スーパーCEO列伝

バリューはいかにして浸透するか ユーザベース号を動かす「7つのルール」

文/菅原さくら イラスト/野中聡紀 | 2018.10.10

エピソードオブ「7つのルール」

それぞれのメンバーは、それぞれのルールをどのようにとらえ、仕事の成果や働き方に生かしているのか。役員、新卒、管理部門、エンジニア、記者、ワーママ、ワーパパなど、多様な属性を持つ国内外出身の社員8人にアンケートを実施。失敗例も含めて、多彩なエピソードが集まった。

入社3年目・SPEEDAエンジニア・阿南肇史

新卒入社 入社2年目・NewsPicks記者・岡ゆづは

入社2年目・翻訳チーム・Kenneth Bresson

入社5年目・FORCASエンジニア・Jason Yap

入社4年目・NewsPicksコミュニティチーム・マネージャー・古屋壮太

新卒入社 入社2年目・SPEEDAカスタマーサクセスチーム・松井亮介

入社3年目・内部監査・毛利敦子

入社3年目・JVR執行役員シニアアナリスト・森敦子

ルール1<自由主義でいこう>

自由は、楽しい。精神をあらゆる方向へ解放し、可能性を無限に引き出してくれる。自由な環境の中でこそ、私たちの創造力は最高のパフォーマンスを発揮する。一方、自由は私たち一人ひとりに責任を要求する。それは自由を奪うものではなく、自由であるためのもう片方の翼である。

●場所にとらわれずに働く

場所にとらわれず働けるようになることが目標としてあります。そのための第一歩として今年に入って地元の九州で1か月間リモート勤務を実施しました。最初はリモート勤務自体に慣れてないこともあり戸惑いもありましたが、ビデオチャットの環境を最適化したり、いま自分が何に取り組んでいて、どんなことでつまずいている等をこまめにSlack(ビジネス向けチャットツール)に投稿したりすることにより、離れていてもメンバーと一緒に働いているという感覚を持ちながら勤務することができました。何よりも、その間オフィスで勤務して業務のフォローをしてくれたメンバーには感謝しかありません。
(入社3年目・SPEEDAエンジニア・阿南肇史)

●自由でいるために、周りと協力する

自由でいるためには、結果にコミットすることが必要です。より大きな結果にコミットするために、チームにコミットする。それぞれライフスタイルや働く場所が異なるメンバーと一緒に結果を出すためには、より高い水準のコミュニケーションが大切です。そこに自己実現も掛け合わせるなら、自分がやりたいことをきちんと言語化して、周りの協力を仰ぐ必要もあります。最初はうまくいかなかったけれど、今は自分のやりたいことが明確になったため、周囲とのコミュニケーションの質も改善されました。これまでよりも自分に素直に仕事ができるようになり、成長のスピードも上がりました。
(入社3年目・JVR執行役員シニアアナリスト・森敦子)

●ライフスタイルに合わせて自由に働く

子どもが小さいうちはできるだけ早く帰って子どもの生活リズムを守りたいと考えていたため、17時には帰宅するように16時過ぎにはオフィスを出ていました。その分、夜に子どもたちを寝かせた後から仕事に復帰するのだが、どうしても疲れて寝てしまうこともあり、最初の頃は時間の確保が難しかったです。しかし、子どもの成長とともに、自分自身も時間の使い方に慣れてくることで、平日できなければ週末に対応するなど柔軟な対応ができるようになってきました。今はさらに子どもが成長し、もう少し遅い時間まで働ける日もあり、ステージが変わるごとにそこに合った働き方ができていることはとてもありがたいと思っています。これからもいろいろな働き方を模索していきたいと思っており、それができることが楽しみでもあります。
(入社3年目・内部監査・毛利敦子)

●大好きなライブに行くためにリモートワークを活用

大きな新機能を開発するプロジェクトで、様々な問題が発生し、リリース日が予定より1か月ほど遅れていました。リスケされたリリース日は、ちょうど大好きなアーティストのライブを見に、大阪へ行く予定でした。ホテルやチケットも購入済みで、ものすごく行きたかったため、チームにリモートワークを相談し、合意をもらうことができました。リリース当日には準備も入念に行い、無事にリリースができ、ライブも観に行くことができました。
(入社5年目・FORCASエンジニア・Jason Yap)

●仕事に責任を持った上で、自由に

生活と仕事を両立するために、自由な働き方が重要になります。例えば、通院や子どものお迎え、その他の用事などがあると、平日の日中に離席しないといけないときがあります。そういった場合には、スーパーフレックス制度を利用しながら、チームメンバーとコミュニケーションを取った上で、用事を済ませることができます。ユーザベースでは、スーパーフレックス制度のもと、仕事に責任を持ちながら自由な働き方を取っており、ワークライフバランスを充実できるように努めています。
(入社2年目・翻訳チーム・Kenneth Bresson)

