刺激空間から革新が生まれる

感性を刺激し、新たな発想を生み出すシンプル&アートな空間

株式会社グラマラス

代表取締役社長

森田恭通

写真/岡田純也 文/福富 大介 | 2014.12.10

かの有名デザイナーのオフィスは一体どのようになっているのだろう?大きな期待に胸を躍らせ森田恭通氏のオフィスに一歩足を踏み入れるとギャラリーのようなエントランスの先に全ての機能を集結させた空間が広がっていた。

株式会社グラマラス 代表取締役社長 森田恭通(もりたやすみち)

1967年大阪府生まれ。独創的なインテリアやプロダクトデザイン、建築のディレクションで高く評価されているデザイナー。若干18歳にしてバーのデザインを手がけて以来、店舗、オフィス、ホテル、公共施設など数々の多彩なプロジェクトに参加。2001年の香港プロジェクトを皮切りに、アメリカ、イギリス、中国、中東、ロシアなど世界中へ活躍の場を広げ、インテリア、建築はもとより、グラフィックやプロダクトといった幅広い分野で創作活動を行っている。

一切の仕切りを排除し開放的なオフィス空間を実現

「デザインとアートは似て非なるもの」と語る森田氏。前者はビジネスの起爆剤になるが、後者は作者の主張や趣向であり、二つの間には明確な違いがあるという。そんな彼が率いるグラマラスには、デザインオフィスとして求められる機能性と個々の感性を刺激するアートな趣向が絶妙なバランスで共存していた。

場所は、東京・元麻布の住宅街に佇むマンションの2階。エントランスを抜けると、ゆうに100坪はある広々とした空間を一望できる。ことのつまりは、デザイン部門と営業部門、執務室と会議室というように、部屋と部屋を仕切る壁が一切存在しない、極めてシンプルなレイアウトを実現しているのだ。それは社長室も例外ではなく、森田氏のデスクは執務室の一角に紛れている……といった方が分かりやすいかもしれない。

「開放的な空間にすべての機能を集結させることで、社内のスタッフと、あるいはクライアントや社外のデザイナー、施工会社とのコミュニケーションが取りやすくなる。まして、日本と海外を行き来している僕にとって、ここで一挙に仕事ができることがとても重要だったりするんです」

エントランスの待合スペースにもアートが並ぶ。妖艶で存在感のあるアートフォトはMARC LAGRANGE 氏の『Casa Vingtage Cocktail』という作品(W200cm×H150cm)。絵画のような色彩は、来訪者を飽きさせることがない。

現在の場所に移転したのは、2011年1月。それまでは兵庫県芦屋市にオフィスを構えていた。

「閑静な住宅街にある建物でね。大きな吹き抜けもあって、おしゃれなんだけど、1階と地下の2フロアという距離感がスタッフ同士のコミュニケーションを邪魔してしまう。これではマズイな、と。それで、ワンフロアの広いオフィス物件を探したのですが、『住宅街で』となるとなかなか難しい。ようやく見つけたのが、ここ。青山にも、六本木にも近いし、僕らにとってはなにかと便利で心地よい環境です(笑)」

森田氏が、住宅街にこだわるのにも理由がある。

「コンクリートの壁に覆われているオフィスビルより、季節の移ろいや人の温もりを感じられる場所にいる方が落ち着くし、感性に響きますからね。そういう意味でも、今のロケーションはとても気に入っています」

デザイナーがデスクワークを行うエリアは、極めてシンプル。集中して作業に没頭できそうだ。手前のキャンドル型のライトは、森田氏のオリジナルデザイン。

一見シンプルに映るオフィスにも、森田氏やスタッフの感性を刺激するアイテムもふんだんに取り入れられている。訪れた人をドキッとさせるエントランスに飾られたアートフォトに、執務室に置かれたロープ製のオブジェに、デスクを灯すキャンドル型のライト……どれをとっても、見る人の心に響く芸術性に富んだ作品だ。

「著名な作家のものばかりとは限りません。けれど、心の底から『いいな』と思えるものと出会い、そこから刺激を受けることで、より良いものを生み出そうという意欲が芽生え、それをカタチにするチャンスが得られる。スタッフにも、本当にいいものを自ら手に入れることの尊さを知り、それを得るための力を培ってほしいと思っています」

ミーティングスペースと執務室は相互の様子が分かるようにガラスで仕切られている。オフィス内でひときわ目立つ森田氏のオブジェは、フランスの作家Mozart Guerra氏によるナイロン製のロープで製作されたアート作品。

外からは見えない所こそゴージャスに。女子トイレではグラマラスなシャンデリアが艶麗な光を放っていた。「トイレに行くと気分が上がる」と女性スタッフもお気に入り。

現在、世界14都市でプロジェクトが進行中という森田氏。海外の意外な場所で才能豊かなアーティストと出会い、強力なビジネスパートナーに発展するケースも多いという。

「例えば、執務室にあるロープアートは、フランスで偶然知り合ったMozart Guerra氏によるもの。それが縁で彼に、セント レジス ホテルのシャンデリアを製作してもらったりね。僕にとっては、世界中のあらゆる場所が仕事につながっているんです」

2014年11月8日からは、森田氏がデザインしたバカラ史上最大のシャンデリアが恵比寿ガーデンプレイス・センター広場で公開され、大きな話題を呼んでいる(展示期間は2015年1月12日まで)。来年春には、2012年からリモデルを推し進め、2013年4月に完成した伊勢丹新宿店再開発計画に加え、新たに5階、6階のフロアも完成する。そんな大プロジェクトも、世界中から高く評価される数々の物件も、すべてはこのオフィスから生まれる。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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