資金調達ノウハウ
GVA法律事務所
弁護士
猿渡 馨
編集/武居直人(リブクル) | 2018.09.28
GVA法律事務所 弁護士 猿渡 馨(えんど かおる)
明治大学卒業後、慶應義塾大学のロースクール修了。知的財産法務を中心にベンチャー企業に法務サービスを提供し、FintechやFrontierTechなど新たな分野についても熱心に取り組んでいる。
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クラウドファンディングとは、インターネットを通じて特定のプロジェクトや事業の企画者、起業家などが、そのプロジェクトや事業の広告、宣伝により、大衆に出資を募る手法一般をいいます。
しかし、ひと口にクラウドファンディングといっても、単なる寄付を募るものから、出資で集めた金銭を事業で運用し、出資者に利益の配当を行うものまで、様々な種類が想定されます。
クラウドファンディングで行われる手法を大きく分類すると、一般的には、①寄付型、②売買型、③貸付型、④投資型に分類されます。それぞれの分類ごとに法規制の有無や、規制の内容も異なります。
寄付型とは、見返りなく、プロジェクトや事業への共感をもとに出資が行われるクラウドファンディングをいいます。
この分類では、クラウドファンディングを行う起業家に対して特に規制があるわけではありません。しかし実際には、お礼品の送付が行われるなど、後述の売買型との線引きが微妙なケースも多く、実質的に売買に当たると評価できる場合には、 後述の売買型におけるケースと同様、特定商取引法の規制に留意する必要があります。
売買型は、出資の見返りに、プロジェクトや事業に関連する商品、サービスの提供などが行われるクラウドファンディングをいいます。
この分類の多くは、インターネットを通じた通信販売が行われているものと整理できるため、特定商取引法による規制の対象となります。従って、売買型のクラウドファンディングを行う起業家は、出資を募る際の広告に、同法が求める、価格、支払時期及び方法、並びに商品又はサービス提供の時期を表示するなどの対応が必要になります。
貸付型は、「クラウドレンディング」などともいわれていますが、大まかにいうと、大衆から貸付を受けるクラウドファンディングをいいます。もっとも、大衆から直接の貸付を受けてしまうと、貸付を行う大衆の個々人が貸金業法の定める登録を行う必要があるため、この方法は実質的に取り得ません。
そこで、貸付型の場合には、出資者と起業家の“マッチング”を提供する、いわゆる「プラットフォーム事業者」が、貸付の原資を集めるための匿名組合を組成し、そこで集まった金銭を貸し付けるということが行われます。
しかし、金融庁によれば、プラットフォーム事業者が、貸付先を明示して出資を集める場合には、個々の出資者は「貸金業法の定める登録を要する可能性がある」との指摘がなされています。
これについては、平成30年6月15日付の閣議決定「規制改革実施計画」において、貸付先の明示が可能となる運用への見直しの可能性が言及されており、出資者に対しては規制が緩和される余地があるといえます。つまり、将来的に、プラットフォーム事業者が貸金業法の定める登録を必要とすることに変わりはありませんが、「個々の出資者による貸金業法の定める登録をなくして」、プラットフォーム事業者が出資先を明示することができるようになるかもしれません。
いずれにしても、貸金業法の定める登録は、一般的な業規制の中でもハードルが高いものとされており、一定の財務基盤も要求されることから、スタートアップの取り組みとして行うのは現実的に難しいものとなっています。
投資型は、株式又は匿名組合持分を目的として、大衆に出資を募るクラウドファンディングをいいます。この分類は、出資の対価として有価証券の付与が行われるため、金融商品取引法による規制が及びます。具体的には、株式が対価となる場合には原則として、第一種金融商品取引業の登録が必要となり、匿名組合持分が対価となる場合には原則として、第二種金融商品取引業の登録が必要となります。
クラウドファンディングへの参入障壁緩和のために、一定の条件のもと、登録要件が緩和される制度もありますが、いずれにしろ、これらの登録を得るには、財務基盤や人的体制の構築の面でハードルが低いとはいえず、新規で始めるのは難しいものとなっています。
いかがでしたか? クラウドファンディングの種類や仕組みについて解説してきましたが、冒頭でもお伝えした通り、新たな資金調達の登場によってベンチャー企業の資金調達の方法や選択肢は広がったといえるでしょう。経営者としては、クラウドファンディングの仕組みや注意点をきちんと理解して、活用していきましょう。
vol.56
DXに本気 カギは共創と人材育成
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
代表取締役社長
井上裕美