ルール2<創造性がなければ意味がない>

そこに未知なる驚きがあるか? それはユーザーの期待値を超えているか? 答えがNOなら世には出さない。私たちはチームの力を結集し、優れた技術力と独自のビジネスマインドを融合させることで、創造性にあふれる商品とサービスを提供し続ける。それが私たちの価値である。

●熱意をもってサービスの意義を伝える

創造性はゼロから生み出すよりは、今あるものをより生かす方向性もあると思っています。2015年に「NewsPicks」の認定コメンテーター「プロピッカー」を当時15名から100人に増やすプロジェクトを担当しました。公募するアイデアもありましたが、サービスの認知度が今ほどなかったので、“待っていても来ない”ことに気づきました。自分たちで直接探しに行く必要性を感じ、“個人の熱量や信用”でコメンテーターを依頼していきました。ソーシャルメディアを活用して多くの人にコンタクトをとるなど、とにかく体当たりですが、会う機会をつくり、サービスや意義を直接伝えることで、実際に参加していただけました。
(入社4年目・NewsPicksコミュニティチーム・マネージャー・古屋壮太)

ルール3<ユーザーの理想から始める>

自分たちのできることから考え始めてはならない。ユーザーの理想の実現に知恵を絞る。謙虚にユーザーの気持ちに耳を澄ませる。細部までこだわり抜き、なおかつシンプルな商品とサービスを追求する。結果、ユーザーの日常に深く入り込み、なくてはならない存在として愛されていく。

●ニーズを汲み取って細かなアップデートを

SPEEDAアジアの翻訳チームの主要業務は、日々お客様向けに業界レポートを翻訳・修正・アップデートし、「SPEEDA」英語版に掲載することです。そのため、お客様にとってレポートが使いやすくなるように、専門用語を使ったり、画像や表が見やすくなるように調整しています。また、他のSPEEDAアジアチームメンバーと協力し、「SPEEDA」英語版が海外のお客様にとってより良いプラットフォームになるための機能改善なども提案するなど、常にお客様の理想から考えて業務にあたるよう努めています。
(入社2年目・翻訳チーム・Kenneth Bresson)

ルール4<スピードで驚かす>

どこよりも早く開発し、どこよりも早く改善する。スピードは私たちの文化だ。私たちは、商品・サービスの進化、意志決定のスピード、業務の効率化、ユーザーへのレスポンスなど、経営にかかわるすべての局面においてつねに最速を目指し、社内から一切のムダを排除する。

●“150%の負荷”を目指して期限を決める

ユーザベースは「急成長」「非連続な成長」を目指している企業です。そのためにはメンバーもそういった成長をしなければなりません。期限があるタスクに取り組んでいるときは、通常よりも早く終わらせることを意識し、日頃から自分のタスクを数値化し、チームの数字を視える化することに取り組みました。そして、生産性を上げ、同じ期間でもクオリティを上げる。クオリティも自己満足で終わらないよう、ユーザーの皆さまとのコミュニケーションをもって確認をしていました。職務が変わり、新しい仕事をつくっていくことが仕事になってからは、当然期限も自分で決めることが増えます。その際は、自分に150%くらい負荷がかかる期限を設定して、スピードを意識しています。
(入社3年目・JVR執行役員シニアアナリスト・森敦子)

●どんな場面でも、すぐ動くこと

読者に対してと、上司に対しての両面で、「スピード」は非常に重視しています。読者の皆さまにタイムリーなニュースを届けることができるように、何か突発的な事件や出来事が起きたときにはすぐ動き、電話やアポ入れも躊躇わないよう心がけています。上司に仕事を頼まれたときは、期限より早めに高いクオリティで仕上げることを目指しています。
(新卒入社 入社2年目・NewsPicks記者・岡ゆづは)

●自分にできる“スピード”で対応

ユーザベースは仕事のスピードがとても速い会社で、私自身もできるだけそのスピードに合わせたいと思っていましたが、どうしても子どもがいると時間の制約があり、打ち合わせ時間が制限されるなど、周りに申し訳ないと思う部分も多くありました。そのため、法務関連で、誰かが私に相談や質問をしに来てくれたときには、どんなに自分の作業が忙しくても中断して、できるだけその場で回答するように心掛けていました。一人でできる作業を夜の家での仕事に回すようにし、人と話す機会(打ち合わせ等)をオフィスにいる時間に入れるように心掛けていました。
(入社3年目・内部監査・毛利敦子)

●相談を受けた翌日に、新機能をリリース!

