SBIグループのシナジー効果を最大化する中核2社【SBIインベストメント/SBI証券】| |スーパーCEO列伝|SUPER CEO

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【特集】SBIグループ Keyperson

SBIグループのシナジー効果を最大化する中核2社【SBIインベストメント/SBI証券】

文/大西洋平 写真/鶴田真実 | 2018.06.11

有望な成長企業への投資を行うSBIインベストメントと、圧倒的な収益力を誇るSBI証券は、グループ間における相乗効果を加速させる“中核企業”といえる。2社を率いるキーパーソンに、これまでの歩みと今後の戦略を聞いた。

アセットマネジメント事業の中核を担うSBIインベストメント

多岐にわたるビジネスを展開しているSBIグループだが、それらは金融サービス事業、アセットマネジメント事業、バイオ関連事業という3つのセグメントに分類できる。このうち、グループの中で“稼ぎ頭”となっているのが金融サービス事業で、その中でも突出した収益を上げているのがSBI証券である。

金融サービス事業に次ぐのは、SBIインベストメントが属するアセットマネジメント事業だ。国内外のスタートアップ(ベンチャー企業)への投資や、資産運用に関連する様々なサービスを手がけている。収益の面から見ても、SBI証券とSBIインベストメントがSBIグループ全体の収益のかなりのウエイトを占めている。

SBIインベストメント代表取締役執行役員社長で、SBIホールディングスの代表取締役執行役員副社長も務める川島克哉氏はこう語る。

「当社のベンチャーキャピタル事業は、有望なスタートアップを発掘し、投資するだけではなく、その成長をあらゆる方面から支援しています。投資先の選定に当たっては、手掛けている分野や成長のポテンシャルはもちろん重視していますが、その会社の商品やサービスが本当に世のため、人のためになるかどうかが何よりも大事だと考えています」(川島氏)

SBIインベストメント株式会社
代表取締役 執行役員社長
川島 克哉(かわしま かつや)

1963年生まれ、島根県出身。85年に山口大学経済学部を卒業後、野村證券に入社。その後、ソフトバンク(現・ソフトバンクグループ)、モーニングスター代表取締役社長、イー・トレード証券(現・SBI証券)取締役執行役員副社長、住信SBIネット銀行代表取締役社長、SBIマネープラザ代表取締役社長などを経て、2015年4月に SBIインベストメント代表取締役執行役員社長に就任。14年6月からSBIホールディングス代表取締役執行役員副社長も務めている。

AIやフィンテック、ブロックチェーン、バイオなど、世の中を変革しうる有望分野で独自の強みをもつと同時に、社会貢献度の高い商品・サービスを世に送り出そうとしているスタートアップに的を絞って、投資を行っているわけだ。

その一例として挙げられるのは、ロボットスーツ・HALの開発で知られる企業、サイバーダインだ。SBIインベストメントはこのスタートアップが設立されてまもない2006年に投資を行い、2014年3月にサイバーダインは東証マザーズ市場に上場を果たした。

同社の提供する人間の手足の力をアシストするロボットスーツは医療や介護の現場で活用されつつあり、日・米・欧で医療機器として承認されている。国内では2016年より、8つの難病のいずれかに診断され、一定の条件を満たした患者を対象に医療保険の適用も始まった。SBIインベストメントはこうした情勢を予見し、いち早くその活動を支援し続けてきた。

2012年に投資を行ったインドネシアのPT.Tokopedia(eコマース・モール業)をはじめとして、SBIインベストメントは海外のスタートアップにも積極投資している。川島氏によれば、「現状の投資比率(概算)は、件数ベースでは国内7:海外3、金額ベースでは国内4:海外6 」という。

2018年3月期にはSBIグループ全体の投資先企業のうち、13社がIPOまたはM&Aを達成しており、2019年3月期はそれを大きく上回る数になることが見込まれている。近年、特に重点的に投資してきたのはフィンテック分野で、すでにフィンテックファンドなどより67社への投資を実行もしくは決定済みだという。さらに足元では、AIやブロックチェーン、IoT、ロボティクスなどの分野へも積極的な投資を進めている。

