人材力

“自走型採用”で人口減の時代を生き抜く 中小企業を勝たせる新たな採用の“形”とは?

ファンづくりカンパニー株式会社

代表取締役

篠塚大輔

写真/芹澤裕介 文/平川 恵 加筆修正/庄子智大 | 2021.10.11

人口の減少が進む日本。労働力となる“生産年齢人口”の減少が加速度を増している。担い手不足に悩む中小企業は採用競争にどう勝ち、どう生き残るのか。求人専門の広告サービスを展開する「ファンづくりカンパニー株式会社」の篠塚氏は「オウンドメディアリクルーティングを踏まえた“自走型採用”の実現こそが、本質的に勝てる採用の形」と話す。そんな篠塚氏に、勝てる採用の極意を聞いた。

ファンづくりカンパニー株式会社 代表取締役 篠塚大輔(しのづか だいすけ)

1979年、東京都生まれ。高校卒業後に就職した医療品小売店にて、販売を皮切りに店舗マネジメント・人材育成・店舗開発と幅広く業務を担当。その後は、求人広告代理店にて営業・チームマネジメントを、BPO企業でプロジェクトマネジメントをそれぞれ経験。2014年には求人広告代理業として独立し、2017年にファンづくりカンパニー株式会社を設立した。

企業と求職者が描く未来が重なる時、採用成功が実現する

少子化が進む一方で、多種多様な求人サービスが溢れている現在。採用難易度が上がる中で、求職者の目を引く大型の求人広告を打てる企業は一握りだ。予算が限られる中小企業は、求める人材を採用できないのだろうか。いや、チャンスは確かにある。

求人広告代理店での勤務を経て独立した篠塚氏は、採用成功を実現できるノウハウを投入したリクルーティングサービス「ジョブパッドi」を開発。数多くの求職者が利用する求人検索エンジン「Indeed」と連携したサービスは注目を集め、中小企業を中心に導入実績を伸ばしている。

「“出して終わり”の求人広告と一線を画した『ジョブパッドi』は、『Indeed』と連携して継続的に求人広告を発信します。当社では、求人広告の基本情報となる職種・仕事内容・待遇・福利厚生といった『ジョブ・ディスクリプション』と、社風や価値観といったその企業らしさが伝わる『シェアードバリューコンテンツ』を記載することで、他社求人との差別化を図っています。1,000人規模の大企業で働く一人と、50人規模の中小企業で働く一人がもたらす影響力を比べれば、中小企業のほうが遥かに大きいはず。だからこそ、お客様が求める人物像に響く求人広告を制作し、戦略的に発信し続けることで納得いただける成果を上げています」

「ジョブパッドi」や「Indeed」に掲載する求人広告を制作する際には、その“企業らしさ”を存分に言語化するヒアリングが重要となる。

企業が運営するホームページや採用サイト、SNSや「YouTube」アカウントなど自社で保有・運用するメディアを「オウンドメディア」と呼ぶ。

「ヒアリングを重ねて言語化するのは、企業の“ありのまま”の姿です。経営理念や社風はもちろん、普段の現場でどう知見を共有しているかなど、企業の“性格”とも言える情報をわかりやすく伝えています。こうした情報は、昨今大きな採用課題となっているミスマッチを起こさないために欠かせないものです。せっかく魅力ある人材を採用できても、早期離職となれば事業にダメージを及ぼしかねません。裏を返せば、企業の価値観に共感した実力ある人材を採用できれば事業を加速させていく大きな力になります」

優秀な人材を確保するには、“企業が思い描く未来”をわかりやすく示すことが必要となる。なぜなら、求職者は“自らが思い描く未来”が意中の企業と一致しているかを確認するからだ。

「求職者が企業と同じ未来を望んでいれば、新たな環境で力を発揮し長く活躍できるはず。ファンづくりカンパニーの役割は、求人の段階から企業の未来を示すこと。いわば当社は“行き先”を明確にするパートナーです。即戦力を迎えたい中小企業は求職者のスキルに注目しがちですが、働く環境が変われば仕事の進め方も変わるもの。新たな環境に順応できなければ、折角のスキルが発揮できない場合もあります。だからこそ、企業が目指す未来と価値観に共感できる人材の採用が大切です」

時代の変化にも動じずに成果を出す“自走型採用人材”を育てていく

「Indeed」を扱う広告代理店が数ある中でも、ファンづくりカンパニーはオウンドメディアリクルーティングを愚直に実践し続け、求職者の心に強く訴求する本質的なコンテンツ制作と効果的な広告運用で信頼を集めている。そんな同社が、2022年秋に「SNSリクルーティング実践スクール」を立ち上げた。

「シェアードバリューコンテンツが充実すればするほど、自社の価値観にフィットする求職者と“つながる”可能性が高まります。例えば、面白さ重視のコンテンツを通じて“ファン”をつくる。ユニークなコンテンツを発信し続けることで、自社の社風や雰囲気に共感するファンが育っていく。ファンが育った状態で採用情報を発信すれば、熱量のある求職者が応募してくれます」

「時代は大きく変化し続け、コンテンツを受け取る手段も変わりました。“求人情報検索エンジン”の『Indeed』は、まさにこうした変化の過程で利便性が評価されて台頭したのだと思います。その一方で、リアルタイムの情報検索は若い世代を中心にSNSで行う方が増えました。つまり、企業はもっと主体的かつフレキシブルに情報発信に取り組む姿勢が求められています。そして、それは採用活動でも同様です」

元来、求人情報を周知するにはナビサイトやフリーペーパーといった求人媒体の活用が当然だった。それ故に、広告代理店や制作会社に情報発信やコンテンツ制作を任せている企業も未だに多いだろう。

「多くの企業は、これからを担う若年層の採用を急いでいます。一方で、求人情報を届けたい若い世代はSNSを中心に多様な情報を得ている。『ナビサイトでの仕事探しは、自分に合わない』という声すら聞こえてくる今、SNSを活用しない手はありません。新たな時代に対応できるよう、企業が主体的に採用活動を進めていく。そんな“自走型採用”を広める最初のアクションとして、当社が新たにスタートした事業が『SNSリクルーティング実践スクール』です」

ユーザーと直接コミュニケーションをとりながら、自社のファンを育てていく。SNSに取り組む企業が増える中で、採用活動でも積極的にSNSを活用することが大切だ。長年求人広告に携わり、求職者ニーズの変化を敏感に感じ取ってきた篠塚氏だからこそ“人任せにしない採用情報の発信”の必要性を語る姿には説得力がある。

「若い世代がアクセスするSNSを活用して、シェアードバリューコンテンツを発信すれば効果的に採用活動を進められます。スクールでは、ユニークなコンテンツを自分たちで投稿できるようにゼロから解説し、自社のSNSアカウントを実際に運用しながら講義で伝えたノウハウを実践していきます。知識が身につけばつくほどアカウントが育ち、講義が終わる頃には自走できている…という、正に実践的なカリキュラムです」

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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