Passion Leaders活動レポート
佐藤亨樹/近藤 太香巳
文/宮本 育 写真/阿部 拓歩 | 2021.08.26
佐藤亨樹/近藤 太香巳
●株式会社Orchestra Holdings 代表取締役
佐藤亨樹(さとう としき)
1979年3月1日生まれ。大学卒業後、大手広告代理店に入社し、アカウントディレクターとしてマーケティング戦略、ブランド戦略、新商品開発、コーポレートブランディング、PR戦略開発、事業戦略立案など、幅広いコンサルティングを担当したのち、2009年に株式会社デジタルアイデンティティを設立。デジタルマーケティング事業を手掛け、創業からわずか7年、37歳で東証マザーズに上場。その後、事業の多角化に伴い、社名を現在の「株式会社Orchestra Holdings」に変更し、創業から9年目の2018年12月、39歳で東証一部に上場を果たす。2021年3月には、連結子会社である株式会社Sharing Innovationsが事業スタートからわずか3年で東証マザーズに上場。現在は、Orchestra Holdings傘下でIT関連事業を中心に9つの事業会社を経営している。
●株式会社ネクシィーズグループ 代表取締役社長 兼 グループ代表
近藤 太香巳(こんどう たかみ)
1967年11月1日生まれ。19歳のとき、50万円を元手に会社を創業。34歳でナスダック・ジャパン(現ジャスダック)へ株式上場し、37歳で2004年当時最年少創業社長として東証一部に上場。2015年グループ2社目を上場。エネルギー環境事業、電子メディア事業、経営者交流団体「パッションリーダーズ」のいずれも日本一の規模にまで拡大。新プロジェクトであるセルフエステBODY ARCHI(ボディアーキ)を全国に展開中。常に新しい事業領域にチャレンジを続け、ビジネスパーソンから若者まで情熱あるリーダーとして圧倒的な支持を得ている。世界的経済紙・Forbes(フォーブス)による『Forbes Asia’s 200 Best Under A Billion 2018』に選定。『JAPAN VENTURE AWARD 2006』最高位経済産業大臣賞受賞。『シーバスリーガル ゴールドシグネチャー・アワード2009 Presented by GOETHE』ビジネスイノベーション部門受賞。2020年業界をリードする環境先進企業として、環境大臣より「エコ・ファースト企業」に認定。
◆お金のデジタル化が進む時代。便利な一方、お金に対する想いが希薄になってきていると感じます。「目に見えないお金」との正しい付き合い方、どうお考えですか?
(東京/Sさん)
佐藤:「目に見えないお金」になったぶん、モノやコトの価値に対して、これまでよりもずっと素直に自分らしくアプローチできるようになったかなと思っています。これからますます見えないお金が普及していくと、自分の感覚で、これは1万円、これは5万円の価値があるということを、スムーズに表現しやすくなるのかなと思うので、その感覚に従った、自分なりの付き合い方を見つけるのがいいかと思います。
近藤:例えば京都に行って、好きな人にお土産を買うとき、3000円の八つ橋か、それとも「江戸時代の京都では、男性はおしゃれな手ぬぐいで競い合った」という逸話を添えた3000円の手ぬぐいだったら、断然後者に心がありますよね。お金を使う人の心が寄り添っている。目に見えないお金にせよ、キャッシュにせよ、生き金として使えるかどうか。人を喜ばせられるかどうか。お金の価値とはそういうものだと考えています。
◆未開拓の事業をスタートさせるとき、より一層の試行錯誤が必要です。失敗や批判もあります。そういったときのモチベーションは、どう保っていますか?