出資先のスタートアップをグループ一丸となって応援する

SBIインベストメントは、創業以来、ICT、バイオ・ライフサイエンス・ヘルスケア、環境・エネルギー、フィンテックなど次世代の中核的産業となる成長分野の株式未公開企業に重点を置いて投資を行ってきた。

他のベンチャーキャピタルと比較し特徴的なのは、SBIグループ内に独自の支援体制(インキュベーションインフラ)を構築し、投資先企業の事業ステージに応じた営業支援戦略の立案、役員などの人材の派遣、内部管理体制の整備、海外進出支援などのフルハンズオン形式による積極的な支援を継続的に行っていることだ。

「当社の場合は、投資先の企業がIPOを果たし、投資資金を回収したらそれで終わりという関係ではなく、長く経営にかかわって事業の育成をサポートしていくという“ハンズオン(育成型)投資”のスタンスを貫いています。それが競合する他のベンチャーキャピタルとの最大の差別化ポイントでしょう」(川島氏)

しかも、SBIグループではSBI証券や住信SBIネット銀行などのグループ各社が結集してハンズオンが展開されることになる。その具体例として挙げられるのは、ロボアドバイザーによる全自動の資産運用サービスを提供するウェルスナビだ。

同社はまだIPOに至っていないものの、すでにこの分野でトップシェアを獲得し、拡大を遂げている最中である。やはり、SBIインベストメントは創業当初から積極的に支援しており、さらにグループ内の他の企業も、出資とは異なる様々なアプローチで事業育成に携わってきた。

「ロボアドバイザーは米国で多くの人から支持され、急成長中している分野でしたし、SBIグループ各社のお客様にとっても便益性の高いサービスになると確信していました。グループが一丸となって応援していくのは当然のことです。

そこで、『WealthNavi for SBI証券』『WealthNavi for 住信SBIネット銀行』という形にカスタマイズして、それらサービスの取り扱いを開始しました」

こう語るのは、SBI証券代表取締役社長で、SBIホールディングス取締役執行役員専務も兼任する髙村正人氏だ。

株式会社SBI証券
代表取締役社長
髙村 正人(たかむら まさと)

1969年生まれ、静岡県出身。92年に慶應義塾大学法学部を卒業後、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。2005年3月にイー・トレード証券(現・SBI証券)に入社し、同社コーポレート部長、SBI証券常務取締役コーポレート部管掌などを経て、13年3月から同社代表取締役社長を務める。13年6月にSBIホールディングスの取締役に就任後、同社取締役執行役員常務を経て、17年6月から同社取締役執行役員専務も兼任している。

この連携が奏功し、「ウェルスナビがこれまでに投資家から集めた総預かり資産のうち、約6割はSBIグループの金融機関経由のもの」(川島氏)だという。さらに髙村氏はこうも語っている。

「WealthNavi for SBI証券を取り扱ったことで、私たちは今までご縁のなかったお客様を獲得することができました。それは、投資には関心があるものの、忙しくて手がける余裕がないといった若い世代です」(髙村氏)

単にSBIインベストメントの投資先企業の活動を支援するだけにとどまらず、SBI証券をはじめとする他のグループ企業も大きなシナジー(相乗効果)が得られたのだ。

SBIグループは、多方面に事業を展開するコングロマリットと受けとめられがちだ。このようにグループ内の企業が巧みに連携し、互いにシナジーを発揮する関係が築かれているという点で、事業間の関連性の薄い単なる複合企業集団とは明らかに一線を画している。

SBIグループの創業ビジネスでありフロントランナーを務めるSBI証券

株式会社SBI証券の代表取締役社長である髙村氏は、川島氏と並んでSBIグループを支えるキーマンの一人。同社は冒頭で触れたSBIグループの3つのセグメントのうち、金融サービス事業における中核子会社だ。ネット証券の最大手で、口座数や預かり資産残高などで競合他社を圧倒している。

店舗を通じた対面営業が中心の従来型の証券会社を含めた比較でも、SBI証券の顧客口座数は2017年6月に業界2位の大和証券を上回り、同年9月には 400万口座を突破した。業界トップの野村證券に次いで業界2位のポジションを獲得している。グループ内におけるSBI証券の位置づけについて、髙村氏は次のように説明する。

