市場創出力

ビジネスモデルのリニューアルで生徒数が5倍に 完全オンライン英会話トレーニング「LAT」

H&K株式会社

代表

宇佐神 悟

写真/片桐圭(リンガフランカ) 文/竹田あきら(ユータック) | 2021.04.12

日本初のスパルタ式オンライン英会話トレーニング「LAT」を提供しているH&K株式会社の宇佐神代表。悩んだ末に出した結論から生まれた成功とは?

H&K株式会社 代表 宇佐神 悟(うさみさとる)

上智大学卒業後、日本IBM株式会社に入社。営業部長まで昇進するも、独立したい思いを叶えるために、2015年に20年のサラリーマン生活を卒業し、「H&K合同会社」を設立。日本IBMでの経験を活かしてコンサルティング事業を手掛けていたが、「勉強」ではなく「トレーニング」によって外国語を話せるようになるプログラムを全国に広め、日本の英会話習得のスタンダードにしたいという思いで「LAT」の事業を開始。

英会話は半強制的に話す“筋トレ”により身に付く

日本初のスパルタ式オンライン英会話トレーニング「LAT」(Language Acquisition Training)は、「反射復唱法」と「ALCA式レッスン」の2段構えで英会話を習得するITサービス。宇佐神代表曰く、英語を話せるようになるには、ペンを持って熱心に英語学習をするよりも、海外で生活するなど、英語を“喋らざるをえない状況”に身を置くことが重要なのだ、と言う。

「英語は筋トレと同じです。繰り返し発音することで、英語を話す筋肉が鍛えられます。日本の学校教育では『作文+音読』を教えますが、頭の中で作文をしていては英語は話せません。英会話は言葉のキャッチボールです。考えずに反射的に返答するトレーニングが必要です」

反射復唱法は、毎日30分スマホで日本語と英語を聞いて、即座にそれを翻訳・発声する特許認定のトレーニング。練習時間が専属コーチに伝わる、専用のシステムとなっている。コーチを失望させないために、サボれないという生徒も多い。

「フィットネスジムでパーソナルトレーナーをつけると成果が出るのと同じ理屈です。専属のコーチとは平日の決められた時間に7分~10分のレッスンを行います。ALCA式レッスン(Ask-Listen-Correct-Ask)と名付けていますが、コーチは生徒に質問を投げかけて(Ask)、あとは生徒に英語で話をさせます。『ひな祭りについて教えて?』と質問されたら、生徒は何とかしてひな祭りをコーチに説明しなければならない。説明を聞いた(Listen)コーチは生徒の英語を正しい表現に直します(Correct)。そしてさらに質問をする(Ask)。こうして外国人との実践的な会話に「慣れて」いただきます。英会話において大事なのは、「習う」ことより「慣れる」ことです」

ビジネスモデル見直しによる生徒数の増加

2017年にスモールスタートしたオンライン英会話トレーニング事業。最初は既存の各種ITツールを活用して、低コストで運営していた。しかし、2018年、当初想定していた損益分岐点にたどり着いたとき、宇佐神代表はビジネスモデルが破綻していることに気が付いた。

「損益分岐の生徒数に達したとき、これ以上生徒を増やすには、管理するスタッフを増員しなければならないことが判明しました。せっかく黒字化したのに、スタッフ増員をすればまた赤字に逆戻り。そしてそのループは果てしなく続きます。そこで、悩みに悩みぬいて、まとまった資金を投入して専用のシステムを開発することに決めました」

2019年は、生徒数を増やすよりもシステム開発に力を入れた。そして約1年かけて専用のシステムが出来上がったとき、世界はコロナ禍に見舞われ、オンライン需要が急増した。宇佐神代表が改良したオンライン英会話トレーニング事業も、その流れに乗り生徒数が5倍に増えた。

IBMでの人脈を使ってシステム開発会社に依頼。ITサービスとしてリニューアルした「LAT」で海外進出を目指す。

「2019年のシステム開発の決断がなければ、コロナ禍の生徒急増に対応できなかったと思っています。多額の資金を必要とするため、システム開発はリスクのある決断でしたが、世の需要にマッチする結果となりました。生徒数とスタッフ数の正比例関係を修正することができ、事業の利益率が大幅にアップしました」

コロナ禍で生徒数が増えたのは事実だが、宇佐神代表は、このままオンライン需要が続くのを願ってはいないと語る。

「開発したシステムを使って、中国人向けのオンライン英会話トレーニングと、日本人向けのオンライン中国語トレーニングを新たに始めたいと考えて動いています。そのためには、コロナ禍が収束して元の世界に戻ってもらいたい。事業をスタートさせるのに、中国でマネジメントを担当してくれる人材を探しに、中国へ行きたいですね」

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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