未来を創るニッポンの底力
株式会社Knot
代表取締役社長
遠藤弘満
写真/芹澤裕介 文/竹田 明(ユータック) | 2017.08.10
Knotが他社では絶対に真似できないと自負している「メイドインジャパン」。日本国内で生産するだけなら、努力すれば他社でもできるかもしれないが、Knotの製品にはすべて背後にストーリーが宿っており、同社ではそのストーリーも一緒に提供している。
「現代はモノが売れない時代です。ユーザーはモノを買わずに、体験にお金を払います。ショッピングにもモノを買うだけでなく、それ以上の体験を求めています。だから、製品の背後に隠されているストーリーを伝えるのが重要。メイドインジャパンの製品に込められている日本の製造業の想いや苦労にこそ、価値があります」
店頭でアドバイザーがユーザーにストーリーを語り、「Knot magazine」というオウンドメディアでストーリーを広めることで、メイドインジャパンのクオリティの高さを世界中に広めることができる。
製品のカスタムオーダー自体は、特に目新しいことではない。どんな製品でもカスタムオーダーで提供しているものはあるだろうし、インターネットの普及で最近はカスタムオーダーも事業化しやすくなっている。ただ、Knotが考えるカスタムオーダーはこれまでのものとは、まったく違う。
「従来のカスタムオーダーは、お客様の注文を受けてから製品を作っていました。しかし、当社が考えるカスタムオーダーは、お客様自身がその場で作ることができることを意味します。だから、インターネットを活用したカスタムオーダーはもちろん、オープンディスプレイで手に取って試せるのが不可欠な要素です」
現在では、ティファニーのようなメジャーブランドでもKnotのようにカスタムオーダー腕時計を販売しているが、遠藤氏がカスタムオーダー腕時計を考案したときには、日本に存在していなかった。
KnotがSPA(製造小売り)をビジネスモデルに選んだのは、中間流通のコストを削減して原価率を上げ、ユーザーに高品質なメイドインジャパン製品をリーズナブルな価格で提供したいと願っているからだ。
「製品の価格は、つまるところ値付けの問題で、メーカーの考え方なんです。原価1万円のものを1万1,000円で売るか10万円で売るかは、企業の戦略次第です。販売価格は必ずしも製造原価で決まるわけではありません。現に当社と同じ品質の製品を10倍の価格で販売している老舗メーカーもありますが、彼らには彼らなりの戦略があるのです」
ビジネスとは難しいもので、単純に安いから、お買い得だからという理由で売れるわけではない。Knotの時計がリーズナブルなのは、リストウェアを実現するための戦略なのだ。
vol.56
DXに本気 カギは共創と人材育成
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
代表取締役社長
井上裕美