資金調達ノウハウ

キャピタリストの視点[5]

[IPOを目指す企業の理想形]投資家は「経営者/経営チーム」の何を見ているか?

株式会社オプトベンチャーズ

パートナー

菅原康之

編集/塚岡雄太 | 2018.08.01

この連載では、これから起業したいと考えているプレ起業家や、起業して実際に投資家から資金調達をしたいと考えている方々へ向け、自身がベンチャーキャピタル業務をしている中でよく聞かれる質問などをもとに、成功するためのヒントをご紹介します。

今回は、「投資家にとって良い経営者・経営チームとは?」という疑問について。投資家同士では通じるこの表現も、実際に事業をやっている方にとっては疑問符が浮かぶのではないでしょうか? 投資家がどんな経営者や経営チームを「良い」と表現し、投資しているのか解説します。

株式会社オプトベンチャーズ パートナー 菅原康之(すがわら やすし)

2010年、オプトHLDに入社。新規事業開発社内インキュベーター、イントレプナーとして社内新規事業開発を専門とし、13年よりコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)事業を担当し、投資先の事業成長支援を行う。15年より、ベンチャーキャピタル子会社の設立時より参画。パートナーに就任。慶應義塾経営大学院経営管理研究科卒業(MBA)。

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「良いスタートアップって?」「要は人だよ」。それは答えになっていない

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投資家仲間で情報交換をしている中で、よく話題になるのが「良いスタートアップとは何か?」というテーマです。

投資家それぞれに一家言あるのですが、必ず最後には「要は人だ」という話に落ち着きます。これは全くもって真実なのですが、読者の皆様のような起業家にとっては、全く参考にならない話ですよね。

これから起業する人や既に起業している人にとって重要なのは、良いスタートアップには「どんな経営者」や「どんな経営チーム」があるのか、ということだと思います。

ですので、これまでの投資経験の中で可能な限り細分化して考えた、良い経営者/経営チームについてのヒントを整理してみたいと思います。

 

成功する経営者/経営チームの要素

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まず、「成功する」といっても、成功の定義が曖昧だと整理ができませんので、ここでは、一旦「成功=IPO」とおくことにします。

これまで投資活動をしてきて、経営者には大きく分けて3つのパターンが存在すると感じています。

1.組織や事業の細部まで理解しマネジメントをする
 「事業家型起業家タイプ」

2.優秀な経営メンバーに支えられる
 「ビジョナリー起業家タイプ」

3.経営者本人の営業力によって事業を支える
 「営業型起業家タイプ」

いずれにせよ、経営チームはそれぞれの強みを掛け合わせ、弱みを補いながら、チームとして一流である必要があります。

以前、東京証券取引所の友人にこの話をした時、その友人も上場企業の経営者はこの3タイプがきっちり1/3ずつだと話していました。つまり、上記の3つの起業家タイプでどれが良い悪いというのはなく、それぞれがその会社の個性なのでしょう。

ただし、その友人が続けて話していた内容はさらに興味深く、「上場企業の経営者はそれぞれだが、経営チームで見ると、間違いなくこの3タイプの人間がバランスよく揃っている」というのです。経営チームとしてみると、3つのタイプが揃っていないと成功しないということを物語っているのでしょう。

さらに、これまで投資検討した会社や出資した会社を、継続的にモニタリングしていると、IPO に向かいやすいのは下記の順番であると感じています。

IPOに向かいやすい経営者タイプの図表

※編集部作成

「事業家型起業家タイプ」は、 自身より優秀な経営メンバーをそばにおけないために事業が成長しないという傾向があるようで、結果としてM&Aがゴールになる可能性が高いのではないかと考えています。

また、多くの投資家に共通している意見が、ある種の「クレイジーさ」を持っている経営者が成功しやすいという傾向です。

何をもって「クレイジー」と感じるかは、それこそ投資家それぞれで異なっているので、こう言われても困るかもしれません。しかし、裏を返せば平均的で特徴のない経営者は成功しにくいということなのだと思います。これだけは間違いなく、投資家の共通意見でしょう。

 

経営者も経営チームも日々成長する。それを見据えた判断もある

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このように、成功する経営者/経営チームにはそれなりの特徴がありますが、それに当てはまらないからといって成功しないということにはなりません。

人は日々色々な成功や失敗を繰り返しながら成長をしていく生き物ですので、今時点で優秀な経営者/経営チームでなくても、時が経ち、経験を重ねるにつれ成功する経営者/経営チームになっていくことは、かなりの確率で起こっています。

投資家は、結果として投資をしなかった企業とも定期的に情報交換をしたりするので、経験の長い投資家ほど、その経営者や経営チームが成長している様を見ているものです。

それらの経験を元に、「この経営者/経営チームが数年後にどのぐらい成長するか?」という予測も踏まえて意思決定をする場合が多々あるのです。

この点については、それぞれの投資家の個人的な経験や投資件数、モニタリング件数などによって異なるため、確からしい定量的な検証データはありませんが、 投資家としても成功する投資をするために、将来的な成長予測をして判断しています。

 

経営者のスペシャリティ+経営者を補完する経営メンバー=優秀なチーム

結局のところ、成功する経営チームとは下記によって成立するのだと思います。

経営者のスペシャリティ+経営者を補完する有能な経営メンバー

そして、経営者のスペシャリティは経営者本人の経験によって良くも悪くもなりますし、経営メンバーも有能なメンバーが加わるかどうかで変化するものです。

ですので、まずはあなたが10年後になりたい自分を明確にイメージし、(できれば、実際に「成功」している実在の人)、その人に近づくための努力をしてほしいと思います。

今の自分自身が「成功する」経営者ではなくても、その「なりたい姿」を明確にイメージし、それに向かって行動していれば、いずれ成功する経営者、そして経営チームができあがることでしょう。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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