「FORCAS(フォーカス)」では、お客様と共にサービスを作り上げていくという考えのもと、お客様とSlackでオープンにコミュニケーションをとることができます。ある日、お客様と機能のヒアリングをしていたところ、新機能として開発をすべきだとの思いに至りました。お客様が困っているため、チームに相談してすぐ開発に取り掛かりました。結果、翌日にリリース。お客様にリリースをお知らせしたときには、驚きとともに喜んでいただき、非常にうれしかったです。
(入社5年目・FORCASエンジニア・Jason Yap)

ルール5<迷ったら挑戦する道を選ぶ>

正解のない道を、私たちは歩いている。迷ったら挑戦する道を選ぼう。挑戦すれば失敗の確率が高くなる。全員で大いに失敗し、検証のPDCAを高速回転させよう。私たちの世界では、失敗は成功への近道なのだ。そこから強さが育ってくる。絶え間ない革新が生まれていく。

●この挑戦は、次の仕事にもつながる

入社してすぐのときに、ある社内システムを刷新しようという話になり、私が担当しました。システムの構成を考える際に、まだ利用したことのない技術を使うかどうかで悩んでいたところ、「迷ったら挑戦する道を選ぶ」だよね、というリーダーの後押しがあり新技術を導入しました。途中で移行が遅れてしまい、他チームに迷惑をかけてしまうこともありましたが、「やらなければよかった」という話には一切ならず、今後どうするかを議論できたことで、他のサービスで利用するときにもこのプロジェクトで得たスキルを生かすことができました。
(入社3年目・SPEEDAエンジニア・阿南肇史)

●怖くても、とりあえずやってみる!

ジャパンベンチャーリサーチ(JVR、ユーザベースのグループ企業)へ異動してからは、常に未経験の新しいチャレンジの連続という環境にいます。基本的には好きなことをやっているのですが、中には苦手意識のあることや自分自身の現在のスキルでは及ばないこともあり、正直怖さを感じることも多々あります。私にとっては、人前に出ることがそれにあたります。でも、ミッション・ビジョン含め、自分のやりたいことがその先に見えてる気がすると、同時にワクワクもします。だから怖さを感じていたとしても「とりあえずやる」。また、周りのメンバーから「こういうことをやってみたいんですけど、どう思いますか?」と相談されることもありますが、「とりあえずやってみたらいいんじゃない?」と答えています。相談してくる人も背中を押してもらいたいから相談にくるんでしょうしね。
(入社3年目・JVR執行役員シニアアナリスト・森敦子)

●未知のキャリアチェンジに踏み切った

子育て中は時間的な制約もあり、以前に携わっていた法務の仕事には限界を感じていました。そこで、キャリアを内部監査に転換することを決意。内部監査であれば自分である程度スケジュールをコントロールできるため、今のスタイルにはマッチしていると思う一方で、今まで経験のない職域に慣れるまで大変なことも多かったです。しかし、今では内部監査の業務の楽しさも見つけ、新しい目標も見つけることができたので、挑戦してよかったです。
(入社3年目・内部監査・毛利敦子)

●仕事のやり方を理解するための“挑戦”

新卒1年目のタイミングで、自分に何ができるのか不明瞭であったため、新しいチームの立ち上げ、新卒採用活動への関与など、とにかくチャンスにNOと言わず、たくさんの仕事を引き受けました。結果として、自分のキャパシティを超える仕事量を抱えてしまい、適切なタイミングでヘルプを出すこともできなかったため、様々な方面へ迷惑をかけてしまったことがあります。その経験から、自己成長のための挑戦ではなく、チームとしての成功を目的とした挑戦であることの重要性を認識し、自身のスケジューリングを踏まえて手を上げるようにしています。
(新卒入社 入社2年目・SPEEDAカスタマーサクセスチーム・松井亮介)

●知らないシステムを学んだ経験が、あとに活きる

「SPEEDA」のエンジニアをしていた頃、外部サービスと社内連携するプロジェクトで、テクニカルの担当になりました。しかし、まったく知らない外部システムだったので、とにかく1週間みっちり勉強をし、最後はきちんと開発ができるまでになりました。「FORCAS」チームに異動してからは、現場で唯一その外部サービスを触れるエンジニアとなることができ、現在は「FORCAS」のプラグイン開発でも、当時のプロジェクトで得た知識が生かされています。知らないシステムを勉強し、プロジェクトに挑戦した経験は、ずっと後まで自分を助けてくれるんです。
(入社5年目・FORCASエンジニア・Jason Yap)

ルール6<渦中の友を助ける>

私たち一人ひとりはスーパーマンではない。しかし、チームとして強い仲間意識で結ばれたとき、個の力は何乗にも増幅する。真価を問われるのは、誰もが投げ出したくなるような過酷な状況のとき。そんなときこそ、自ら仲間に手を差し伸べ、チームの力で最高の結果に変えていく。

●ほかの部署の採用活動も引き受ける!