(北海道/Sさん)
佐藤:僕の場合、新しい事業を始めるとき、決めていることが3つあります。「やりたいこと」「やれること」「儲かること」。この3つの軸が重ならないものは新規でやらないと決めています。なので、そもそもやりたいことをやっているので、モチベーションははなからあります。また、批判については、事業に対する批判を人格批判と勘違いする方が多いような気がしますので、それとは混同せず、一意見としてとらえるよう意識してはいかがでしょうか。
近藤:僕は、周囲から「それは無理じゃない?」と言われたもののほうが面白くて、試行錯誤した結果、他社にないサービスをつくり上げてきた自負があります。失敗や、批判されたものを、どうやれば成功にできるのか答えを見つけ出せたら、それは自社ならではのキラーカード、独自性になります。だから、うまくいかなくて気持ちが沈むとか、批判されてモチベーションが下がるとかはなくて、ただただ無理なことを実現することが好きでやっています。
◆御社の給与・賞与の基準についてお聞かせください。
(東京/Kさん)
佐藤:まず各人の目標設定を徹底的にやります。高すぎると途中で諦めてしまうし、低すぎると簡単に達成してしまい努力のレベルが下がってしまうので、ギリギリ達成できる目標を4、5個、半期に一回設定します。その達成率に応じて評価し、給与の基準を決めます。賞与についてはあくまで出せるときに出すというスタンスです。例えば、賞与を出すタイミングで何かに投資したほうが業績を伸ばせるなら迷わず投資を選び、そこで余った分を1円でも多く社員に分配するほうがいいのではと考えています。
近藤:コロナの影響で当社は20億円以上の赤字が出ましたが、それでも給与は100%保証、利益還元金(賞与)もほぼ全額支給しました。その代わり、ここから先はない袖は振れないから、みんなで頑張るしかないよと伝えました。すると、社内の団結力がアップし、営業成績が上がっています。つまり、給与の額ではなく、仲間同士で困難を乗り越えよう、夢を叶えようというマインドにすることが大切ということ。そうしないと、お金だけについてくる人間になってしまうし、そういう人はいつか離れていきます。
◆決まったことを覆す人、離職する人が多く、社員とどう向き合えばいいかわかりません。どのようなことに気を付けていますか?
(大阪/Tさん)
近藤:AかBか迷っているときは、みんなで議論すべきだと思いますが、Aにするとリーダーが決めたら、それに反対していた人も決定に従うのが組織であり、何よりも一致団結して取り組まないと成功しないということを最初にわかっていただく必要があります。そういった行動規範を社員全員に示すべきだし、納得してもらう働きかけをしてみてはどうでしょうか。
佐藤:では、僕からは離職対策について。当社では、離職されるのは何かしらこちらに原因があると考えます。給与のことなのか、事業のやり方なのか、理由はそれぞれですが、まずは原因を知るため、各事業会社にて離職者に対してヒアリングを行っています。その後、毎月実施するマネージャーミーティングにて議題として挙げ、改善策を話し合います。離職者が出た月は必ずそのような場を設け、離職防止に努めています。
◆いつから、そしてどんな想いで上場を目指しましたか? また、上場のメリット・デメリットを教えてください。
(名古屋/Mさん)
佐藤:会社をつくるときに、上場することを事業計画に入れていたので、創業当時から上場を目指していました。当初は絶対にお金持ちになってやるぞという我欲で目指していましたが、創業から3、4年目には、社員とその家族を幸せにできる会社にしていかないといけないという思いに切り替わりました。メリットについては社会的信用、信金の流動性が圧倒的に違うこと。デメリットは大きなチャレンジがしづらいところだと感じています。
近藤:僕は、「上場カッコイイ!」からスタートしました。しかし、ITバブルの崩壊で東証マザーズへの上場が直前で取り消しになりました。それがどうして東証一部上場を果たせたのか。ここからは今まで言わなかったことを話そうかな。東証一部上場の前に、ナスダック・ジャパンに上場し、そこで十分満足したのですが、ナスダックが日本市場から撤退し、名称が「ヘラクレス」に変更されたのです。「俺はギリシャ神話に出てくるおっさんに上場したんじゃない!!」と本気で思いましてね。その反発心が一部上場へと駆り立ててくれました。
◆いつまで現役でいたい? 起業家の“カッコイイ”引退と、その後の展望もお聞きしたいです。
(東京/Tさん)
佐藤:誤解を恐れずに言うと、今この瞬間、引退してもいいです。もちろん、まだまだモチベーションはありますが、これまでやってきたことに対して満足しているので。また、いつ引退しても会社運営が滞らない組織体制になっている自信もあるので、いつまで現役でいたいということはそんなに意識していません。ただ、こうなったら潮時だなと思っていることはあって、それは世の中の新しいモノに対して自分の感度が追い付かなくなったとき。そうなったらもう代表をやるべきではないと思っています。引退後は、仕事なんてやりません。ひたすら遊びます。
近藤:判断力や分析力、発想力が発揮できるのは70代までだと思っていて、それらの能力がピークを迎える60代で引退しようと考えています。辞めるときは、僕が持っている議決権のある株をほとんど会社に置いていきます。そうすることで、次の経営者は誰に判断されることなく、自分の意思と生き方で道を決めることができるので。それが、実業家としての最後の使命だと考えています。引退後は何をしようかな。遊びをたくさん知っている佐藤に楽しい暇の潰し方でも教えてもらおうかな(笑)。
vol.56
DXに本気 カギは共創と人材育成
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
代表取締役社長
井上裕美