スーパーCEO列伝

中小企業の“目”となって泳ぐ、ゼロ円男の矜持

株式会社ネクシィーズグループ

代表取締役社長 兼 グループ代表

近藤 太香巳

文/箱田髙樹 写真/宮下 潤 | 2022.02.10

反転攻勢の始まりだ。ネクシィーズグループの中核事業である、企業や自治体が環境設備品を“初期投資ゼロ”で導入できる「ネクシィーズ・ゼロ」は、すでに7万8000以上の企業へLED照明や業務用空調設備、厨房機器などを提供。コロナ禍で厳しさ続く中小企業の経営を後押しする。同社はさらに領域を広げ、就業者の高齢化や労働力不足を課題とする農業分野に進出し「スマート農業」を促進。ネクシィーズグループはいま何を目指し、どこまで突き進もうとしているのか。近藤太香巳代表に伺った。

株式会社ネクシィーズグループ 代表取締役社長 兼 グループ代表 近藤 太香巳(こんどう たかみ)

1967年11月1日生まれ。19歳のとき、50万円を元手に会社を創業。34歳でナスダック・ジャパン(現ジャスダック)へ株式上場し、37歳で2004年当時最年少創業社長として東証一部に上場。2015年グループ2社目が上場を果たす。エネルギー環境事業、電子メディア事業、経営者交流団体「パッションリーダーズ」のいずれも日本一の規模にまで拡大。新プロジェクトであるセルフエステBODY ARCHI(ボディアーキ)を全国に展開中。常に新しい事業領域にチャレンジを続け、ビジネスパーソンから若者まで情熱あるリーダーとして圧倒的な支持を得ている。世界的経済紙・Forbes(フォーブス)による『Forbes Asia’s 200 Best Under A Billion 2018』に選定。『JAPAN VENTURE AWARD 2006』最高位経済産業大臣賞受賞。『シーバスリーガル ゴールドシグネチャー・アワード2019 Presented by GOETHE』ビジネスイノベーション部門受賞。2020年、業界をリードする環境先進企業として、環境大臣より「エコ・ファースト企業」に認定。

集まれば、最強になれる

「ネクシィーズは『スイミー』のようなものなんです」

近藤太香巳代表は自身の企業グループを指して、そう言った。

『スイミー』は、言うまでもなくオランダのレオ・レオニが書いた絵本の名作。小さな魚たちが集まって大きな一匹の魚のフリをすることで、大海原でもおびえず、強く生きていけるようになるストーリー。ほかの仲間たちと体の色が違う主人公のスイミーは大きな魚の目の役割を担って、皆を勇気づけながらリードする。

「中小企業一社一社は小さい。けれど、集まればすさまじい力を発揮できます。私たちは皆さんのそんな力を集めて、存分に発揮してもらうための“目”の役割。グループの中核事業である『ネクシィーズ・ゼロ』はその最たるものです」(ネクシィーズグループ 近藤太香巳代表、以下同)

2012年に同社が立ち上げ、現在の主力事業となっているのが「ネクシィーズ・ゼロ」だ。メインの顧客は飲食店や美容室、小売店といった店舗運営を手がける中小企業。店舗やオフィスに必要なLED照明や厨房機器などの設備を“初期投資ゼロ”で揃えられるのが大きな特徴である。

なぜ、そんなことができるのか? 秘密は“モノの融資”と表されるビジネスモデルにある。

導入企業に負担の無い「ネクシィーズ・ゼロ」の仕組み

設備投資はたいてい銀行から融資を受け、購入かリースで揃えるのがスタンダードだ。しかし、与信取引が難しい中小企業には簡単なことではない。

そこでネクシィーズグループが間に入る。企業が店舗やオフィスに導入したい設備を、ネクシィーズグループがメーカーから代わりに仕入れて提供。本来かかる高額な初期費用は不要、毎月のサービス料のみで最新設備を導入できる仕組みだ。

中小企業・地方自治体の設備投資における課題解決をサポートする「ネクシィーズ・ゼロ」の仕組み 図:ネクシィーズグループHPより

投資資金は、提携するメガバンクを中心とした金融機関から700億円を調達。導入企業に代わり、与信を肩代わりする。

「サービスを磨き上げたり、良いモノをつくることにリソースを注ぎ込むのがビジネスのセオリーです。しかし、中小企業は設備投資にそのリソースを奪われがちです。『ネクシィーズ・ゼロ』を使ってもらえば大幅に設備投資が抑えられる。その分、ビジネスの王道にヒト・モノ・カネを費やしてもらいたいんです」

日本企業の99.7%が中小零細企業といわれる。これらの企業が「ネクシィーズ・ゼロ」を活用することは、日本経済そのものを活性化することに等しい。実際、サービスインから10年、いまや7万8000件以上もの店舗や事業所が「ネクシィーズ・ゼロ」を使い、初期投資ゼロで設備投資を実現している。まさにスイミーの役割を、ネクシィーズグループが買って出ているわけだ。