「当社は1999年10月からサービスを開始しており、SBIグループにおける創業ビジネスです。2018年3月期には売上高、各利益とも過去最高を達成したように、圧倒的な収益を獲得してグループのけん引役となるのがその使命です。

一方、フロントランナーとして他のグループ会社が事業を立ち上げる際の“送客”を担うのも重要な使命となっています。当社で口座を開設しているお客様に、グループ内の銀行預金、ローン、保険、FXといった商品・サービスを紹介し、取引の仲介を行うのです。お客様側からすれば、SBI証券がワンストップであらゆる金融サービスを利用できるハブ=アクセス拠点の役割を果たしているわけです」(髙村氏)

SBI証券が群を抜くシェアを獲得できたのは、圧倒的に安い取引手数料を提示し、「株式をトレードしたいお客様にとって最も使いやすい証券会社というポジションを確立した」(髙村氏)ことが大きい。ただし、それはあくまで第1フェーズだという。

「2014年にNISA(少額投資非課税制度)がスタートし、2017年にはiDeCo(個人型確定拠出年金)の加入対象者が拡大しました。それまで私どもがなかなか開拓できなかった、投資経験のないお客様にもアプローチできる機会が訪れました。

それらにおいてもコスト(手数料)が極力かからない内容のサービスを提供したことが、ここ数年の顧客基盤の一層の拡大に寄与しています」(髙村氏)

NISAとは、所定の金額内の投資で得られた利益には税金がかからないという制度だ。一方、iDeCoは国民年金や厚生年金といった公的年金を補完するために任意で加入する制度で、従来は対象外だった専業主婦(夫)にも門戸が開かれた。これらの制度は、投資の初心者でも比較的利用しやすい。

さらに、髙村氏はこれまでネット証券が手を広げていなかった対面営業にも力を入れてきた。IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)と業務委託契約を結び、SBI証券が取り扱っている商品・サービスを仲介販売してもらうという戦略を打ち出したのだ。

「現在、私どもの直営店舗であるSBIマネープラザと、IFAを通じてお客様からお預かりしている資産の総額は1兆4000億円程度にまで達しています。そこから得られる営業収益も当社全体の20%程度を占めており、完全にゼロだった対面営業による富裕層向けビジネスが、ここ数年で大きな成長源となっているわけです」(髙村氏)

SBI証券、SBIインベストメントが共に目指している地方創生

IFAに続く販路の拡大戦略として、次に髙村氏が目を付けているのが、地方銀行をはじめとする地域金融機関だ。SBI証券が手掛ける商品・サービスの仲介販売においてすでに18行と提携を結んでおり、そう遠くないうちに30行までその数を拡大する方針だという。

「すでに当社の子会社であるSBIマネープラザと清水銀行(静岡県)が2017年10月から共同店舗を浜松市で運営しているように、今後も地域金融機関の店舗内にSBIマネープラザのブースを設けるなどの取り組みを積極的に進めていく方針です」(髙村氏)

日本銀行がマイナス金利政策を続けている影響で、預金で集めた資金を融資に回して得られる利ざや(融資で得る利息と預金に支払う利息の差)がいっそう縮小し、多くの地域金融機関は新たな収入源を求めている。提携によって地域金融機関は顧客に提案できる商品ラインナップを拡充し、顧客の便益性を高めることができ、SBI証券は、従来リーチできなかったような地方の顧客を開拓できる。

地域金融機関との関係強化といえば、前出のSBIインベストメントも同様だ。川島氏はこのように述べる。

「私どもにとっての大きなテーマは“地方創生”で、地域の活性化にベンチャー投資をどう結びつけていくのかを突き詰め、推進していきたいと思っています。最近は多くの地域金融機関からも私どもが運用するファンドへ出資していただいており、その直接的な収益以外のフィードバックも果たしていきたいのです。

有望な企業への投資を勧める以外にも、そういった投資先のベンチャー企業が開発した新しいテクノロジーを活用し、地域金融機関のサービス拡充や地元の活性化にまで結びつけていきたいと考えています」(川島氏)

