Passion Leaders活動レポート

情熱と志のビジネスプレゼンテーション頂上決戦「Passion Leaders AWARD2018」レポート

写真/阿部拓歩 文/小松田久美 | 2018.10.10

2018年9月12日、東京渋谷区のセルリアンタワー東急ホテルにて「Passion Leaders AWARD 2018」が開催された。1~3次審査を通過し、ファイナリストとして登壇したのは12名の経営者たち。各人個性のあるプレゼンテーションを行い、会場は熱気に包まれた。

経営者たちがしのぎを削る白熱の270分

当イベントは、会員数4000名オーバーの規模を誇る経営者交流団体、一般社団法人パッションリーダーズが主催し、ビジネスのアイデアや実績、その志や情熱をプレゼンテーションを通して総合的に表彰するアワードだ。

ビジネスの先見性や独自性に秀でた経営者を讃えるだけでなく、出資や業務提携などの可能性を探ることや、次世代のリーダー発掘などを主目的としている。

当日は、全国のパッションリーダーズ会員と一般経営者およそ500名、そして錚々たる顔ぶれの審査員が会場に集まった。

審査員一覧 五十音順

SBCメディカルグループ 代表 相川佳之

株式会社LIFULL 代表取締役社長 井上高志

SBIホールディングス株式会社 代表取締役社長 北尾吉孝

株式会社ネクシィーズグループ 代表取締役社長 兼 グループ代表 近藤太香巳

株式会社バルニバービ 代表取締役CEO 佐藤裕久

株式会社ダイニングイノベーション 代表取締役会長 西山知義

株式会社DDホールディングス 代表取締役社長 松村厚久

C Channel株式会社 代表取締役社長 森川 亮

 

2016年開催の第1回で大賞を受賞した、株式会社ユビレジの代表・木戸啓太氏は、世界初のiPad POSレジアプリ「ユビレジ」のプレゼンを行い、受賞後は大手との業務提携や大型の契約が成立するなど、飛躍的な成長を遂げることができたという。

今回、総応募者数165名の中から、1~3次選考を通過して檀上に上がったファイナリストは12名。うち、2名はアントレプレナー枠だ。

各々が舞台裏でコンディションを整えるなか、ネクシィーズ・ワンダーウォールによる3Dホログラムを使用した盛大なオープニングでスタート。スペシャルナビゲーターのフリーアナウンサー・田中みな実さんと、タレントのハリー杉山さんが登場し、会場の期待は最高潮に。

その後、パッションリーダーズ代表理事の近藤太香巳氏により開会が宣言された。

株式会社ネクシィーズグループ 代表取締役社長 兼 グループ代表 近藤太香巳

「今日この日のために準備をしてきた経営者たち12名は、この舞台上で、これからプレゼンテーションを行います。錚々たる審査員の前でのプレゼンは、とても緊張するでしょう。そのプレゼンを聞くと思うと、自分も親になった気持ちで緊張してしまいます(笑)。

しかし、『できないんじゃないか』『苦しい』と、そう思うことほど、挑戦することで自分の限界は突破できます。万全の準備をしてきたプレゼンに対して、審査員からは鋭い質問が飛びます。それに答えることでも気づきを得ることができます。今日は、観覧している仲間とともに学びの日としてほしいです」(近藤太香巳氏)

ここから90分間にわたって、ファイナリストたちが自作のスライドを使いプレゼンテーションを行う。

見る者を引きつける超絶プレゼンテーション

登壇者たちが語るのはビジネスモデルの未来。目線を下に落とさず堂々と胸を張り、聞き取りやすいセリフのテンポ、そして身振り手振りで感情の起伏や緩急をつける。分かりやすいことは前提として、“いかに情熱を伝えることができるか”を追求。さながら海外のプレゼンテーション番組「TED」を彷彿とさせるクオリティだ。

株式会社LIFE CREATE代表取締役 前川彩香

トークノート株式会社代表取締役 小池温男

iCureテクノロジー株式会社代表取締役 小泉英一

IRGホールディングス株式会社代表取締役社長 森田宣広

プレゼンを終えた後は、審査員から矢継ぎ早に事業への質問が飛ぶ。「競合他社と比べた独自性は」「事業のリスクについて自分の言葉で語れるか」「価格設定の内訳は」など、経営者同士の真剣な問答が続く。

プレゼンの内容は充実していることが求められる上に、ファイナリストは自分に注がれる観衆の視線によるプレッシャーと、至近距離で支援を決める札を握りしめている審査員の期待を超えていかなければならない。

SBCメディカルグループ 代表 相川佳之

株式会社バルニバービ 代表取締役CEO 佐藤裕久

一流の経済人が応援したくなるほどの世界観を提示できるか、そして、極限の状態でリーダーとしての信念をいかに強くアピールできるかが、拮抗した実力の勝敗を分けるポイントだ。

応募者165名の頂点

厳正な審査の結果、大賞を受賞したのは、株式会社LIFE CREATE代表取締役の前川彩香氏。ホットヨガスタジオ「loIve」や、サーフエクササイズ「Surf Fit」などのフィットネスクラブを展開し、全国39店舗すべてにおいて黒字の実績を持つ。