サービスを通して環境へも貢献

「ネクシィーズ・ゼロ」が扱う商材は現在44万8000点、サプライヤーは300社にも及ぶ。先述通りLED照明や最新の業務用空調設備など、導入するだけで電気代などのランニングコストが大幅に下がるものばかりだ。つまり導入企業が増えるほど、日本のエネルギー消費が抑えられ、地球環境に貢献することにつながる。

「今まで利用いただいたお客様だけで119万トン(2021年9月)のCO2排出削減に貢献できています。2025年9月までには新潟市の人口約80万人が1年間に排出するのと同じ、150万トンまで削減したい」

環境への貢献は世界からも評価されている。ネクシィーズ・ゼロ社は資金調達の安定化に向けて、金融機関からの700億円に加え、「ネクシィーズ・ゼロ Green Finance」としてリース債権の証券化を実行し、2021年、米大手格付け機関であるムーディーズの「Aaa(sf)」格付けを取得。地球環境に貢献するLED照明を主な対象としたリース債権の証券化における最高ランク格付け取得は、世界初となる快挙である。

「10年間積み上げてきたものが、今ようやく大きく結果を出し始めています。もっとも、根っこはずっと変わらない。19歳のあのときから持ち続ける情熱と姿勢で事業を続けています」

“ゼロ円男”の矜持

1986年、近藤代表は19歳で起業。携帯電話や衛星放送、Yahoo! BBのブロードバンド契約などを日本一多く販売することでネクシィーズグループは名を馳せてきた。ストロングポイントは、ひとつのビジネスモデルに集約される。“初期投資ゼロ”戦略だ。

例えば創業期に手がけた携帯電話。本来、最初に支払う契約料だけで20万円ほどが必要だったが、これをネクシィーズグループが与信を引き受けることで、月々の支払額に“ならし”て支払えるようにした。若者や学生でも気軽に携帯電話を所持できるようにしたわけだ。

その後の衛星放送もブロードバンドも、そして今の「ネクシィーズ・ゼロ」も同じ。ユニークなアイデアで初期投資ゼロを実現。導入のハードルを低くすることで、誰でも公平に良質なサービスをすぐに受けられる、そんな世界をつくり上げてきた。

「先日あるテレビ番組に出たとき、ディレクターに『近藤さんは“ゼロ円男”ですね!』と冷やかされました(笑)。ただ、実際そうだし、ゼロ円男としてのプライドもあります。世の中の課題や不満を、アイデアと営業力で解決したい。そして新しい価値を生み出すのが、私たちの理念ですからね」

理念を形にするときの条件が3つある。

①世の中の流れをつかんでいるか
②お客様の課題をつかんでいるか
③自分たちなら解決できるか

この3つが当てはまらない限り、近藤代表は動かない。

「『ネクシィーズ・ゼロ』もそうです。世の中の流れとして①『CO2削減と省エネ化の推進から、LED照明への切り替えのニーズが高まっていた』、ただ、お客様の課題として②『LED照明の切り替えは膨大なコストがかかり負担感が高かった』、しかし、③『ネクシィーズなら携帯電話やブロードバンドで培った初期投資ゼロのスキームが生かせる』と踏んだ。3つが揃ったから事業化したのです」

肝要なのは3つ目、初期投資ゼロのスキームの横展開だ。

設備投資における初期投資ゼロは、中小の飲食店や小売店の与信を肩代わりすることで実現している。中小は大手に比べて債権回収や焦げ付きのリスクは高い。だから金融機関も小さな飲食店などへの融資を渋る。

しかし、ネクシィーズグループはそれまでに携帯電話やブロードバンドの領域で、初期投資ゼロのビジネスを進めてきた。債権回収のリスクを大いに理解した上で、着実に顧客と売上、そして利益を積み上げてきた実績があった。

「この実績はどの金融機関にもありません。だからメガバンクも『ネクシィーズならば』と信用して調達資金を用意してくれた。ムーディーズの格付けも同じです」

また、地銀や信用金庫など地域金融機関は「ネクシィーズ・ゼロ」の販売代理店として提携し、今も増え続けている。地方都市における地銀などの信用力は極めて高い。提携を広げたことにより都市部のみならず、地方にも「ネクシィーズ・ゼロ」の導入企業が増え始めているという。

また、地方自治体への導入も2021年9月期で100件を超えるなど、2年で倍増。県庁舎や公立学校、図書館といった公共施設に「ネクシィーズ・ゼロ」による設備投資が存在感を増している。

LED照明から空調設備、冷蔵機器、分煙設備までニーズに合わせた設備をスピーディに提供する「ネクシィーズ・ゼロ」 図:ネクシィーズグループHPより

新しい領域、「スマート農業」へ

この勢いで、さらに大きな新規市場にも挑むという。

「“農業”です」

農業市場の大きなニーズは“効率化”に尽きる。少子高齢化と相まった労働力不足が深刻で、国際競争も激しさを増すばかりだ。しかし、効率化には大きなコストが伴うため多くの農家が踏み出せずにいた。