川島氏いわく、近江商人の教えである“三方よし”こそ、SBIインベストメントの投資における根本だという。出資を受けたスタートアップ、そして投資のリターンを期待する出資者に対し、SBIが懸け橋となってファンド運営を行うことで、地域金融機関を取り巻く地方経済の活性化をはじめ世の中に貢献できる三方よしの投資事業を目指しているのだ。

法人向けビジネスを強化し、大手総合証券と真っ向から勝負

話をSBI証券に戻す。同社は富裕層向けのサービスにおいても、SBIプライム証券を設立することで、競合他社との明確な差別化を図ろうとしている。一定額以上の預かり資産のある大口顧客に対し、プライムサービス「SBBO-X」を提供するのだ。

これは、取引所の立会外市場(ToSTNeT、いわゆる「ダークプール」)を通じた株式の売買である。「SBBO-X」で取り引きすれば、従来よりも投資家にとって有利な約定価格や手数料で売買ができるチャンスが得られる。しかも、一部の大口顧客に対しては売買手数料を無料とするという。

「加えて、ホールセール(法人向けビジネス)の強化も図っています。SBIグループを率いる北尾は2015年1月の決算説明会で、『もはやネット証券との戦いは終わった』と宣言しました。そして、これからは総合証券を目指すと高らかに宣言しており、足元ではまさにその基盤を固めてきたわけです」(髙村氏)

北尾氏の「総合証券宣言」は、大手証券と真っ向から戦うことを意味する。前述したように口座数では互角の立場となっているが、企業を顧客とする法人向けビジネスでは後れをとっているのも事実だ。そこで、まず先行して進めてきたのがIPOの引受業務である。

「2018年3月期におけるIPO引受に関与した会社数では証券会社のなかでトップに立っており、後発ながらも大手と比べても遜色のない実績を上げています。IPOを果たした後も増資(株式の追加発行)や債券の発行を通じた資金調達のニーズが出てくるはずですから、ここ数年でそういった要望にも応えられる体制を整えてきました」(髙村氏)

2017年に設立した投資銀行部こそ、その役割を果たすためのセクションだ。資金調達のみならず、事業に関するコンサルティングやM&Aの提案なども守備範囲としている。

また、それに先駆けて2016年7月に設立された金融法人部では、金融機関向けに株式や債券の取引、投資信託の販売を展開している。新たに公共債(国や地方自治体、公共団体が発行する債券)の引受業務も開始し、いっそうの飛躍が期待されている。

「ホールセールの強化によって、国内における総合証券として成長していくための布石を着々と打っており、今はそれらを育成している最中なのです」(髙村氏)

胸を張ってこう語る髙村氏は、さらにその一歩先の展開にも着手している。それは海外事業で、香港における子会社のSBI Securities(Hong Kong)が2015年11月に現地で証券業の免許を取得しており、同社を通じた法人向けビジネスを本格化させようとしているのだ。

「国内の法人のお客様が海外での資金調達を行う際の引受ビジネスにも力を入れます。国内において設立した投資銀行部が海外の投資家にアクセスし、お客様が発行する株式や債券をご案内するという体制はすでに整っています。さらにその先では、海外法人の資金調達ニーズにも応えていきたいですね。

これらのビジネスは大手証券や外資系証券の独壇場となっているので、そこへ挑んでいくことは当社にとって、新たなフェーズに入ることを意味します」(髙村氏)

現実にこうしたビジネスが軌道に乗る頃には、国内大手総合証券3社(野村、大和、SMBC日興)という現在の構図は刷新されていることだろう。グループにおけるフロントランナーがそこまで存在感を強めれば、SBIホールディングスもメガバンクと肩を並べる金融グループとなっているはずだ。

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vol.35

企業ブランディング SNS時代のモノの広め方

株式会社ベクトル西江 肇司

PR業界の売上高ナンバーワン。「モノを広めるファストカンパニー」を謳い、ニュースリリース、動画、イベント、タレントキャスティングを駆使した比較的安価な商材・企業の情報拡散を手掛けるベクトルグループ。軸になるのは[PR×動画×アドテク]だ。危機管理など複雑さを増す昨今の企業ブランディングを探る。
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