スーパーCEO列伝

確固たる戦略で人を惹きつける

株式会社ゴーゴーカレーグループ

代表

宮森宏和

写真/宮下 潤 文/髙橋光二 マンガ/M41 Co.,Ltd | 2017.02.10

故郷・石川県の英雄、松井秀喜選手がニューヨーク・ヤンキースに移籍した2003年、本拠地開幕戦で放った満塁ホームランに衝撃を受け「自分もニューヨークで活躍するぞ!」とカレー店で起業を決意。松井選手の背番号55にあやかって「ゴーゴーカレー」と名付ける。

2004年5月5日(ゴーゴー)、東京・新宿に1号店をオープン“金沢カレー”ブームに火をつけた。そして、わずか3年後の2007年5月5日念願のニューヨーク店オープンを実現。国内70店舗・海外8店舗(2017年2月現在)を数える。この躍進の背景には、創業者・宮森宏和氏の「世界中の人を元気にしたい」という信念と熱意、そして目的を果たすための緻密な戦略がある。

株式会社ゴーゴーカレーグループ 代表 宮森宏和(みやもり ひろかず)

ゴーゴーカレーグループ代表・CEO。1973年、石川県金沢市生まれ。高校卒業後、旅行の専門学校を経て地元の旅行会社に就職。社長を目指すも不景気で業績が右肩下がりとなり、買収されて視野が開けない状態に。30歳を前に将来を案じていた2003年4月、ニューヨーク・ヤンキースに移籍した松井秀喜選手が開幕戦で満塁ホームランを放つ映像に震撼。学生時代にニューヨークに行き「いつかここに進出する!」と思ったことを思い起こし、独立を決意。好きでよく食べていた「金沢カレー」で勝負しようと、1年弱の修業の後、2004年5月5日、東京・新宿に「ゴーゴーカレー」1号店をオープン。3年後の2007年5月5日にはニューヨーク1号店をオープンさせ、念願を果たした。

成長のヒントがここにある!宮森宏和の6つのキーワード

スタッフ教育がチェーン拡大の礎であると心得、宮森氏は全スタッフに「開運手帳」と題するオリジナル手帳を配布したり、スローガンを掲げることでリーダーシップを発揮し続けている。宮森氏の経営哲学が凝縮された重要キーワードをピックアップ。

01元気の源

全スタッフに配布している「開運手帳」の表紙に「元気の源 ゴーゴーカレー」と書いています。ゴーゴーカレーグループの企業理念は「全てはお客様の元気のために」。ミッションは、「美味しいカレーを世の中に広め、世界を元気にすること」です。つまり、当社が自信を持って提供するゴーゴーカレーと当社のスタッフは“元気の源”なのです。

カレーは、日本の国民食といわれています。老人ホームでカレーが出ると、入居者の間から歓声が上がるそうです。日本だけではありません。ニューヨークの店にも、毎日のように通ってくださる外国人のお客様がいます。カレーには、世界中の人を元気にできる力があると思います。そして、松井秀喜選手に元気をもらえたように、当社も世界中の人を元気にしたい。“GENKI”を世界共通語にしたいと思い取り組んでいます。


02

我々の志は、カレーで、世界中を元気にすることです! そのために現在の事業があります。

 ゴーゴーカレーグループの事業目的、つまり何のためにこの事業を手掛けているのかという“志”は、「顧客の創造 顧客への奉仕 よりよい社会の実現」にあります。近頃、個人における“志”が希薄化していることを憂慮しています。何のために生きているのか? 大学に合格するため、就職するため、そんな風潮を強く感じますが、私は違うと思います。個人だけではありません。家庭も、企業も、国家も然りです。

「自分たちさえ良ければそれでいい」といった風潮、傾向はないでしょうか? それぞれが自分のレベルにおいてより良い社会を目指して力を合わせていく必要があると、私は考えています。だからこそ、当社はスタッフに“人の道”を説き、“志”をもつように指導しているのです。

