ヒラメキから突破への方程式
株式会社ガールズアワード
代表取締役
長谷勇希
2013.10.10
株式会社ガールズアワード 代表取締役 長谷勇希(はせゆうき)
1978年東京都出身。学生時代よりイベント企画運営事業に従事。'09年、株式会社ガールズアワードを設立。 GirlsAwardは、「ファッションと音楽の融合」をテーマとし、「渋谷からアジアへそして世界へ」というスローガンの下、'10年5月の第一回目を開催を機に、政府機関や自治体などの後援を受けながら、先日'13年9月に開催された「GirlsAward 2013 AWTUMN / WINTER」では第8回目の開催を迎えた大規模イベント。(13年9月開催時、述べ3万4千人を動員) 今後世界の人々に日本の若者が作り上げたファッションと音楽を波及するため、ヨーロッパやアジアで開催を予定している。
9月28日、国立代々木競技場第1体育館に延べ3万4千人もの動員を集めて盛況に執り行われたガールズアワード2013 A/W。このガールズアワードを4年前に立ち上げ、国際的なイベントにまで育て上げた男。それが長谷勇希ガールズアワード代表取締役である。
長谷社長がイベントをプロデュースするようになったのは、そもそも学生の頃。イベントサークルに入り、みんなで集まってワイワイ騒ぐためのイベントを企画していたという。
「規模が大きくなってきた頃に、転機が訪れました。女子大生を2,000人集めて、商品サンプリングができますよ、と言えるイベントになった頃から、スポンサー企業が付くようになってきたんです」
ニーズに応えて、ファッションショーのコンテンツも加えた。初めは1ブランドからスタートしたのが、回を重ねるに連れて3ブランド、5ブランドと増え始め、いつしかプロのモデルやタレントもキャスティングするような、いまのスタイルの原型を取るように。
「当時、六本木のディスコを昼間100万円程の会場費で借りれたんです。チケットを2,000円にして4,000人に売ると、もう800万円になるわけでしょ。正直、衝撃の儲けでした(笑)」
大学卒業の頃、進路を考える時も、長谷社長は迷うことなどなかった。これまで手掛けてきたイベントの分野で、もっと大きいことを、もっと面白くやりたい。テレビにも出る、話題の種となるように育てたい――そんな思いで、自ずと起業の道を選んだ。ひらめいたのは、海外旅行に出掛けた時。
「日本の女の子は、世界中のどの国の女の子よりもオシャレだって気付いたんです。日本のファッションを、もっと多くの女性に着て欲しいなと思いましたね。渋谷からアジアへ、そして世界へ。夢ができました」
ファッションイベントを仕事に――だが滑り出したビジネスは、すぐに壁にぶち当たってしまう。それまで手掛けてきた規模のイベントでは、商売にはなっても、ニュースにはならなかったのだ。
「どうせやるならもっとビッグにしないと意味がない」――長谷社長は30歳を迎えた時、飛躍のための一世一代の賭けに出た。
「日本一のファッションショーをやりたい」——長谷社長はかつての仲間たちや世話になってきた関係者等に声を掛け、2億円もの出資を募った。モデルや芸能人のキャスティングには苦労したが、自らアポを入れ、情熱を伝えることで、何とかハードルを越えられた。
そして2010年5月、国立代々木競技場第1体育館を会場に開催された第1回ガールズアワード。芸能人やアーティストまで巻き込んだ、新しいエンターテインメントとしてのファッションショーは大いに話題となり、テレビや雑誌を賑わせた。
たんなるファッションショーで終わらない。それがガールズアワードのユニークな強みだ。スズキの軽自動車「ワゴンRスティングレー」がイベント当日にモデルの富永愛、山田優、道端ジェシカと共にランウェイに登場した様子はそのままCMとして撮影され全国で放送された。
また、ドクターシーラボや、ヤマノビューティーメイトなどの企業との取り組みの一つとして、コラボ商品開発から、商品キャラクターとなるモデル、タレントのキャスティング、またその商品をステージ上で発表し、その模様は各メディアに取り上げられた。
「イベントで儲けようというのは、はなからなかったんですよね。ビジネスポイントは、服を売るプラットフォームの構築にあると思っていたので。話題になるイベントは、日本だけでなく世界で売るためのライブ形式の展示会になると信じていました」
このビジネスモデルを成立させるために、長谷社長が今年組んだパートナーは、eコマースの最大手である楽天であった。
「ランウェイの写真が、そのまま楽天にアップされる仕組みをつくりました。渋谷や原宿で売れているファッションを、国内はもちろん、台湾や香港やシンガポールでも買えるようにしたいんです」
長谷社長は、ガールズアワードを誰もが注目するような一大イベントにすることで、国内はもとより世界のメディアにもバイヤーにもエンドユーザーにも訴求できるというスケールメリットを味方に付けたのだ。
「国境を越えることのできるeコマースの手段を、いつも考えていますね。メディアの情報にはいつもアンテナを張っていますし、業界の人たちとは毎日のように会って情報交換しています。何より、街の女性たちのリアルな声にもいつも耳を傾けています」
現在、航空会社のピーチとコラボし、ラッピング飛行機を3機飛ばしているという長谷社長。これも、日本の「カワイイ」文化を世界に発信していくための手段だという。
「日本のファッションは世界一だから。エンターテインメント性も含めて、これを世界に発信していこうという目標は一貫しています。中国で、とかいうと当たり前に聞こえても、例えばラスベガスでショーをやる!とかいうと、面白そうでしょ? ビジネスとは別に、観に来てくれた人に単純に面白かったといって貰えることをやりたいですね!」
vol.56
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