“超”私的エクストリームな瞬間
株式会社サイバーエージェント
代表取締役社長
藤田 晋
写真/宮下 潤 動画/トップチャンネル 文/福富大介 | 2015.04.10
株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長 藤田 晋(ふじたすすむ)
1973年福井県生まれ。1998年株式会社サイバーエージェントを設立、代表取締役社長に就任。2000年に当時史上最年少社長として東証マザーズに上場。「Ameba」をはじめとするスマートフォンサービスをはじめ、国内No.1のインターネット広告代理店でもあるなど、インターネット総合サービスを展開。創業から一貫して、インターネット産業において高い成長を遂げる会社づくりを目指し、「21世紀を代表する会社を創る」をビジョンに、代表取締役社長であると同時に、「Ameba」の総合プロデューサーおよび技術担当取締役としてサービスの拡充・拡大に注力。2015年に株式会社AbemaTVを設立し、新たな動画メディアの確立に挑んでいる。著書に『藤田晋の仕事学 自己成長を促す77の新セオリー』(2009年日経BP社)『憂鬱でなければ、仕事じゃない』(見城徹共著 2011年講談社)『藤田晋の成長論』(2011年日経BP社)『人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない』(見城徹共著 2012年講談社)『起業家』(2013年幻冬舎)など。
藤田社長と麻雀との出会いは小学生の頃、テレビゲームの麻雀ソフトが最初だった。その後、中学に入って本物の麻雀牌を握るようになり、高校時代は友達の家で麻雀三昧。大学受験のために上京した時から雀荘に通い始め、大学入学後は「雀鬼会」に入会し、どっぷり麻雀に浸かってしまった。
雀鬼会とは、雀鬼と呼ばれる伝説の雀士、桜井章一氏が主宰する麻雀道場のこと。とにかく骨太の強い打ち手を輩出することで有名だ。
「やがて雀鬼会には行かなくなってしまいましたが、その後も雀荘でアルバイトをしながら打ち続け、麻雀が理由で留年もしたし、将来プロになろうかと真剣に考えたこともありました。でもならなくて正解でしたね。僕には、経営の方が向いていました」
失うものの大きさに気づき、社会人になってからは麻雀とは距離をおいて、勝負の場をビジネスの世界へと移した。そんな藤田社長が再び麻雀にのめり込むことになったのは、「個人の力を試したい」という渇きにも似た思いがあったからだ。
「経営者として会社を大きくしようと思ったら、自分以外の誰かに任せないといけない。会社は皆の力で大きくしていくもの。しかし、会社が大きくなるにつれ、自分だけの力を試したいと強く思うようになりました」
そんな折、競技麻雀のプロと知り合ったのをきっかけに麻雀熱が再燃。わずか1年で麻雀最強位にまで登り詰めてしまった。競技麻雀とは、運による要素を極力排除した麻雀のこと。左手は使わない、私語厳禁など、作法についても厳格なルールが定められている。
「麻雀というと賭け事のイメージや徹夜麻雀のだらしないイメージがあるかも知れませんが、そういったものとは無縁です。非常に高いレベルで真剣勝負ができる。このような環境を得られたというのは、僕にとっては最高の贅沢ですね」
しかし、年間売上高2000億円超の上場企業を率いる社長ともなれば、忙しくて麻雀をする時間もないのではないだろうか。
「3ヵ月位前から先に麻雀の予定を入れておき、その日に会食の申し出があっても先約があると言って断ります。それほど麻雀を大事に考えているということです」
麻雀は趣味ではなく仕事と言い切る藤田社長。その言葉通り、麻雀とビジネスは共通点が多いと言う。
「麻雀は4人でやるもの。だから自分が上がれるのは4分の1からせいぜい3割です。つまり残りの7割以上は忍耐の時間。仕事も同じで、忍耐勝負。うまくいかない時間帯をいかに耐えるかです。功を焦る人は、忍耐切れして崩れます。名声を得たい、借金を返したいといった別の欲望に流されて、勝負所ではないのに勝負してしまうからです」
麻雀で培った力が、仕事で活かされているとも感じるそう。例えば危険察知能力だ。
「麻雀をやっていると、言葉では説明できないような違和感を抱くことがあります。そういう時は、相手に物凄く大きい手が入っていたりするもの。これは仕事でも同じで、誰かに仕事を任せていて、言葉にできない違和感を抱く時は、大抵何かトラブルが起きている。そここそが、介入のサインです。もしもそれを気に留めずに放置してしまったら、取り返しのつかない事態に陥ってしまいます」
そして、会社経営に最も必要な力も麻雀から得た。
「僕は“勝負強い経営者”と言っていただくことが多いのですが、実際に大事な勝負所では必ず勝ってきました。例えば、インターネットバブルの時に上場を間に合わせたのもそうですし、黒字化は無理と言われていた『Ameba』を黒字化して事業として育てたのもそうです。
最近ではリソースを一気にスマートフォンにシフトしましたが、これも勝負所を見極めてのこと。このような勝負強さは、麻雀で鍛えられたと感じますね」
麻雀から得た気づきや学びは、まだまだ語り尽くせないという藤田社長。実はかつて所属していた雀鬼会の桜井章一会長と共著で、3月に『運を支配する』(幻冬舎)という本を上梓したばかりだ。
『運を支配する』(幻冬舎)では、20年間無敗の伝説の雀士、桜井章一氏の“ツキ”の極意を、藤田社長がビジネスパーソンにも分かりやすく、具体例を挙げながら解説している。
「桜井会長が麻雀を通して学んできた思考法や習慣を、僕がビジネスに役立つものとして翻訳した形になっています。まるで自分の手の内をさらけ出したような内容です。起業家には特に価値ある本になったと自負しています」
麻雀最強位という称号を手にして、本の出版に限らず、企業対抗戦や麻雀大会への協賛など、麻雀をテーマにした活動が増えている藤田社長。今後も多くの気づきを与えてくれた麻雀界の健全な発展のため、出来る限りの貢献をしていきたいと語ってくれた。
vol.56
DXに本気 カギは共創と人材育成
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
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