株式会社ドリームシーカー
代表取締役社長
清水一寛
写真/十万 正人 取材・文/松本 理惠子 | 2021.09.10
株式会社ドリームシーカー 代表取締役社長 清水一寛(しみずかずひろ)
1958年、岩手県花巻市生まれ。関西外国語大学英米語学科卒業。シンセサイザー製造・販売メーカーの株式会社コルグを経て、イベント企画制作会社、ロボット制御デバイスの製造販売会社に転職。2005年、前会社の事業を引き継ぐかたちで独立、有限会社ドリームシーカーを創業。アミューズメントに特化し、音と光の信号による動作プログラミングでロボットを動かす。2018年よりAIをカスタマイズした2.5次元のサービスロボットを開発していたが、コロナ禍の影響で中断を決意。2020年春からはペット型ロボットの開発で新展開を図る。
音楽や光に合わせて動くロボットのプログラミングを得意とするドリームシーカーは、イベントやテーマパークのアミューズメント・ロボットの制作や、リアルさとファンタジー性を備えた2.5次元ロボット『Kan Ban Musume』の自社開発などを行ってきた。2020年春からは、一人暮らしの高齢者に向けた「ペット型ロボット」の開発に取り組んでいる。開発のきっかけは、清水一寛氏が高齢の両親を抱える知人から、「なかなか実家に帰れないので、遠隔でも安全が見守れるロボットが作れないか」と相談を受けたことだった。
「当初はペット型ロボットの目にカメラ機能をもたせて、家族がスマホでその画像を確認できるようにしたり、双方向で会話ができたりする仕様を考えたのですが、高齢者や家族、介護施設などにヒアリングをしたところ、『監視されているようで抵抗がある』『乱暴に使って壊してしまう人もいそう』などの声をいただきました。また、高機能にすると販売価格も上がるため、多くの人に気軽に使ってもらうことが難しくなります。そこで、機能をできるだけシンプルにし、価格も抑える方向にシフトしました」
今回、プロトタイプとしてつくられたペット型ロボットは、愛くるしいゴールデン・レトリーバーの仔犬型で、頭部をなでると尻尾や脚を動かして「ワンワン」と鳴く。離れた場所にいる家族がスマホに専用アプリをダウンロードしておけば、ロボット犬が反応したことを知らせるメッセージが届き、親が元気でいることを確認できるという仕組みだ。
「愛犬やぬいぐるみを可愛がる感覚でそばに置き、自然になでたくなるように、ロボット犬の顔つきや手触り、大きさや動きなどの試作を重ねました」
このプロトタイプを用いて、間もなく量産化に向けたマーケティングを始める段階に来たと言う。
「早ければ今年のクリスマス頃にもクラウドファンディングで購入予約を募り、100台前後を販売する予定です。購入者から使用感などのフィードバックを受けて、さらに改良した製品版を来年中にはリリースしたいですね。量産が可能になれば、電子部品の軽量・小型化ができ、バッテリーの持ちも向上します。将来的には別の犬種や猫型などもつくっていければと思っています」
クラウドファンディングの募集時期などの詳細は、ドリームシーカーの企業ホームページで随時発表される。
清水氏が今後の事業展開としてもう一つ考えているのが、自社の技術力や人脈を活かしてIoT分野に挑戦することだ。
「スマート家電がいろいろなメーカーから出ていますが、活用できている人はあまり多くありません。高齢者や機械オンチの人でも抵抗なく使えるIoTがあれば、使ってみたいという潜在的な需要は大きいはず。自社の強みである機械の造形デザインから部品の組み立て、動きの設計やプログラミングなどの専門技術と、AIや通信の技術が組み合わされば、より生活に密着したIoTが実現できるに違いありません」
IoTは生活の効率化・快適・便利がキーワードだが、「ドリームシーカーがやるからには、そこに“楽しい”や“面白い”を加えたい」と、清水氏は意気込みを語る。たとえば、家主が帰ってきたらペット型ロボットが玄関にお迎えに来て、部屋の電気を点けてくれたり、話しかけると音楽を流して踊ってくれたりすると、日常にエンタメ性が加わり楽しくなりそうだ。
「日本発の文化や伝統が世界で愛されているように、日本人が心地良い、面白いと思うものは世界にも通用するというのが、私の信念です。アナログとデジタル、リアルとファンタジーを組み合わせて、日本のドリームシーカーにしかつくれない製品を今後も生み出していきます」
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