株式会社いま-みらい塾
代表取締役社長
歌崎雅弘
写真/田村和成 文/中野祐子 | 2021.06.10
株式会社いま-みらい塾 代表取締役社長 歌崎雅弘(うたざき まさひろ)
1979年、兵庫県伊丹市生まれ。中学、高校で打ち込んだアメリカンフットボールの強豪でもある京都大学への進学を志望。偏差値40から80に倍増させ、合格する。卒業後、スポーツメーカー、専門商社で11年間活躍し、2016年「株式会社いま-みらい塾」を設立。自らの経験に基づく学習の方法を啓蒙し、2020年に早押しクイズ型学習アプリ「はやべん」をリリース。2021年、理想の学びを実践する株式会社STORY MAKERを設立。
「京都大学に進学します」。高校3年の夏、高らかに宣言した歌崎氏。その時の偏差値は京大には程遠い40。にもかかわらず、80まで倍増させ、合格を果たしたのだ。
「勉強の目的はひとつ、テスト当日に京大合格レベルに達すること。限られた時間を無駄にしないため、過去の出題傾向から取捨選択し、配点や努力効果の高い要素を集中的に勉強。次に問題を解いたら誤答を抽出するのですが、単に解き直すのではなく、改善を図ることで偏差値が上がり、合格=成功を獲得しました」
この経営方法にも相通じる勉強法と成功体験は、歌崎氏の「成長哲学」となり、多くの子どもや保護者に伝え、教育改革や社会貢献も果たしたいと、「自学力」を学ぶ「いま-みらい塾」を設立。大逆転の経歴も目を引き、塾生が集まったが、たちまち経営危機に陥ったという。
「子どもの成長を最優先に指導し、『学び方を身につけたら、塾は必要ない』というばかり。当然、塾生は辞めていき、私はホームレスになってしまいました」
財産はおろか、生きる意味も失ったという歌崎氏。どん底から這い上がるきっかけは、やはり自らの哲学だった。
「何の迷いもなく京大合格に突き進んだあの時の気持ちが甦り、自分の決意に全身全霊を注ごう、と改めてスイッチが入りました」
それからは自学力の重要性やノウハウを一貫して丁寧に指導。塾生も自ら勉強に取り組むようになっていったという。
軌道修正した歌崎氏は「成長哲学」をいっそう啓蒙するため、新たな戦略に乗り出す。
「暗記や計算といった要素はスピードが重要。速い回答は、記憶の定着度、内容の習熟度が高い証で、私は京大合格のために速さを徹底的に鍛えたのです。そこで早押しクイズ型の学習アプリ『はやべん』を開発。他の利用者と速さを競うランキング、失敗と向き合う復習モード、モチベーションを上げるポイント報酬など、さまざまな機能を搭載しました」
低コスト、若い世代への高普及率からLINEアプリとしてリリースした直後、新型コロナウイルス感染防止対策により全国の学校が休校。それに伴い、経済産業省が自宅学習ツールの紹介サイトを開設すると耳にした歌崎氏は、「子どもたちが楽しく自宅学習できるのは『はやべん』しかないと確信しているし、起業家と名乗る以上、既存の枠から飛び出すことも必要」と、担当者に電話をかけて掲載を直訴。スピード学習の効果に加え、その熱意も伝わり、掲載に至ったという。さらにLINEのオンライン学習サービス「LINE study」の正式アプリ認定、18自治体のICT学習ツールへの採用、日本漢字検定協会との連携も果たし、利用者は瞬く間に1万人を突破。「楽しみながら勉強できる」と好評を得ている。
「現在は、『はやべん』の法人普及も進めています。そのひとつが飲食店などのマニュアルを習得させる人材教育利用。今までは実地研修が主流でしたが、社員もアルバイトも自学が可能で、適応力や接客力の定着、向上が図れます。もうひとつ、イベント・広告宣伝利用では、『はやべん』でキャンペーンクイズを行い、回答速度上位入賞者にプレゼントを進呈。企業や商品への認知向上、購買も期待できます」
他にも資格取得勉強や認知症予防など『はやべん』の活用領域は無限という歌崎氏。新たに「株式会社STORY MAKER」も設立するなど、勢いを止めない。
「新会社では、子ども向けの起業家教育、学校や家庭での悩みについて対話できる場の提供、保護者の子育てコーチングも行う予定です。誰もが平等に自学力を身につければ、塾に行かずとも高い知力を養え、教育格差などの問題解決も図れるはず。私の『成長哲学』で世界中の学習文化も教育の在り方も変革していきます」
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