刺激空間から革新が生まれる

まるで自宅のような職場環境が生産性を上げ、成果を生み出す

クラウド会計ソフト「freee」を生み出したオフィスが醸すカジュアルな“仕事観”

freee株式会社

代表取締役

佐々木大輔

写真/宮下潤 動画/合同会社Logmotion 文/竹田明(ユータック) | 2017.04.10

個人事業主や中小企業向けにクラウド型の会計ソフト、人事労務ソフトなどを提供し、急成長を遂げたfreee株式会社。佐々木代表は、快適にクリエイティブな仕事ができる空間づくりを行っているというが、そこには同社の急成長を支える“仕事観”が色濃く反映されていた。

freee株式会社 代表取締役 佐々木大輔(ささき だいすけ)

1980年生まれ。一橋大学商学部卒。専攻はデータサイエンス。博報堂、投資ファンドのCLSAキャピタルパートナーズにて投資アナリストを経て、レコメンドエンジンのスタートアップであるALBERTにてCFOと新規レコメンドエンジンの開発を兼任。その後、Googleに転職し、日本およびアジア・パシフィック地域での中小企業向けのマーケティングチームを統括。2012年7月freee株式会社を設立。日経ビジネス 2013年日本のイノベーター30人/2014年日本の主役100人/Forbes JAPAN 「日本の起業家ランキング 2016」BEST10に選出。

ラウンジスペースにくつろいで仕事をするための大きなクッションがあったり、ダイニングとして利用するフロアがオープンキッチンスタイルになっていたり。freeeのオフィスをひと言で表すなら“カジュアル”だ。

「弊社のスタートは、当時僕が借りていたマンションのリビング。そこに3人の仲間が集まりました。だから、働く場所をいわゆるオフィスというよりも、リビングの延長だと今でも感じています。今のオフィスでも、創業当時のようなカジュアルで自由な感じを大切にしています」

福利厚生や社内人事制度にも独自のこだわりを持っているfreeeでは、勤務中の飲み物や軽食、そして夕飯(選べるお弁当)も無料支給されるという。

「自宅にいるときは、飲み物に困ることはないし、お腹がすいたら何かしら食べるものがありますよね。そんな自宅でくつろいでいるときのような、リラックスした気持ちになれることも意識しています」

スモールビジネスに携わる人たちを、バックオフィス業務から開放・自由(free)にするのが、freeeのミッション。開放や自由の象徴である鳥をロゴに採用、中でも飛行スピードが最速のツバメを採用し、いち早く世の中を変えていきたいというメッセージも込めているという。社内の様々な場所に描かれているだけでなく、ロゴ入りのTシャツやパーカーも支給される。代表を筆頭に社員が愛用しているアイテム。

会議室やダイニングスペースがあるエントランスフロアは、イベントスペースとしても利用している。月に一度、全社イベントが開かれるだけでなく、チームごとの飲み会も行われるという。店で飲むことを考えれば、自分たちで飲み物と食べ物を用意したほうが予算もかからない。

そうすると、チームや仲の良いメンバーで気軽に飲み会を開け、その回数を増やすことができ、コミュニケーションが深まりチーム力も高まる。

「週に一回は全社集会を開いて、会社のなかで起こっていることのアップデートや、最近活躍した人のインタビュー、社内のチャットツールを使って集めた質問に僕が答えるQ&Aも行っています。みんなで集まることで、組織が向かう先をしっかり確認でき、共有できます。各自が自分の取り組みに対してより納得することは、モチベーションの維持につながります」

さらにカジュアルなオフィスは、freeeのミッションにも直結していると、佐々木代表は語る。

新入社員の紹介パーティーや夏祭り、ハロウィンなど、月一回全社をあげたイベントが開催される。イベントの企画は、担当のチームが毎回持ち回りで考えるという。その他にも、興味があるテクノロジーを互いに共有しあう勉強会が開かれるなど、社員が交流を深めるfreeeになくてはならないスペースだ。

「個人事業主や中小企業といったスモールビジネスに携わる人をより強くするのが、僕たちの取り組み。それに賛同したメンバーが集まっています。僕たちは、自分たちの組織を会社ではなく“ムーブメント”ととらえていますから、オフィスは仕事をしに来る場所ではなく、自由なスタイルで“スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な活動にフォーカスできるように”というミッションへ向けて成果を出すために集まる空間なんです」

自らの組織を“ムーブメント”だと評する佐々木代表は、社内で自然に沸き起こる現象も敏感に察知する。それを会社としてオフィシャル化することで、より良い好循環が生まれ、同社のビジネスの幅が広がるという。

「例えば、自転車通勤のメンバーが多いため、会社としてスペースを借りてそこを駐輪場に改装しました。すると、社内のチャットツールに合言葉を入れると外からシャッターが自動で開くように自分達で使いやすくしたんです。そんな、自由で自発的にアイデアが湧き出る社内の雰囲気が、新しいサービスの開発や新規事業に結びついていきます」

B1の一角に設けられた作業スペース。靴を脱いで床に座り、壁にクッションでもたれかかるなど、リラックスしたスタイルで仕事を進められる。地下室をイメージしたライティングの効果もあり、ひとりで集中したいときに利用する人が多いという。

これからの時代、カジュアルなリラックスできるオフィス空間で、“好きだから”という気持ちで働くことがもっとも生産性を高め、それが会社の未来を切り開くと語る佐々木代表。

「“働く”や“オフィス”といった言葉に対する固定概念をみんな持っていますが、オフィスに当たり前にあるものは本当に必要なのか? と、一度考えることも重要なのではないでしょうか。反対に、今まではオフィスになかったものでも、必要なら使うといった自由な発想が大事。オフィスの固定概念から逃れ“労働・仕事をする場”から“好きなことをする場所”に変化させることが、今後の成長につながると確信しています」

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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