社会保険労務士法人 ARIA Solution
代表社員
伊藤 治雄
写真/若原瑞昌 文/吉田正広 | 2022.02.10
社会保険労務士法人 ARIA Solution 代表社員 伊藤 治雄(いとう はるお)
立教大学法学部卒業。第一生命保険相互会社退社後、中小企業での勤務や旅行会社の立ち上げに参画。行動科学、マーケティング、心理学、NLP(神経言語プログラミング)、コーチングなどをベースにした、豊富な経験と独自に構築した理論で、これまでに300社以上の企業を支援。趣味の海外旅行は64か国にもおよぶ。
例えば期待して入社したのに、会社の雰囲気が合わず辞めていってしまう新入社員。あるいは、資金や人材に恵まれているにも関わらず思ったほど成果が出ない、とへそを噛む経営者。
「何かしらの阻害因子があって、人も会社も伸び悩んでいます」
こう話すのは、ARIA Solutionの伊藤代表。なぜ伸び悩むのか? ビジョンがないからだという。
「例えば、結婚と同じで互いに同じ価値観で分かり合えていると誤解するから問題が生じます。こんな人(会社)だと思わなかったという失望のせいで、社員は入社してみたけれど会社のイメージが違うからと辞めていくし、チームの場合はお互いの特性や価値観、多様性を認め合うことができず、バラバラになってしまい、個々がもっているポテンシャルを存分に発揮できません」
伊藤代表は、現社員の“のびしろ”を伸ばして戦力化し、業績の向上や社員の定着率アップを図る「のびしろコンシェルジュ」だ。社員だけではなく、社長の本当はどうなりたいのか?の想いから潜在的なビジョンをあぶり出し、全社に共有することで個々の社員が「今なにをすべきか」という目標を分かり易く言語化し、それを評価制度と絡めることで、個人の成長や貢献が会社の業績向上に繋がるという仕組みをつくり出している。
具体的には、社員研修によるチームビルディング力の強化や、社員の思考特性をあぶりだす効き脳診断をはじめ、個々の持ち味や能力を引き出す、行動科学理論を用いた仕組みづくりなど、様々な手法を用いて企業と社員の“のびしろ”を引き出していく。では、それぞれの“のびしろ”を伸ばすことでどのような効果があるのか?
「先ず、社長と社員が共通言語をもつことで、社長は「いったい、何度言ったら自分の言っていることを分かってくれるんだ!」というストレスから解放されますし、社員は会社のビジョンを理解することで『なにをすべきか』が分かり、自分で考え、自発的に成果を出す行動ができるようになります。
また、それに応じた評価の仕組みがあるということも、人材力の強化に繋がります。社員がポテンシャルを発揮するための環境づくりは重要ですから、そういった意味でも評価制度を見直し、自分に期待されている成長や行動、結果がわかるようになることは大切です。
さらに、成果を出すための社員の行動プロセスをモデル化し、それを社員に落とし込むことで全社員が戦力社員として活躍できる流れをつくり出すこともできます。社員と会社、ともに“のびしろ”を伸ばすことで持続性の高いトータル的な業績向上が望めます」
ARIA Solutionでは、企業のビジョンを段階的に実現するために、企業理念を社員に浸透させるビジョン共有研修や、働く社員のワクワク感を引き出す現場変革コンサルティング、企業のライフサイクルに合わせて「働き方改革」を実現するための組織開発コンサルティングなど、様々な状況に対応できるサービスを用意している。なかでも、日本型ジョブ型という考え方を土台にした人事制度の構築やコーチングを応用した社内フィードバック1on1の仕組みを構築するなど、「人」の可能性を伸ばすことを強みとする。人はそれぞれ違うという多様性があることを認識し、各人の特性を見極めた上で「効き脳」を意識した采配をすることも重要だという。
「ハーマンモデルの診断を用いれば、人は4つのタイプに大別できます。Aはロジカルに物事の設計図を書き上げるのが上手い人。Bは決めたことを着実に計画的にこなせる人。Cは他人との関係性を意識し、皆を巻き込むのが上手い人。Dはアイデアを出すのが得意な人。例えば、Dはアイデアを出すが実現性に欠ける。それをAが仕組みに落とし込む。Cは“みんなでやろうぜ!”といって周りを巻き込み、Bが実現するために着実に進捗管理を行っていくといった具合です」
タイプが違うからこその相乗効果により、互いを補いあう機能的なチームビルディングが実現するという。
「経営者にはAとDが多い傾向なので、自分の会社の状態を踏まえ、不足しているプロセスのタイプの人材を採用する戦略が叶えば、1+1が3にも4にもなります」と具体的に組織の“のびしろ”を引き出す手法を示した。
奏功しているのは社員研修だ。
「仕事の感覚で研修を受けても、ただ良い話を聞いたで終わってしまい、結実しません。ビジネスゲームを楽しみながらチームビルディングに関わる気づきが得られるように導きます。例えば、ひとつのフラフープを9人で運ぶという課題。各人が人差し指だけで支えます。簡単そうに思えますが、“自分はちゃんとやっているはずなのに、なんで他の人は……”などという誤解から生じる問題を、ゲームを通じて体感してもらいます。これが意外と難しく20分以上掛かってもできないケースが多いんです」
社員研修は短くても1件につき2~3時間。ひとつのコンサルに携わる時間は長いので、1日にこなせる案件は多くて3つまでだ。それでも今年は昨年の3500万円を越える年商が見込まれるという。
「コンサルした企業の売上が半年で1.5倍になりました。それを聞いた私がびっくりしています」
紹介が紹介を呼び、ひとりで賄うには体力的にきつくなってきたとうれしい悲鳴も上げる。
「今後は誰でもできる再現性の高い仕組みを構築して、同じ志をもつ仲間を増やすのが目標です。また、出版などを通じて組織開発のコアなエッセンスを広めたいと思っています」と伊藤代表。自身の“のびしろ”もまだまだ引き出せそうだ!
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