まだ明確な人事機能がなかった頃、インターン生の採用は各部署で行っていました。その際、別部署でチームの立ち上げを行っているメンバーから採用に関する相談を受け、自身のKPIと直接関連がある訳ではなかったのですが、同じユーザベースの仲間としての共同体感覚から、彼らのリソース不足を補う形で、エージェントと連携した上での採用要件の定義、土日にイベントへ出向くなどして候補者の発掘を行い、別チームの採用を一貫して引き受けました。
(新卒入社 入社2年目・SPEEDAカスタマーサクセスチーム・松井亮介)

●手伝えることがないか、常にアンテナを

私の周りは先輩記者ばかりなので、教えてもらうことが本当に多い日々です。また、限られた人数で密度の濃い特集を回すため、一人ひとりの記者が複数の案件を抱えています。そのため、先輩がやっていることで何か手伝えることがないか、常にアンテナを張るように気をつけています。ただ、私は元来いろいろなことに手を伸ばしすぎる癖があるので、無邪気に「やります!」と引き受けた結果、少しあふれてしまい逆に心配をかけてしまったことも。そのため、“自分ができるライン、それ以上は難しいというライン”をきちんと認識し、チームのメンバーとしっかりコミュニケーションをとる大切さも学びました。
(新卒入社 入社2年目・NewsPicks記者・岡ゆづは)

ルール7<異能は才能>

異能の集まりには、何が飛び出すかわからないパワーがある。価値観、人種、宗教、性別、性的指向の違いを認め合い、尊重することで、未来を動かす力を生み出していく。そのために、思ったことはダイレクトに伝え、フェアでオープンなコミュニケーションを徹底する。

●NewsPicksだからこそ積める経験を生かす

多くの優秀な記者の方々がいる中で、自分が記者としてどう差別化したらよいか、というのは常に意識しています。他の若手記者と同じ経験を積んでいても、そこから抜きん出ることは難しいので、できるだけ“異種”の経験を積めるように意識しています。日本と英語圏の両方で、プロのジャーナリストとして取材・発信ができることをひとつの目標にしているので、海外要人への取材は積極的に行うようにしています。「NewsPicks」では、新米にもかかわらず大物インタビューにもたくさん関与させてもらえるため、UberのCEOやマクドナルドの日本社長、Slackの創業者など、海外の経営幹部に取材する機会もいただけました。自分ならではの記事を出していけるよう、今後も日英の取材人脈やインタビュー・執筆スキルを強化していきたいと思います。
(新卒入社 入社2年目・NewsPicks記者・岡ゆづは)

●お互いを尊重するコミュニケーション

共通したバリューを根底に、メンバーそれぞれが独立した価値観を持っていることがユーザベースの良いところだと思っています。一方で、多様性あるメンバーゆえ、当然意見が食い違うことがあります。自分自身の経験として、チーム内で利害が対立してしまった際、お互いに不満を表に出さずに蓄積し、最終的にチームミーティングの場で大きく紛糾してしまったことがありました。お互い違う価値観を持って、違う良さを持つ以上、それを理解するためには日々の小さなコミュニケーションがとても大切で、特に言いづらいような相手への違和感ほど、伝えなければ必ずギャップが大きくなって、お互いの信頼関係が損なわれてしまいます。それを理解してから、価値観が異なるためにコミュニケーションを避けてしまいがちな相手ほど、ふらっとカフェに行くなどして、近況や悩みを意識的に話すようにしています。
(新卒入社 入社2年目・SPEEDAカスタマーサクセスチーム・松井亮介)

●すごい人だって、ダメなところはある

私自身が異能を持っているかは別として、当社のエンジニアの中には技術的に尖っている人、自分が想像できないようなことを思いつき実装してしまう人など、尊敬できるメンバーがたくさんいます。一方で、その人たちにも苦手とする部分があり、その苦手としている部分をネガティブにのみとらえると、場合によっては周りからの理解を得られず、誤解されることもあります。個性は様々。その苦手とする部分も個性として受け入れ「それってすごいことだよね」と称賛できる気持ちや雰囲気をつくることで、様々なバックグラウンドの方が楽しく働けると思っています。
(入社3年目・SPEEDAエンジニア・阿南肇史)

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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