スーパーCEO列伝

起業家は不可能を可能にする

株式会社サイバーエージェント

代表取締役社長

藤田 晋

写真/宮下 潤 文/薮下佳代 マンガ/シンフィールド | 2010.10.13

26歳、史上最年少で株式上場ネットバブル時代の寵児ともてはやされ華々しくネット業界に登場した藤田社長もいつのまにやら不惑を迎えた。いまの藤田社長からは若かりし頃の面影は消え辛酸をなめた、一起業家の姿があった。

彼の最新の著書『起業家』に、そのすべてが書かれている。激動の、苦難の、15年。それは新しく始まったインターネット業界の黎明期とも重なる。華やかな世界から一転、株価暴落社長退任にまで追い込まれるもメディア事業への憧れは募る一方。

そんななか、ネットユーザーにとって楽しいコンテンツ、使いやすいサービスを提供することのその原点に立ち返ったとき、おのずと道は開けて行った。その“気づき”こそ、藤田社長の転機であり最大の反撃が始まった瞬間でもあったのだ。

株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長 藤田 晋(ふじたすすむ)

1973年福井県生まれ。1998年株式会社サイバーエージェントを設立、代表取締役社長に就任。2000年に当時史上最年少社長として東証マザーズに上場。「Ameba」をはじめとするスマートフォンサービスをはじめ、国内No.1のインターネット広告代理店でもあるなど、インターネット総合サービスを展開。創業から一貫して、インターネット産業において高い成長を遂げる会社づくりを目指し、「21世紀を代表する会社を創る」をビジョンに、代表取締役社長であると同時に、「Ameba」の総合プロデューサーおよび技術担当取締役としてサービスの拡充・拡大に注力。2015年に株式会社AbemaTVを設立し、新たな動画メディアの確立に挑んでいる。著書に『藤田晋の仕事学 自己成長を促す77の新セオリー』(2009年日経BP社)『憂鬱でなければ、仕事じゃない』(見城徹共著 2011年講談社)『藤田晋の成長論』(2011年日経BP社)『人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない』(見城徹共著 2012年講談社)『起業家』(2013年幻冬舎)など。

サイバーエージェント流アイデアを世に出すための仕組みづくり

ユーザーを虜にする新しいウェブサービスを続々と生み出すサイバーエージェントには、アイデアを形にし「ベルトコンベアのように」世に出すためのユニークな仕組みがあるという。「アイデアは時間をとれば出てくるもの。自分の“脳”を追い込む機会を意図的に作っている」という藤田社長が編み出した新サービスを生み出すシステムをご紹介しよう。

ジギョつく

年に1回開催される新規事業コンテスト。社員から広く新サービスのアイデアを募る。優勝者は100万円の賞金がもらえる。今では1回に800件以上のアイデアが集まり、優れたアイデアは事業化を目指すことに。

モックプランコンテスト

言葉だけではなかなかわからない、新サービスの試作品(モックアップ)をつくって競い合うアイデアコンテスト。社内の技術者だけでなく、学生からも応募を受け付けている。2012年からスタート。

あした会議

役員ら経営陣によるアイデアコンテストは1泊2日の合宿形式。会社から場所を変え、集中して行われるため「忙しいは言い訳にならない」。現行のほとんどの事業は、この「あした会議」で決まったという。

詰め切りセンター試験

有望なアイデアの精度をさらに上げるため、サービスの具体的なユーザーインターフェースまで“詰め切る”会議。実現に向けての具現化を1泊2日の合宿で決め、詰め切らないと帰れない。

K点チェック

新サービスのプロジェクトが一定レベルを越えているかどうかを責任者がチェックする。「K点を越えていればリリース後も運用しながら改善できるが、K点を下回るとがんばっても厳しい。そのラインの見極めです」

信号制度

K点を越えてリリースされたサービスを、「信号制度」によってクオリティを逐次確認していく。ある一定の基準を満たすまでは「赤信号」、もう一息で「黄信号」、満たすと「青信号」とランクが上がっていく。

ダカイゼン会議

打開と改善を組み合わせた造語。社内には「ダカイゼンルーム」という会議室があって、そこでサービスの改善や問題解決のための会議が行われる。「ネットサービスは打開と改善を繰り返していけば伸び続ける」


藤田社長からのコメント

これらの制度は、社員からのアイデアの“かつあげ”みたいなもの。かなり追い込まれるような仕組みなんですね。ブログでさらされたり、実力順にランキングされたり、いい意味でプレッシャーをかけている。みな、次なる種を血眼になって探すようになりましたね。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

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DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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