方式にしたら、ものすごくたくさんのチームができました。それがすごく良かったのです。というのは、何十人ものリーダーが生まれ、それぞれにリーダー経験をさせてやれたからです。

ここで冒頭の話に戻ります。日本の企業の平均社員数は5~6人。ということは、そのチームはひとつのカンパニーだと。日本の企業の資本金の平均は確か400万円くらい。君たちは、個人のお金ではないにしてもそれだけのお金を持っている。これをガンガン使って、いちカンパニーとして成功させてみろと、僕はリーダーたちに言ったんです。そういうことを学ばせることができたのは、コロナ禍があったからであり、その部分ではすごく良かったと思っているんです。

そして社員だけでなくわれわれリーダーも、常に二歩先ぐらいのことを考えて動いていかなければならないということを、コロナ禍で学んだと感じています。

大きなスケールでビジネスをする企業の課題を知ること

二歩先を考えて動くということを、僕が若かった頃の例でお話しましょう。

今でこそサービスを自分でつくって自分で売っていますが、当時はそれができませんでした。ですから、代理店として衛星放送、WOWOW、スカパー!、Yahoo! BBなどのサービスを売ってきたわけです。でも、その当時のことはそれで良かったと思っています。なぜなら自分では衛星のロケットを飛ばすお金はないし、ブロードバンドを日本中に引くお金もありません。でも、そのお金を持つ企業が一番困っていることは、そのサービスがなかなか普及しないということだったのです。それは、ものすごく大きなスケールの事業をしている会社が、実はその中で一番大切な「企画力」と「営業力」は持っていなかったということ。

スカパー!やWOWOWという名前は、ここにいる全員が知っていますよね。では、どんな番組がどんな視聴料か知っていますか? ほとんどの人は知らないですよね。そこで、“もの”じゃなくて“価値”にお金を払う時代が来たということに、気がついたんです。

例えば、冷蔵庫や洗濯機は大型量販店に行って価格とか、大きさとか、色やデザインで買う物の値段を決められます。ところが衛星放送のサービスを購入する場合はどうでしょう。「これだけのチャンネルがあって、週に200番組が見られます」とパンフレットをもらって、それが見られるチューナーは1万円です、2万円です、というかたちになりますよね。お客さんからしたら、視聴料を払うのはOKだけれど、チューナーを買わないといけないことのハードルがかなり高いわけです。しかもどんな番組をやっているかもわからないのに「200チャンネルから選んでください」と言われる。家電量販店の店員さんだって、チャンネルの内容なんてわからないから、もう衛星放送を売るのは面倒くさい、となるわけです。

それで僕はどうしたかというと、単に衛星放送を売るのではなく、そこに企画を入れたわけです。その時に僕が思ったのは「こういう状況だと、番組会社が困っているはず」ということ。番組をつくっている会社は、パンフレットの中に自分の番組名が入っているだけで、誰も営業してくれないんだから、視聴率も上がるわけがないですよね。そこで僕は、当時トップシェアだったスターチャンネルに行き、「うちが衛星放送チャンネルへの加入と視聴番組をパッケージにして販売しますから、インセンティブをください」と交渉したのです。そういうかたちで加入させられれば、そのお客さんは必ずその番組を見る。ということはうちで契約をする人に関してはそのチャンネルの視聴率が100%になるわけです。当然、喜んでインセンティブを払ってくれましたし、そのチューナーの仕入れ値を超えたことで、チューナーを無料、つまり「初期費用0円」で提供できたのです。

普通にスカパーを見るには、初期費用としてチューナー代がかかるのに、当社だけが「初期費用0円」を打ち出すことができたんです。これが当たって、家電量販店の売り上げで、日本のスカパー!、WOWOWのシェア8割が当社でした。

マーケットの大きなビジネスの“源流”を抑える

この他にもETCの普及にも貢献したことがありましたが、それらの経験で僕が心に刻んだのは「源流を抑える」ということ。代理店じゃなくて源流を抑えて、サービスも全部自由に自分でつくれるようにしようと考えてつくったのが「ネクシィーズ・ゼロ」という今のサービスです。

僕はそれまで、とにかくマーケットの大きなビジネスを選択してきました。それはマーケットが大きいほど、成功したときの成長スピードが速いからです。現在は農業ビジネスに参入し、農業のハウスを全部無料にする、IoT化をしていくといったサービスを計画しています。こういうスケールの大きなところに行こうと思ったら、ライバルも強大です。ですが、だからこそ、そこで勝ったらものすごいスケールの成功を手にすることができるんです。

ビジネスというのは、「スケールが大きなマーケットにいく」「みんなが入ってこないニッチな産業で1位になる」の2つの道があります。どっちがいいということはありません。下手に大きなところを挑戦して失敗して負ける人と比べたら、ニッチな産業で1位になったらそれはそれで、全然いいわけです。ただ僕の場合は、マーケットの大きなところに挑戦してきたし、これからもそうでありたいなと思っています。

先日、テレビ東京の番組に出演する機会があったのですが、その時に「ゼロ円男」と言われました。携帯電話にしても衛星放送にしてもETCにしても、ゼロ円で売ることで成功してきた男だと。その時、「本当にそうだよなって」と思いました。

Afterコロナは、
スモールカンパニーにとって圧倒的チャンスに満ちている

コロナ禍以前は、1階のいい場所に店舗を借りたくても、ほぼ大手に抑えられていました。でも今は、1階のロケーションのいい場所からどんどん空いています。家賃が高いから、コロナ禍でダメージを受けている大手がどんどん出て行っているわけです。大手ほど、大きなダメージを受けていると言っていいでしょう。例えば1000億円の売り上げがあって、20億円の利益があったとしましょう。ということは極論すれば、980億円が経費ということでしょう。ということは、利益があがらなかったら、この980億円がとてつもない赤字になってのしかかってくるわけです。

コロナ禍以前、Netflixはディズニーが勝負に出る構えになり、危機的状況だと見られていました。ところが、新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、ディズニーは経営のメインであるディズニーランドの経営悪化に膨大な資金のリソースを割かれ、配信のチャレンジにたじろいだわけです。今、そういう意味では大手の方が苦しんでいるところが多いのです。実は僕が19歳の時にお金もないのに起業できたのは、不動産バブルがはじけて家賃が安かったから。今、スモールカンパニーにとっては、ものすごいビッグチャンスが来ているのです。僕は今こそ、自分のやりたいことにビビらずに、チャレンジしまくった方が良いと心から思っています。

ちなみに、生き金として使えるんだったら、今はお金はもう借りられるだけ借りた方がいいと思っています。結局、コロナで借りたお金を返せない人がこれからいっぱい出てきたら、日本の経済の仕組みが大きく変わると思っているからです。車買うために借りるとかではなく、生きた事業のお金で借りるのなら、今はすごい勝負なんじゃないかなと思います。挑戦するなら今しかないと。

僕は、徹底的に調べた上で感覚的に70%行けると思ったら“GO”します。飛行機なら、片肺のエンジンさえ動くんだったら、もう空に上がる。そのあとのことは空の上で飛びながら、課題解決していく。これが正しいかどうかわからないのですが、「どうしてもやりたい」という気持ちになったら、どうやってでもやって、あとはもうねじ込んで成功させるしかないと僕は思っています。走りながら、課題解決を工夫すればいいだけ。みんな、挑戦するなら、今しかないよ。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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