文/志田彩香 | 2021.10.11
例えば、イギリス人やアメリカ人がクリスマスの時期だけに半分冗談で履きそうな一風変わったデザインの靴下などがそうだ。この靴下の購買データは、ニッチな嗜好を持つ消費者の存在を浮き彫りにする。
二宮「一見、ん?と思うような商品を取り扱っているブランドが米セラシオでは買収されていたりします。個人的には絶対売れないよねって思うものでも、数字や実績はちゃんと出ているので不思議です。
消費財の世界にはいわゆる大手企業がターゲットにするマスマーケットというのがあって、その一方にニッチな商品群、いわゆるロングテールが存在しています。今でこそ、ニッチなニーズの存在は当たり前ですが、これまでその情報はあまり表に出てきませんでした。
でもECのおかげで、実はここがちゃんとセグメントとして成り立っていることがわかった。そして今、そのロングテールが少しずつロング&ファットテールになりつつあるのかなと感じています。マスマーケットで満足していた人たちが『もうちょっと“とんがった”モノが欲しいな』と思い始めている。
このプレファレンス(好み)の世界は、自分の頭の中では計り知れないものがあって、蓋を開けてみたらそこには1万人とか10万人単位のファンがいることも珍しくありません。我々やメディアが知らないこういった事実が、ECだとデータで見えるんですよ。(米セラシオ共同創業者の)カルロスとは『自分の感覚を信じるんじゃない』とよく話しています。そういうケースも含めて譲渡していただくのがこのビジネスの面白いところです」
vol.56
DXに本気 カギは共創と人材育成
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
代表取締役社長
井上裕美