スーパーCEO列伝

岩をも通す一年を貫け!

株式会社はせがわ

相談役

長谷川 裕一

写真/宮下 潤 文/上阪 徹 マンガ/M41 Co.,Ltd | 2014.12.10

仏壇販売業で日本初のチェーン展開を成功させ、日本一の売上を達成。1988年には業界初の株式上場も果たした長谷川氏を突き動かす原動力となったのは、「日本一の仏壇屋になる」という目標だった。それは、人と人との出会いに感謝し、心の交流を生み出せる価値を提供すること。お手々のシワとシワを合わせて、しあわせ――。この言葉には、そんな長谷川氏の願いと、人の心を揺さぶり、岩をも通す一念が込められていた。

株式会社はせがわ 相談役 長谷川 裕一(はせがわ ひろかず)

1940年、福岡県直方市に生まれる。龍谷大学文学部仏教学科卒業後、家業の長谷川仏具店(現・株式会社はせがわ)入社し、営業経験を積む。その後、仏壇の製造直販システムの確立、直営店によるチェーン展開など、業界に先駆けたビジネスモデルやテレビCMの導入によって、社業の発展と業界のイメージアップに貢献。1982年4月、父・才蔵の志を継いで、株式会社はせがわ代表取締役社長に就任。1988年には宗教用具業界で初めて福岡証券取引所に株式を上場し、1994年には大阪証券取引所市場第二部に上場(2012年5月上場廃止)。仏壇販売を通して国内外に日本仏教文化の普及、仏壇の製作・修復技術者の育成にも貢献。2003年3月には東京藝術大学に「お仏壇のはせがわ賞」を創設したほか、京都西本願寺御影堂内陣修復工事、銀閣寺内部漆修復工事など、数多くの世界文化遺産、国宝・重要文化財の修復にも力を注ぐ。主な著書に『日本流』(ダイヤモンド社刊)、『お仏壇の本』(チクマ秀版社刊)、『商人道』(株式会社 はせがわ刊)がある。

長谷川裕一に学ぶビジネスに通じる「八正道」

「成功したい、幸せになりたいと願いなら、大いに努力するべき。迷ったり、悩んだりするのは、その努力が足りないからだ」と長谷川氏。だが、リーダーたる者、どんな努力をしたらいいのか。そのヒントが仏教の「八正道」の教えにあるという。

01「正見」で物事の本質を見つめろ

物事を正しく見ることは、簡単なようで実は難しい。そのたとえとして分かりやすいのが、仏教の経典に出てくる「群盲象を撫でる」という寓話だ。何人かの盲人たちが集まって、それぞれ象に触りながら「象とはこういう動物だ」と意見を語る。脚に触った者は「大木のようだ」と言い、お腹に触った者は「壁のようだ」と言い、尻尾に触った者は「縄のようだ」と言う。そして、それぞれが「自分の意見こそが正しい」と主張を譲らず争いになる。それは、互いの立場を理解し、意見を聞いて、真実をとらえようという努力を欠いるからだ。リーダーたる者、大きな視野に立ち、大局的な見地から物事を見つめなくてはならない。

 

02「正思惟」で明確な目標を設定せよ

多くの人が動き、大きな物事が成し遂げられる時、そこには誰かの強い思いがあるものだ。「正思惟」とは、正しい決意、意志のこと。誰でも理想や夢は描くのはたやすいが、それを実現するには「なんとしてでも、やり遂げよう」という強い「思い」を持つことだ。いつまでに、どのような方法で、どのレベルの夢を実現するのかを明確な目標として設定する。思いが本当に強ければ、夢は実現するものである。

 

03「正語」で言葉に魂を宿すべし

自分の志、目指すべき目標や夢をはっきり思い描いたら、言葉にして語る必要がある。正しい言葉づかいをすることを「正語」という。昔から、言葉には魂が宿るとされている。言葉には、それだけの力がある。言葉にしなくても、心の中で思っていればいい、と考える人もいるが、心は常にコロコロと変化する。放っておくととんでもないところに行ってしまう。自分の考えや目標を正しい言葉、プラス思考の言葉で語り続けていると、おのずと良い結果につながる。そのためにも、リーダーたる者、常に明るい言葉、明るい声、明るい表情で語らなければならない。


04「正業」で計画を実行に移せ

正しい行為、正しい働き方を「正業」という。目標や夢を言葉にして語ったら、正しいやり方で実行に移す。正しい行為の集積は、必ず成果を生み出す。満足な成果が得られない時は、自分の行動の仕方、努力の方向性が間違っていないかどうか、振り返って考えてみること。「一生懸命やったのに結果が出ない」というのは、努力の仕方に問題があったからだ。「自業自得」というように、すべては自分の行い(業)の結果である。

05「正命」で自らのスタイルを確立せよ

正しい生活をすることを仏教で「正命」という。一度、心に決めたことは、毎日の行動パターンにして習慣化すべきである。朝は決まった時間に起きる。顔を洗い、歯を磨く。家族と朝の挨拶を交わし、朝食を取る、新聞を読み、決まった時間に出社する。一連の行動パターンが決まっていれば、考えなくても自然に体が動く。会社の朝礼も、仕事に向かう姿勢を整えるために大切な役割を果たしている。会社の会議でも、株主総会でも、どんな儀式も自分のスタイルを整えないと無駄が増え、余計な回り道を強いられることになる。


06「正精進」で努力を続けろ

「正精進」とは継続して努力することを意味する。物事に一生懸命取り組んだり、励んだりする「精進」と同じことである。ただし、同じ「精進」でも、正しい目標に向かって、理にかなった努力を続けなければ意味をなさない。「こんなに努力しているのに報われない」と嘆く人がいるが、ひとりよがりに「苦労している」と思い込んでいるだけのことが多い。もしくは努力していること自体に満足して終わってしまう。間違った努力では、苦しいことばかりで長続きはしない。

 

07「正念」で自分の行動を顧みる

「正念」とは、自分の志、夢、目標に対する思いをいっそう深め、よい意味で執念を持つことである。「念」とは深い思いのこと。「念には念を入れて」「念のために」「正念場」といった言葉があるが、物事を成し遂げることができるか否かは、この「正念」で決まる。大きな夢を描き、目標を掲げて「成し遂げよう」と決心し、努力することはできる。しかし、成果が現れないと途中であきらめてしまう人がほとんどだ。成功する人と、しない人の大きな違いは、「どんなことがあってもやり遂げよう」という岩をも通す、強い一念をもって臨んでいるか否かである。

 

08「正定」で使命を果たすべし

心がいつも仏に向いていて、周囲の状況の変化に惑わされない安定した状態にあることを「正定」という。しかし、目的を成就し、使命を果たして終わりではない。さらに高い目標を設定し、正見→正思惟→正語→正業→正命→正精進→正念→正定のサイクルを繰り返していけるかどうか。しかも、スパイラル状に上昇しながら自分を高めていくことができるか。企業には、理念がある。一人ひとりがその理念を掲げ、自分の与えられた場で、今できることを一つひとつ実践していく時、社員も会社もともに成長していける。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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