“超”私的エクストリームな瞬間

【旅】

旅が実践的なスキルと“内なる放浪者”を育てる

株式会社スプリー

代表・フリーランサー・コラムニスト

安藤美冬

写真/宮下 潤 動画/トップチャンネル 文/高橋光二 撮影協力/OFFICE(http://www.transit-web.com/shop/office/) | 2017.01.23

世界を旅しながら仕事をし、次々に自分の可能性を拓いてきた“ノマドワーカー”の草分け、安藤美冬さん。これまでに訪れた国は56か国。半ば偶然に身を任せる独自のライフスタイルが共感を呼んでいる彼女に、旅への思いについて話を聞いた。

株式会社スプリー 代表・フリーランサー・コラムニスト 安藤美冬(あんどう みふゆ)

1980年生まれ、東京育ち。慶應義塾大学在学中にアムステルダム大学に交換留学を経験。株式会社集英社に新卒入社後、ファッション誌の広告営業 と書籍のプロモーション業務を経て2011年に独立。組織に属さないフリーランスとして、ソーシャルメディアでの発信を駆使した、肩書や専門領域にとらわ れない独自のワーク&ライフスタイルを実践、注目を浴びる。雑誌「DRESS」の「女のための女の内閣」働き方担当相、 月間4000万PVを記録する人気ウェブメディア「TABI LABO」エッジランナー(連載)、越後妻有アートトリエンナーレオフィシャルサポーターなどを務めるほか、商品企画、大学講師、コメンテーター、広告& イベント出演など幅広く活動中。TBS系列「情熱大陸」、NHK Eテレ「ニッポンのジレンマ」などメディア出演多数。著書に『冒険に出よう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、7月1日発売の新刊に『ビジネスパーソンのためのセブ英語留学』(東洋経済新報社)がある。

船で世界一周をする「ピースボート」に乗船し講演を行ったり、フィリピンの英語留学が流行っていると聞いて、実際に足を運びその体験が本の出版につながったりと、旅を「楽しみ」としてだけでなく、「旅をしながら働く」というスタイルで、日本と海外を行き来する安藤さん。

訪れた国は、アジア、欧米、アフリカと多岐にわたり、実に56か国。そんな安藤さんが旅に誘われるようになった原体験は、小学校低学年の頃。

「今でこそ活動的な女性と思われているかもしれませんが、当時は体も弱く、家に閉じこもって『トムソーヤの冒険』や『十五少年漂流記』といった海外の冒険小説を夢中になって読む子供でした。そして、暮らしていた東京・三鷹の人たちとは全く違う肌の色をした人たちが住む世界がある、この場所がすべてではないという強烈な思いが私の心に残ったんです」

その思いを胸に飛び出したのが高校2年生の時。東京都が主宰する「東京都青少年洋上セミナー」という国際交流事業に参加。

「船で中国に渡り、北京、天津、上海を回り、現地の高校生たちとディスカッションしたり、船上で他校の生徒たちと交流したり、大海原や降るような星空を目の当たりにし、世界はなんて広いんだろうと感動しました。その時の鮮烈な体験が、20年経った今でも私の中心にあり続けています」

世界一周の船旅を体験できる「ピースボート」。水先案内人として乗船し講演活動を行うことも。

その後も、学生時代にオランダへ留学し、現地で尊厳死や同性婚といった先進的な文化に触れるなど、旅を通じて貴重な体験を重ねる。

安藤さんは“ノマドワーカー”の代表的存在として知られているが、この原体験がその後の旅への衝動につながっている。またそこには、「外見的なワークスタイルということよりも、自分の内にある“インナーノマド”を飼い育てている感覚がある」と言う。

「私は、旅の“移動”そのものに意味があると思っています。旅を通じて、いろいろな場所を巡ることで自分でも知らなかった“内なる放浪者”に気がづき、次の行動につながっていく。環境が変わることで、未知なる才能に気が付いていく感覚です。それこそが旅の醍醐味だと思っています」

その言葉通り、安藤さんは旅を通じての経験や出会いにより、自身のキャリアを形成している。

「私は、3年を一つの単位とする短期目標サイクルで活動しています。2011年に独立して最初のサイクルは、東京で獲得した仕事を海外と行き来しながらこなし、2014年から現在までの第2サイクル目は、海外で仕事を獲得し海外でこなすことを目標に行動しています」。

もちろん、最初から仕事を獲得する当てがあったわけではない。

「2サイクル目の最初の1年目は、インドネシアのジャカルタやカンボジアのプノンペンなど海外に行きながら、現地で起業している方や活躍しているプロフェッショナルを尋ね、話を聞いてそれをブログにアップするなど“種まき”をたくさんしました。不安もありましたが次第に、旅のエッセイの連載や書籍執筆、英語関連の仕事、メディア出演など、オファーが増えていきました」

現地での英語学習の体験がきっかけで生まれた書籍『ビジネスパーソンのための セブ英語留学』(東洋経済新報社)

迷いながらも、旅をし続け自分の可能性を広げていった安藤さん。その後も、ブータンやポートランドなど、時流にのった世界の都市を積極的に訪れては、ツアーを企画したり、書籍の執筆をしたりと、旅と仕事を結びつけながら、スタイルを確立していく。

「旅は実践的なスキルが学べるものだと思います。自分が何をしたいのか? どこにいけば、どんなことが学べるのか? いくらかかるのか?など旅を取り巻く一連の選択や決断は、実際の仕事や人生にも役立つはずです」

だからこそ「起業された方や、これからしようとしている方にも、ぜひ旅に出てほしい」と安藤さんは呼びかける。

「1週間でも旅に出て、“内なる放浪者”を刺激してほしいです。いい意味で迷いが生じるかもしれないし、立ち止まれるかもしれない。でも、そこから『これがやりたかった!』という、思ってもみなかった自分が見つかると思います」

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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