文/桑原 恵美子 | 2021.08.10
相聞コンチェルトは、離職者を出さないための企業内での不調者対応・予防対策などのEAP(従業員支援制度)を自社で実施する仕組みづくりを企業に指導している会社だ。そのノウハウの礎となっているのは、代表の渡部富美子氏の産業カウンセラーとしての豊富な経験だ。
渡部氏はヤマト運輸株式会社の社員教育で300名の接遇インストラクターを養成したのをきっかけにカウンセリングに興味をもち、同社を退職後に産業カウンセラー、キャリアコンサルタント資格などを取得。さまざまな現場でカウンセリング業務を経験した後、株式会社レンタルのニッケンに入社して「健康相談センター」を立ち上げる。その後、全国に散らばる支社を12年間かけてまわり、全社員約3000名へのカウンセリングを実施。結果、300人ちかくもいたメンタル不調者をわずか4名までに減少させることができたという。
そのノウハウを社会に広めたいと考えた渡部氏は、独立して2019年に相聞コンチェルトを設立。渡部氏の活躍を耳にした出版社から本の出版を提案されたことをきっかけに、自身の体験をもとに職場のリーダーへのアドバイスをまとめた本を執筆。2021年6月30日に Clover出版から「お節介オバチャンの“職場のシンドイ”一刀両断‼」を上梓した。
本には、渡部氏がカウンセリングで実際に出会ったメンタルの不調を引き起こす典型的な社員のタイプ20例と、それぞれに「GOODな対応」「BADな対応」、そしてリーダーへのアドバイスが紹介されている。「GOODな対応」に共通しているのは、部下の話をとことん聞くこと。
「ほとんどの方が、自分自身についてじっくり話をすることで、メンタルの不調の原因が自然に見えてくるんです。この“自分で気づく”ということが、とても重要なのです」
コロナ禍が長引き労働環境が激変するなか、メンタルの不調を抱える人も激増している。カウンセリングの果たす役割は今後、さらに高まりそうだ。
「産業カウンセラーが一般的なカウンセラーと違うのは、その企業の文化や現状をよく知っていること。身近な立場から悩みを聞いて事例と向き合えるから、効果的に職場環境を改善できるのです。企業はもっと産業カウンセラーを活用して欲しいですし、社会全体がもっと気軽にカウンセリングを受けられるようになって欲しいですね」
vol.56
DXに本気 カギは共創と人材育成
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
代表取締役社長
井上裕美