03和の心

ゴーゴーカレーグループの2017年度のスローガンは「和をもって貴しとなし、篤く顧客を敬い、美味しいカレーを世の中に広めます!」です。聖徳太子の「十七条憲法」から一部を拝借しました。“和”とは、“和食”“和風”“和服”など日本のものを表す言葉。また、“平和”“調和”“親和”など“仲よくする”という意味の言葉でもあります。

店舗では複数名のスタッフが働いていますが、一人ひとり事情を抱えています。家族が急に病気になったり、困りごとが起こることもあります。そんな時は、すぐに家族のもとに帰してあげるべきです。スタッフの家族にとって、そのスタッフは頼れる存在であるに違いないからです。職場に人的な穴が開くことは痛手ではありますが、残りのスタッフでカバーすればいい。困ったときは、お互い様だからです。

04パーフェクトポジティブ

正式な英語では“Complete Positive”というそうですが、「パーフェクトポジティブ」のほうがわかりやすいので、あえてこう表現しています。

例えば「あなたは空を飛べますか?」と聞かれると、「無理です」「自分にはできません」と返事をするでしょう。不可能と思われる事象に直面すると、そのように思ってしまいがちですが、そこで“思考停止”になり進歩はありません。しかし、本気で「飛んでみたい」と思った人がいたから飛行機が発明されたのです。夜空の月を眺め、あそこに行ってみたいと思ったからこそ、ロケットができたのです。

一見無理と感じることも、そこであきらめず「どうすればできるか」を考え抜く。試行錯誤してみる。そうすれば、何かヒントがつかめるかもしれないのです。このことを私は「パーフェクトポジティブ」と呼んでいます。ネガティブなことを言っていても、何も始まりません。

05戦略なくして拡大なし

ゴーゴーカレーグループが「開運手帳」をスタッフに配布しているのは、一人ひとりが目標を達成し、夢を叶えてもらうためです。

夢を叶えるためには、戦略的な計画と、「いつまでにどこまで達成する」という期限と目標が必要です。さらに、目標達成に向かって実行を起こすには、日々戦略を見直し、どう実行するかというイメージを鮮明にもつ必要があります。加えて、計画の進捗管理が必要になります。

そして、目標を達成し夢を叶えたら、次の夢・目標に向けてまたチャレンジすることが大切。それが会社の拡大にもつながってくるのです。

この夢や目標は、仕事のことだけではありません。例えば「家族と過ごす」という、一見何でもないことであっても目標対象に加えるべきだと私は考えています。なぜなら「今年は家族と過ごす時間をつくる」と思うだけでは実行できない場合が圧倒的に多いからです。ですから、「いつ、何時間家族と過ごすのか。そのために、いつまでに何をクリアしなければならないのか」といった目標設定と実行計画、進捗管理をしなければなりません。

「開運手帳」には、「家庭(プライベート)の目標」「教養の目標」「財産の目標」「趣味の目標」「健康の目標」を記入するページを設けています。スタッフに、人間力を身に着け、豊かな人生を歩んでほしいからです。


06運気を上げる

“運”は、決しておろそかにはできません。私は、結果に一番影響をあたえるのは運だと思っています。

“いいチーム”とは、“いい運気をもったメンバーの集合体”であると私は考えています。想像してみてください。もし運気が良くない店長がいる店で働くとしたら、どんなことが起こると思いますか? 次々にトラブルが発生し、それをうまく解決できずスタッフが嫌になってやめていく、お客様も寄りつかなくなる、といったことになりがちです。

では、どうすれば運気は上がるのか。「開運手帳」には、「ゴーゴーカレーグループ十八条憲法」という、スタッフがしなければならないことが書かれています。中には「神仏を大事に!」「親と先祖を大事に!」「お米は一粒残さず!」といった“条文”もあります。

信仰心があれば、辛いときや困ったときも自分の軸をブレさせずに対処できます。親や先祖を敬うことや、生命の源である食べ物を粗末にせず食べられることに感謝することは、人の道の基本中の基本です。こうした正しいことを続けていれば、運気は上がるのです。その運気の総和で、店や会社は繁盛するのです。

SUPER CEO Back Number img/backnumber/Vol_56_1649338847.jpg

vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
コンテンツ広告のご案内
BtoBビジネスサポート
経営サポート
SUPER SELECTION Passion Leaders