ユーグロナコンサルティング株式会社
代表取締役
徳島健治
写真/芹澤 裕介 文/竹田 明(ユータック) | 2021.02.10
ユーグロナコンサルティング株式会社 代表取締役 徳島健治(とくしま けんじ)
複数のSIer等で会計系システムのSEとして設計・開発を手掛け、調査・分析、制度設計およびシステム基本構想・企画などコンサルティング業務にも従事。2003年にERPコンサルティングを主な事業ドメインとするユーグロナコンサルティング株式会社を設立し、代表取締役に就任。個人の自由と個性、自律性を重視した経営スタイルで、ベンダーやSIerから厚い信頼を得ている。
システム開発会社の中には専門領域を持ち、強みにしている会社がある。ユーグロナコンサルティングも、そんな高い専門性を持った開発会社のひとつだ。
「当社は、会計や人事、購買などの基幹業務システムのコンサルティング、ERP等のパッケージ導入に特化したシステムコンサルティングの会社。いわゆる上流工程、要件定義やビジネス設計を強みにしますが、導入の最後の最後まで担当することも当社の特徴です」
ERPとは、経理システムや人事システム、販売管理、購買管理など、企業活動の中心となる業務システムを一体化した形で提供するITソリューション。それぞれの業務で個別のシステムを導入し複雑なインターフェースで運用するよりも、共通化したデータと一体化した機能で業務効率が上がるだけでなく、企業のシステムへの負荷は下がる。
「ERP導入は、顧客企業のビジネスに合わせプログラム開発をせず、パラメータ設定によりシステムをデザインすることが基本です。自社システムをゼロから開発する『スクラッチ開発』に比べて実現スピードも速く、コストも抑えられ、プロトタイピングも容易なので導入品質も高くなります」
ただし、ERPパッケージを最大限に活用するには、顧客が製品のコンセプトやいわゆる「たてつけ」を理解する必要性があると徳島氏は続ける。
「ERPとは、目的達成のため会社業務全体を最適化することです。例えば業務ユーザーにとって使い勝手が良いシステムでも、情報システム部でメンテナンスにこれまで以上に手がかかるようなら、全体で最適化できているとは言えません。
業務間でも同様です。極論すれば、導入の目的により、現状より大変になるユーザー部門もあるかもしれません。『ERPパッケージ導入=作業が楽になる』と考えているクライアントは少なくありませんが、単純な費用対効果だけの話ではないのです。
つまり私たちは、目の前のお客様の笑顔だけを追いかけてはいけない。目の前にいるのは、会社の一部門を代表する担当者であって、その背後には連携する他の業務に携わる部署の担当者もいれば、システムを保守する情報システム部門もあり、データを活用する経営陣もいます。
全体を意識した視点で“お客様の要件以上”の最適化を提案するのが私たちの仕事だと考えています」
ユーグロナコンサルティングのコンサルタントは、製品、機能の長所、短所だけではなく、製品の設計思想にまで及ぶような特徴、考え方を最初に説明し、極力製品の特長や長所を活かす導入を提案すると徳島氏は語る。
「製品の特性や構造を最初から正しく理解してもらうと、顧客は製品の制約や短所への理解や対応策への検討もスムーズです。しかし、顧客にコンセプトや特性を理解していただかないままだと、業務要件の名のもと、現状業務通りや思い描いている通りにつくることを余儀なくされます。
例えば導入するERP製品のデータの持ち方と全く異なる考え方のデータ作成が必要となり、そのためのプログラムの追加開発も必須、その結果、つじつま合わせの機能も膨らみ、最悪の場合、解決できない不整合が後々判明することもあります」
ERP導入は、経験がものをいう世界。世界で最も高いシェアを持つ製品の一人前のコンサルタントになるには「10年」かかるとさえ徳島氏は言う。
「導入のセオリーの教科書もパラメーター設定のマニュアルもありません。顧客に『こんなことはできますか?』と問われても、経験がなければ『調査します』『テストしてみます』としか言えませんが、長くERP導入を手掛けてきたコンサルタントなら、過去の経験から即座に分かります。
そのリスクや制約もわかっていますので、顧客との打ち合わせもスムーズかつスピーディーに進みます」
ユーグロナコンサルティングには、経験を積んだERPコンサルタントやSEがそろう。さらには大企業向けのERPパッケージ導入だけでなく、中小、中堅企業向け国産パッケージの代理店、ソリューションパートナーでもあり、若手のメンバーは中小規模の導入を通じて、仕事を段階的に学べる環境を整えている。
しかしこれからの課題は深刻だという。
「デジタル化の波のなか、基幹システムは業種を問わず大手企業では事業そのものと言ってよいでしょう。先に述べたような私たちがここまで培い、遂行してきたERPへの向き合い方だけでは、いわゆる2025(2027)年の崖に対応できないことは明らかです。
企業にとって基幹システムの刷新は、これまでのように営業的にモデルチェンジされた新車に乗り換えるようなものではないことは、ちょうどこれからの自動車の在り方と同じです。
事業会社ではIT人材の内製化も進みますし、さらに私たちのような小規模企業は日本社会の中での存在意義さえ問われる時代となっています。そこに答えを出せないと生き残ることはできないでしょう」
vol.56
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