スーパーCEO列伝

4つのキーワードで読み解くメルカリの強み

イラスト/野中聡紀 文/鈴木 梢 | 2018.02.13

創業から5年という短い間に、日本最大のフリマアプリへと成長を遂げたメルカリ。サービスの拡大、成長とともに、企業の成長の礎となったものは何なのか。小泉氏の言葉から見えてきた“4つのキーワード”をもとに読み解いていく。

【キーワード1】ミッション:新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る

メルカリのミッション・イメージイラスト

創業当初のミッションは「インターネットを通じて世界を変える」と言ったざっくりしたものであり、組織に浸透して会社の“骨”となるような、外部へ向けて掲げられるものがなかった。そこで参画した小泉氏が、社員が共有できる明確なミッションの策定を代表・山田氏に提案する。

掲げられたミッションは「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」。マーケットプレイスとは、売り手と買い手が自由に取引できる、インターネット上の市場のこと。誰かによって捨てる選択をされたものでも、誰かにとって価値のあるものかもしれない。その“売り手”と“買い手”を結びつける存在になること――これがメルカリの主な事業である。「フリマアプリ」のベースとなる考え方だ。

メルカリの登場によって、人々の価値観は“捨てる”以外にも“譲る”“売る”という選択肢が増えたといえる。また、物品の売買以外にも金融事業やシェアビジネスといった新たな分野へと進出するなど、さらなるマーケットプレイスの創造と拡大に取り組み、ミッションの実現を目指している。

【キーワード2】バリュー:社内のあらゆる場所で行動や意思決定の軸となる

メルカリの3つのバリュー

メルカリのバリュー・イメージイラスト

メルカリにとって3つのバリューは“ミッションの達成”から逆算して決められた重要な価値観で、社員各々がメルカリの掲げるミッションを達成するためにの行動様式ともいえる。このバリューは、採用活動や社員評価にも用いられている。

会社の存在理由であるミッションは不変のものだが、バリューに関してはそのミッションを達成するために存在するため、定期的に再検討されている。結果的に同じ3つのバリューを3年以上掲げ続けているが、事業の状況次第でより良いものに進化させていくべきだと、経営陣は考えている。

ミーティングやビジネス向けチャットアプリ・Slackなどの発言では常に意識的にバリューが用いられ、社員に配布されるTシャツやステッカーなどのグッズにもプリント。自然と目に留まるようになっている。

会議室の名前は「3つのバリュー」からとられている。様々な場所にバリューを配することで、いつでもその想いを思い出せるようにという工夫のひとつだ。

【キーワード3】ナレッジマネジメント:情報のオープン化で日常業務もスムーズに

メルカリのナレッジマネジメント・イメージイラスト

メルカリでは、社内の情報がすべてオープンにされている。プライベートメッセージや、密室でのミーティングで物事を決めるのではなく、ビジネス向けチャットアプリ・Slackのようなオープンな場を活用したり、議論の内容をGoogleドライブなどで共有したりすることにより、同じチームはもちろん、別部署の社員でも議論に入りやすくなっている。

実際に、Slackでは思わぬメンバーからアイデアや指摘が飛んで来ることもあるという。情報共有は常に全社的に行われており、所属部署やポジションによる“情報の格差”は殆どないといえるだろう。

経営陣も、現場で下される意思決定を仔細に把握することができる。社内の情報が常に共有されている環境をうまく活用することで、社員はあらゆる角度から案件や業務の改善を図ることができる。

【キーワード4】海外戦略:現地企業を設立し“世界へ打って出る”

メルカリの海外戦略・イメージイラスト

2013年に日本で創業、7月にサービスを開始したメルカリ。そして2014年9月にはアメリカ、2017年3月にはイギリスでもサービスを開始している。そして2017年12月、全世界のアプリの累計ダウンロード数が1億件を突破した。

日本についでダウンロード数の多いアメリカ版も、2017年12月の時点で3000万ダウンロードを超えている。日本での仕様と一部異なり、デザインや色使い、一部の機能がローカライズされている。

また、個人の閲覧履歴に合わせて表示する商品が変更される「パーソナライズ」機能も強化し、日本とは異なるアメリカのユーザー傾向をつかみ、操作性や使いやすさを向上させることで支持を伸ばし、アメリカのAppStoreランキングでも無料総合アプリとして3位にランクインした。

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井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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