有限会社ケーズ・プランニング
代表取締役
山下 啓一郎
写真:二石光正 取材・文:岩﨑洋明 | 2021.12.10
有限会社ケーズ・プランニング 代表取締役 山下 啓一郎(やました けいいちろう)
1972年、宮崎県生まれ。旅行・観光系の専門学校を卒業後、添乗員として旅行会社に就職。その後、飲食店経営、期間労働、自動車学校教官勤務、不動産会社勤務を経て、26歳で有限会社ケーズ・プランニングを設立。不動産売買の仲介を主軸に、経営者を対象にした顧問業も展開。企業のリスクやトラブル、ネゴシエーションマネジメントを行う一方で、起業を志す若者の支援にも注力している。
会社を設立して数年間は失敗の連続だったという、有限会社ケーズ・プランニングの代表、山下啓一郎氏。苦境を乗り越えた経験、そして不動産業と顧問業の2大事業によって、現在は志ある人たちを支えている。
「主力事業の不動産業は、業者さんに希望の物件を仲介するなど会社間取引が中心です。一方で、自営業を志す方々に、自社ビルの貸し出しも行っています。その際、詳細な事業計画をつくって、経営を軌道に乗せるお手伝いをすることも。弊社の特徴は、保証会社を通さないこと。過去の失敗が原因で、店を持つ夢が絶たれてしまうのは酷な話です。私自身、経営に行き詰まり廃業を考えたこともありますが、ある方の支えによって立ち直ることができました。次は私が誰かに、ターニングポイントをつくってあげたいと思っています」
事業活動の根底にあるものは、ホスピタリティの精神。顧問業では、経営者だけでなくそこの社員全員と膝を突き合わせることも珍しくないという。
「顧客と一緒に課題を解決していくので、コンサルティングよりもカウンセリングと呼んだ方がしっくりきますね。例えば人材教育の案件では、まず社員一人ひとりと面談をして、要望や不満に耳を傾けます。その内容を匿名で経営者に伝えますが、発言者を特定して不当な扱いを行わないよう事前に契約を交わします。大切なのは、経営者はもちろん社員全員との信頼関係。そうでないと経営カウンセリングは成り立ちません」
不動産業における新たな取り組みとして、地方創生事業が進行中。2022年の夏をめどに、宮崎県・青島にワーケーション施設を完成させる予定だ。
「リモートワークの普及により、地方にセカンドハウスを構えたいという方が増えてきました。そこで、滞在しない時期は第三者に部屋を貸すことができる宿泊施設を建設する予定です。オーナーは家賃収入が見込めるため、低負担で資産を所有できます。すでに120坪の土地を購入済みで、まずは20坪の土地に1棟を建設します。青島でビジネスモデルを確立できたら、東京や大阪など全国に展開していきたいですね。他にも、刀鍛冶と所縁のある宮崎県綾町で、海外旅行客を対象にした鍛冶体験の計画が進んでいます。コロナで中断していますが、落ち着いたら準備を再開したいです」
山下氏が描く青写真は、これだけではない。環境保全など地球規模での諸問題解決を目指すFSUN(国連支援交流協会)に参加、12月に宮崎県支部を発足。今後はSDGs(持続可能な開発目標)を軸にした活動を本格化させる意向だ。
「現在、生ゴミを微生物分解して、水溶液として下水道に流す事業に取り組んでいます。いずれは、価格高騰が続くコーヒー豆の安定供給に向け、豆の栽培に挑戦できたらと考えています。日本ではすでに、耐寒性と成長速度を高める農法の研究が進められています。この技術を取り入れ、AIによるオートメーションでハウス栽培をすれば、日本中どこででも可能な筈です。
そうなると、室内での野菜の水耕栽培も夢ではありません。都心部で栽培すれば空輸コストを削減でき、内需を拡大した後は輸出に転換できるでしょう。さらに、日本が誇る魚の養殖技術や巨大水槽の製造技術にも注目しています。今では、山の上で魚を養殖することも可能なのだそうですよ」
ケーズ・プランニングの強みは「ストーリーを描き、実現するまで追い続けること」。豊富な筋書きを手に、今後の人生を駆け抜ける。
「人を集めて物事を始めるには、“ハコ”が欠かせません。建物を仲介するだけではなく、あらゆる活動にコミットできるのが不動産の強みです。日本だけではなく世界の国々に農業ビルを建て、コーヒー豆や野菜を栽培。山では巨大水槽で魚を養殖している。想像しただけでワクワクしちゃいますよね。ただし、これらの夢を実現させるには、人の力が不可欠です。60歳までおよそ10年。それまでにいろいろな方とつながり、つないで、人生のストーリーをたくさんつくっていけたら最高ですね」
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