例えばIoT(モノのインターネット)を活用したスマート農業の仕組みを導入すれば、合理化も効率化も図ることができ、収益性も高まる。しかし、全国農業会議所の調査(平成28年度)によると、98.5%がIoTの代表的機器である環境制御システムを未導入だ。

ハウス栽培も、ネクシィーズグループのテストマーケティングによると200件以上の農家の7割以上が「ハウス建設を希望」しながら、数百万~数千万円の初期投資がネックとなって導入を見送っている。

そこで近藤代表は、「ネクシィーズ・ゼロ」の“モノの融資”のスキームを用いて、ハウスから栽培・モニタリングシステム、換気や温度管理の設備まで、スマート農業に必要な一式を初期投資ゼロで提供。農家の誰もが効率化を実現できる環境をつくり上げた。

「『ネクシィーズ・ゼロ』で積み上げてきた10年間の実績と、そのまま横展開できるビジネスモデルがあるからできることです。農林水産省の関係者に提案したときに言われました。『これまで多くの企業が農業への参入を表明してきたが、ここまで具体的なアイデアを示したのはネクシィーズだけだ』と」

露地栽培に比べてハウス栽培は約3倍の収益が見込めるという(ネクシィーズグループ調べ)

スマート農業を取り入れることで、作業の見える化・業務改善・効率化・省力化が可能に

日本の未来のために、中小企業の力を

SDGs、環境問題、地域振興、少子高齢化――。こうした社会課題への取り組みを叫ぶ企業は数多くある。しかし、美しいキャッチフレーズは目にすれど、実際にどこまで課題の解決に寄与しているのかは、はっきりしない場合が多い。

「私たちネクシィーズは携帯電話からスマート農業にいたるまで、一貫して個人や中小企業をはじめとした数多くのお客様に寄り添って信用力を得てきました。地に足のついた営業で全国へサービスを届け、そして初期投資ゼロをベースにした、徹底した顧客目線とビジネスモデルでもって、結果として環境問題や地域振興、少子高齢化といった社会課題に貢献してきました。

営業の強さと“0円”ばかりが注目されがちですが、そのおかげで生まれる結果にこそ注目してほしい。これからも、社会課題解決に結果を出し続けていきますよ」

36年の長きに渡ってビジネスモデルを次々に生み出し、挑戦を続けてきた近藤代表。アイデアの源泉はどこにあるのだろうか。

「シンプルに言えば『楽しいから』です。とにかく新しいアイデアを考えるのが面白い。だからこそ徹底的に研究できるんですよ」

例えば定額制のセルフエステという新業態で、既存のエステ業界に風穴を開けた「BODY ARCHI(ボディアーキ)」。フランチャイズ事業を「ネクシィーズ・ゼロ」のスキームを活用して、初期投資ゼロで立ち上げられるという画期的なものだが、このビジネスモデルを導くにあたり、エステ業界の現状と課題から徹底的に調べあげた。

エステサロンの伸び悩みとフィットネスクラブの多様化を背景に見いだされた新たな商圏に新業態を投入 図:ネクシィーズグループより

周辺業界であるフィットネス業界の最前線はどうなっているか? スケールさせるためのFC事業化はどう運営できそうか? サブスクリプションの最新事業は? コストパフォーマンスで圧倒的なコストコのビジネスモデルを転用できないか?と雑多に、幅広に貪欲に研究し尽くす。

「一見、関係ない業界を研究することが大きなヒントになることも少なくありません。イノベーションの基本ですが、別の業界、別の領域の常識は、自分の業界の“未常識”ということも多々ありますので」

»「ビジネス」と「ブランディング」2つのカリスマによる奇跡のタッグ 「BODY ARCHI」誕生秘話 

運営する経営者団体「Passion Leaders(パッションリーダーズ)」の価値のひとつもそこにあるという。

「今は全国に9拠点、4200名の経営者の方々が参加してくれています。業種・業界は本当にさまざまですよ。だからこそ価値のある情報が得られる。しかも、全員がアツい情熱をもった実業家ですからね。パッションリーダーズを通して直接、見聞きする情報は私にとってもかけがえのないビジネスシーズを見つける場になっています」

東日本大震災直後に発足したパッションリーダーズは、いまも全国の経営者の心に情熱の火を灯し続けている。

パッションリーダーズは2021年4月で発足10年周年を迎え、名実共に日本有数の経営者団体に。押し上げられるように社会的責任も高まっている。今後は会員のニーズを集めて、国や社会に“大きな声”として届けていくことにも力を入れるという。

「中小企業が集まることで大いなる影響力を持ち始めている。その責任にふさわしい形で、皆さんの声をもっと大きくしていきたい。日本をもっともっと良くしていきたいんですよ」

スイミーはまだまだ泳ぎ続ける。その眼を輝かせ続ける。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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