技術力

独自の器材メンテナンスでダイバーの命を守る頼れる「バディ」

合同会社I BUDDY

代表

園田 万伍当

写真/田村和成 文/中野祐子 | 2019.03.11

スキューバダイビングの器材メンテナンスを専門に行い、業績を伸ばす合同会社I BUDDY。命を左右する分野にも関わらず、ユーザーの意識不足、業界や作業の不透明さを独自のスタイルで打破した園田代表に、メンテナンスにかける思いを伺った。

合同会社I BUDDY 代表 園田 万伍当(そのだまこと)

1970年大阪府生まれ。マツダ株式会社でメカニックとして活躍後、地方公務員に転職し、大阪市交通局(現:Osaka Metoro)に勤務。趣味で始めたスキューバダイビングのインストラクター資格取得を機に退職して2001年ダイビングショップを開業。2006年から器材メンテナンスに特化し、2018年に法人化。国内外のダイバーから支持されている。

よく耳にするバディという言葉。意味は相棒で、「I’m your buddy=私はあなたの相棒です」との思いを込めて、社名を「I BUDDY(アイバディ)」にしたという園田万伍当(そのだまこと)代表。

15年ほど前、趣味でスキューバダイニングを始めたところ、海中の神秘的な美しさに魅せられ、インストラクターのラインセンスまで取得。地方公務員を辞めて、2001年ダイビングショップを開業した。

「仕事は安定していましたが、自分で何かをやりたい気持ちがずっとあったので、開業に迷いはなかったですね。ただ、ダイビングツアーの企画やガイド、Cカード(Certification-card)というライセンス取得の講習会、器材販売など当初は順調でしたが、広告宣伝をはじめたら想定以上に経費がかかり、このままでは経営が立ちゆかなくなると焦りました」

そんな時、着目したのがダイビングに使用する器材のメンテナンスだった。

「地方公務員になる前は自動車会社のメカニックをしていたので、機器に関する知識と技術があり、お客様の器材のメンテナンスを行うこともありました。忙しい時は外部に依頼していたのですが、正直にいうと、作業的にも価格的にも納得できなかったのです。

また、ガイドやレッスンを行うなかで、一般ダイバーだけでなく、器材の知識が乏しいプロダイバーにも少なからず遭遇し、『大切な命を託すものなのに安易に考えていないか、事故が発生してからでは遅いのでは』と、危機感を持っていました。

それなら、インストラクター、メカニックと、自分の持つすべてのスキルを生かせる器材のメンテナンスに特化することを決めたのです」

器材の知識不足による事故ゼロを目指し、プロアマ問わず、メンテナンス前後のアドバイスも欠かさないという園田代表。

園田代表が真っ先に取りかかったのが作業の「見える化」だ。

器材のメンテナンスでは、レギュレーターのオーバーホールが重要となる。このレギュレーターとは、タンクに圧縮して充填された空気をファーストステージ、セカンドステージという2つの部分で人が吸えるよう減圧して供給するもの。空気のない海中で呼吸する、まさに命を守る器材だ。

そのため1年に一度、または潜水本数100本を目安に、分解、洗浄、必要であれば部品交換をするオーバーホールが不可欠なのだが、これに託けて有無も言わさず全部品を交換し、高額な代金を請求されるケースもあるという。

「車の修理・整備は、国家資格を持った整備士が現状点検を行い、必要な作業内容、部品、費用を提示してからの作業が常識ですが、ダイビングの器材メンテナンスは基準が曖昧かつ資格も必要ないので、作業側の知識や技術が伴っていないことが否めません。

そこで、まずお客様の器材を細部までチェック。専用の計測器や水槽も駆使して、減圧状態などを測定していきます。この事前点検後、メンテナンス実施記録というオリジナルの書類を作成してお客様に提示。

状態や計測数値を詳しく説明して、見積もり、了承いただいて初めて作業に取りかかります。状態が芳しくない場合は下取りや買い換えも比較検討できるよう提案するのも、当社ならではです」

器材はメーカーごとに構造や部品などにクセがあり、作業は想像以上に難しく、さらにユーザーに合わせて繊細な調整を重ねる。

こうした明確な数値化に加えて、園田代表は作業工程や使用する工具、機器、洗浄剤までホームページで開示。高い技術力はもちろん、ダイバーとしての経験値もメンテナンスに生かしている。

「器材は部品を洗浄したり、交換すれば完了ではありません。オーバーホール後も計測器や水槽を用いてテストを繰り返し、性能を確認。さらにお客様のダイビング歴や好みによって空気の吸い方、吸い心地が変わってくるため、微調整が必要です。

感覚的な要素を器材に反映するのは難しいのですが、インストラクターとして数多くのお客様を指導してきた経験、メーカー問わず多種多様な器材に触れてきた実績、同じダイバーとしての感覚が十分あるので、要望にスムーズにお応えできます。

もちろん、実際に海中で使っていただいた後、気になることがあれば、アドバイスや再調整などアフターサポートも行っています」

ハード面にもソフト面にも優れたI BUDDYへの信頼度は非常に高く、現在、顧客数は2000以上で、海外から器材を持ち込むユーザー、プロダイバー、器材のレンタルを行う現地ショップなど顔ぶれも多彩。1年後、2年後と、継続的な依頼と先の利益が見込めることも強みだ。

さらに園田代表は、ダイビングの啓蒙活動にも力を入れ、その一環として器材講習会を定期的に開催している。

「器材の名称や役割、構造をしっかり把握すれば、より正しく使うことができ、器材への負担や故障を軽減できます。また、現地で不具合に気づいたり、トラブルに対応したりでき、痛ましい事故も未然に防げるのです。器材と共に知識もダイバーの命綱。思う存分に楽しむためには、安全と万全を期すことが欠かせません」

2018年に法人化を果たしたI BUDDY。仕事に対する意識が大きく変化したと話す。

「以前は自分がやっていければいいという思いがどこかにあったのですが、経営者となったことで、会社や仕事、スタッフを守らなければならない、そして、この意識と責任がお客様の喜びにつながると考え、行動するようになりました。

目標はメンテナンスを通じてお客様に安全・安心をお届けすること。また、現在ダイビング人口は約150万人とされていますが、少子高齢化やレジャー・アクティビティの多様化もあって、ライセンス取得者や定期的にダイビングを楽しむ人は横ばい状態なので、ダイバーはもちろん、ダイバーでない方にもダイビングの魅力を伝え、人口の増加、メンテナンスを含め市場の活性化にも力を尽くしていきたいです」

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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