スーパーCEO列伝

情熱経営でタブーに挑む!

SBCメディカルグループ

代表

相川佳之

写真/宮下 潤 文/髙橋光二 マンガ/M41 Co.,Ltd | 2016.04.11

相川佳之のポートレート
「理想の美容外科をつくろう」と2000年に独立し湘南美容外科クリニックを開業。わずか15年で国内外に47院を展開するまでに発展させた。現在では、美容外科のみならず、審美歯科や発毛育毛治療、レーシック、がん免疫療法など幅広く手がけている。

躍進の要因は、閉鎖的な業界体質にメスを入れた徹底的な情報開示。タブー視されていた治療直後の腫れが残る写真や、明確な料金表をホームページに掲載。この姿勢がユーザーの信頼を獲得した。その根底には「愛されるクリニックは必ず繁栄する」との信念があった。その情熱を胸に「アジア初の“伝説のクリニック”になる」とチャレンジを続けている。

SBCメディカルグループ 代表 相川佳之(あいかわよしゆき)

1970年神奈川県生まれ。1997年日本大学医学部を卒業し、癌研究所附属病院麻酔科に勤務。1998年より大手美容外科に勤務し、数千件の美容外科手術を経験。2000年に独立し、神奈川県藤沢で湘南美容クリニックを開業。徹底した顧客志向を貫き、料金体系の表示、治療直後の腫れ具合の写真を公開するなどの美容業界タブーを打ち破りながら、2020年2月までに湘南美容クリニックを101院にまで拡大させる。またSBCメディカルグループとしては美容医療のみならず、一般内科等の保険診療や、不妊治療や再生医療等の先進医療も手がけている。

相川佳之に学ぶ夢を叶える情熱哲学

読書家でもある相川氏。気になった箇所には必ず線を引き、手帳に書き写し、折にふれて読み返し、そして実践する。こうして自身の経営スタイルやメソッド、ノウハウを凝縮してきた。そんな相川氏が紡いできたキーワードとは?

相川佳之のインタビュー写真

01TTP

“TTP”とは、“徹底的にパクる”の略です。まず、物事を考えるには、知識や経験といった“材料”や“道具”が必要です。業界や市場に関する知識がなければ、経営戦略など考えられません。だからといって、一定の経験を積むには時間がかかります。ならば、それまでの間は経験を積みながらも、経験ある人の優れていると思われるやり方を素直にパクればいいのです。

そして、パクリ切って経験や知識を身につけたところで、自分オリジナルの方法を考えればいい。逆にいえば、経験者がやっていることを自分もやってみなければ、業界における“勝ちパターン”が理解できないでしょう。この“勝ちパターン”を理解したうえで、初めて差別化戦略を考え出すことができるのです。


021番にこだわる

1番と2番は、2番と100番より差があると思います。「日本一の山は?」と聞かれれば誰でも「富士山」と答えられるでしょう。では「2番目に高い山は?」と聞かれて、どれだけの人が答えられるでしょうか。つまり、1番とは極めて特別なことなのです。

そこで大事なのは、狭い分野でもとにかく1番になること。カテゴリーを絞ってニッチな領域をつくれば、競争相手が少なくなって1番になりやすい。そこを足掛かりにして、徐々に一番の領域を広げていけばいいんです。そうすれば「次」「次」とチャレンジし続ける情熱を継続させやすいはずです。

ちなみに私は、SBCを立ち上げた時、まず“脂肪吸引”で1番になろうと考えて実践しました。脂肪吸引を受けたい患者さんが日本全国から来るまで、一点突破し続けたからこそ、今の発展につながったのだと思います。“何でもできる”ではなく、“これだけは負けない”というものをつくることが大事です。


03徹底的に視覚化する

あらゆることを “視覚化” し、誰もが持っているものさしで測れるようにすることが大事です。視覚化されれば、状況がわかりやすくなります。状況が見えるからこそ「もっと改善しよう」という意欲につながるのです。逆に、状況がいいのか悪いのかがよくわからなければ、人は何かを改善しようとは思わないでしょう。女性がよく体重計に乗るのは、「あ、2kg太った」と認識して、痩せようと努めるからです。

開業直後に脂肪吸引の1番にこだわった時は、「神奈川県下の美容外科で脂肪吸引件数1位」「ビフォー・アフターの開示症例件数1位」など、いろいろな角度で1位を打ち出していきました。現在も、年4回ミステリー・ショッパーを入れて顧客満足度を数値化したり、リピート率や紹介率といった指標を活用して点数化し、誰でも状況が即座にわかるようにしています。“視覚化”は、スタッフの意識や行動を変える起爆剤になると実感しています。

相川佳之のインタビュー写真

04理念を抱く

当院が1番を目指したのは、美容外科業界の体質が良くなかったので、正しいことをする企業が1番になれば体質も改善され、業界全体の地位も向上すると考えたからです。

しかし、邁進するあまり、自分が“マシーン”のようになってしまい、いつの間にか大義を忘れ1番になることが目的になってしまっていたんです。すると、スタッフが次々に退職し、リピーターの患者さんも離れていきました。

「これは目指したことではない」と気づいたその時、ある本でアメリカのロチェスターにあるメイヨー・クリニックの存在を知りました。患者満足度が極めて高く、世界中から医療スタッフが集まり、全米で最も優れた病院といわれ、“伝説のクリニック”と呼ばれる病院です。強烈な衝撃を受け「自分が目指すのはこれだ」と直感し、「アジア初の“伝説のクリニック”になる」ことが自分のライフワークになりました。

同クリニックが実践する“Start small, Think big, Move fast”というフィロソフィーは、今も手帳に書き込んで自分の行動指針にしています。そして、SBCとしても“究極の三方良しを実現する”という理念を定め、SBCは徐々に生まれ変わっていきました。


05愛される存在になる

何事もシンプルに追求することが大事です。“三方良し”という理念は、スタッフ、お客様、社会の全てにとって良いということ。スタッフの幸せを犠牲にしても、お客様に不利益があっても、社会正義に背くようなことをしても、一時的にはうまくいくように見えることがあるかもしれませんが、絶対に長くは続きません。

大切なことは「患者さんに愛されるクリニックになる」「そのために、患者さんに接するスタッフを大事にし、愛情をもった教育をする」「患者さんからいただく対価以上のサービスを提供する」ということ。商売の基本そのもので、これをシンプルに実践しています。

SBCでは、スタッフ教育として、世界最高レベルのドクターを招いて技術を学んだり、一流のクリニックに見学に行くこともしています。また、“人を喜ばせることが好き”という思いをもった人の採用を徹底。“人を喜ばせること”は、教えて身につくものでもない資質です。この“理念採用”を始めてから、徐々に人材が入れ替わり、今では理念に共感してくれる人材ぞろいになりました。


060.1%を積み上げる

毎日、たった0.1%でも成長を続けると、1年後には1.44倍に成長できます。5年後は6倍、10年後は38倍、20年後はなんと1474倍です。「0.1%なんてバカバカしい」と思われるかもしれません。しかし、まさに「ちりも積もれば山となる」で、続けることが大きな成果に結びつくのです。

“0.1%の改善”ならば、誰でもできるはずです。1日5分、本を読む。1日1万歩、歩く。誰でもできる平凡なことですが、これを1年間やり続けることは、そう簡単なことではありません。どんな単純なことでも、5年、10年と愚直に続ける。そうすれば、非凡の存在になれるはずです。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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