【大賞】

株式会社LIFE CREATE 代表取締役 前川彩香

女性社員がつくる、女性のためのフィットネスで店舗の固定ファンを増やすことや、顧客層に合わせた店舗のブランディングにより、競合他社との差別化に成功していることを効果的にプレゼン。

「私たちが成長した理由は3つあります。ひとつは、女性顧客にマッチした商品モデルだということです。女性社員が自分のやりたいこと、実現したいこと、それらをタイムリーに商品化します。

2つ目は、女性育成能力です。女性の思考だけに特化した独自のメソッドを開発し、コミットメントの高い社員を育てています。この2つがあれば、あとは拡大です。

3つ目は、採用力。女性がつくり上げる理想のフィットネスには女性ファンがつき、採用力が備わります。内定承諾率96%、来期新卒入社160名を予定。この成長力で、年間39億1000万円を売り上げ、国内フィットネスにおいては市場第3位となりました。中期2020年は210店舗に拡大し、2021年には女性社員99%の企業として、上場を目指します」(前川彩香氏)

また、将来の展望として会員属性利用データを用いたビジネスへの経営戦略を挙げた点なども評価のポイントになった。

【準大賞】

IRGホールディングス株式会社 代表取締役社長 森田宣広氏

世界ですでに実績が出ているシェアリングフライトビジネスを、日本国内ではじめてサービス化した企業であることが評価ポイントに。また、海外とは異なる日本のマイルに対する各航空会社規約や、法律についても明確に答弁する姿勢と知識量は圧巻の一言。

【準大賞】

iCureテクノロジー株式会社 代表取締役 小泉英一氏

プレゼン冒頭で自身が20歳の頃に難病と診断されたことを告白。その体験があるからこそ、日本に暮らすすべての人に向けて、健康寿命を延ばす手伝いをしたいと語った。その覚悟は、鍼灸接骨院の全国展開にも表れており、政府が問題視している医療費増大の現実的な対応策も説得力があった。

【審査員特別賞】

株式会社サムシングファン 代表取締役 薮本直樹氏

リリース間もないサービスながら、すでに多くの企業から契約を獲得している実績と他社ツールとの差別化が評価された。審査員からの「詳しく聞きたい」札がもっとも多く挙がり、ビジネスとして期待の強さがうかがえた。

【情熱経済人賞】

トークノート株式会社 代表取締役 小池温男

すでに「LINE」や「Facebook」、「Slack」など超競合が乱立するSNS市場ながら、「Talknote(トークノート)」がもつ社員の仕事におけるアクティブ度や、メンタルヘルスを管理できる特許取得済機能、社員の履歴確認機能を打ち出すなど考え抜かれた独自性が注目された。優位性に関する質問に対しても芯のある回答で応え、自らの力で切り開いていく将来展望が審査員の心をつかんだ。

全体を通した感想として、ダイニングイノベーションの西山会長は、自身の経験を踏まえてコメントした。

「かつて20代の頃に、初めて会社を起こしたのは不動産会社でした。週刊ダイヤモンドに“時代を担う若手社長”とピックアップをしてもらいましたが、『他社との差別化は?』との質問に答えることができませんでした。その時、自分自身で他と差別化を図る意識が足りなかったことを思い知りました。牛角をオープンさせたのは、その2年後です。

ビジネスモデルの優位性は、“自身に問わないと認識することができません”。このアワードが、皆さんのビジネスモデルの長短所の見直しや、さらに磨きをかけることのきっかけとなれば、これほど幸せなことはありません」

株式会社ダイニングイノベーション 代表取締役会長 西山知義

SBIホールディングス株式会社 代表取締役社長 北尾吉孝

締めの言葉として、SBIホールディングスの北尾吉孝社長から経営者たちへエールが送られた。

「松下幸之助は、企業経営をする上で必要な心がけを102項書き出しました。中でも、最も重要なものとされたのが“熱意”です。経営者に技術や才能がなくても、熱意をもってその才を引き寄せればいい。けれども、熱意がないことだけはどうにもならない。熱意を持ち続けていれば、社員はついてきてくれます。経営者として、これからも熱意は忘れないでほしいと願っています」

「Passion Leaders AWARD」には、他社の事業研究や、それを自社と照らして考えた際の気づきが溢れている。そして、経営者として大切なことは何か、改めて考えるきっかけの場でもある。今回のアワードに参加した経営者は、それぞれの熱意を確認し合い、さらなるステージへと成長していくことだろう。

「Passion Leaders AWARD 2018年」ファイナリスト一覧 五十音順

幸巡株式会社 代表取締役 井上仁勝

株式会社inace 代表取締役 上野 真里子

トークノート株式会社 代表取締役 小池温男

iCureテクノロジー株式会社 代表取締役 小泉英一

ランガルハウス株式会社 代表取締役 大長伸吉

HowTwo株式会社 代表取締役社長 龍川 誠

株式会社LIFE CREATE 代表取締役 前川彩香

IRGホールディングス株式会社 代表取締役社長 森田宣広

株式会社サムシングファン 代表取締役 薮本直樹

ウェブニクス株式会社 代表取締役 山本茂樹

株式会社カルワノ 代表取締役 梅本一紀 ※アントレプレナー枠

アネアス株式会社 代表取締役​ 奥野健一郎 ※アントレプレナー枠

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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