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外国人労働力を日本の力に、日本経済の将来をつくり上げる「新日本人」

2021.01.12

ベトナム/モンゴルの理工系大学と提携し、有能な若手エンジニアを日本企業に正社員として紹介する人材採用支援サービス「SKYWORKS(スカイワークス)」。外国人採用にまつわる諸問題を一手に引き受け、万一離職した際にも無償で新しい人材を再紹介し続けるサブスクリプション型のサービスモデルを設けている。日本の社会問題である「労働人口の減少」の解決について、「SKYWORKS」を提供するSkywork株式会社の代表取締役・加藤侑氏が語った。

日本での就職を希望するベトナムの学生たち

日本政府の拙い政策もあるが、少子化の影響で労働人口が減少し、日本企業が人手不足に陥って久しい。戦後の第一次ベビーブームで生まれた「団塊の世代」がリタイアを迎え、彼らの子どもたち、いわゆる「団塊ジュニア世代」も50代になろうとしている。

現代の日本は(1227人/1日)人口減少しており、年間50万人あまりが自然減している。外国人労働力を(23万人/年)受け入れているが、それでも年間27万人づつ減少している。そして、生産人口減は年間70万人以上にも及ぶのだ。しかも、コロナ渦においては新規入国受け入れを封鎖しており、人口減少は歯止めが効かない。

このように、日本の労働人口の減少は、今後さらに深刻さを増すと言われている。

そんななか、労働力を海外に求めようとする動きもある。とりわけ東南アジアは若年者人口も多い。治安や労働環境が整い暮らしやすい日本は、東南アジア各国の若者の就業先として、高満足度を与えていると加藤氏は語る。

Skywork株式会社の代表取締役・加藤侑氏。

「中国の台頭やアメリカの成長に比べて、近年の日本は経済的に伸び悩んでおり、二流国とさえ言われているが、ベトナムの若者にとっての日本は、未だ“憧れの国”のうちの一つです。アジア各国の経済成長が著しいといわれる昨今でも、給与水準は日本の方が高く、治安もいい住みやすい国、と言われています。当社が日本企業への就職をサポートしている人材は、理工系大学の学生。母国では学歴の高い層であり、その大半が中流階級以上の所得を持つ家庭の出身です。日本で就職することは、彼らの親御さんにとって名誉なことであり、安心も与えています」

安全で暮らしやすい日本の「地方」での就職も大歓迎

ベトナムとモンゴルの理工系大学の新卒、あるいは第二新卒の学生を、日本企業に正社員として紹介する「SKYWORKS」は、紹介先の日本企業を限定している。その“限定した企業”とは、電気・電子、機械、自動車の工場を地方に持つ企業である。

「弊社から紹介している学生はベトナムでは首都のハノイやホーチミン、モンゴルでいえばウランバートルと、殆どの学生が都市部の大学を卒業しています。しかしながら、彼らの出身はそれぞれの国のカントリーサイド。そのため、日本においても地方暮らしの方が馴染みやすく、『都心ではなく地方で働きたい』と希望する学生も多いのが実情です」

また、ベトナムには若くして結婚する文化があり、学生結婚も珍しくない。水も空気もきれいな日本の地方都市は、子育てをするにはうってつけの環境。その上、生活コストが低いため貯蓄もできる。彼らは東京での華やかな都市生活に憧れているわけではなく、“日本での豊かで安全な暮らしを目指し、キャリアアップしていきたい”と願っている。そのため、地方の企業で就業することは、ウィンウィンの関係性といえるのだ。

「高い日本語能力」は必ずしも必要ではない

日本の労働人口減少の解決策として期待される外国人の労働力。「SKYWORKS」に集う優秀な若者たちは、母国で学んだ知識を生かし、日本で真面目に働きたいと心から願っている。しかしながら、受け入れ側はというと“外国人はリスクだ”と捉えている日本企業がまたまだ少なくない。と加藤氏は指摘する。

「多くの日本企業が外国人労働者を採用する際、最も危惧されているのが学生の『日本語能力』です。日本語が流暢でないと、コミュニケーションが取れず、業務に支障をきたすと思われていることが多々あります。営業職や接客業など、お客様との高度なコミュニケーションを必要とする職種ならいざ知らず、工場で技術を生かして働くのに流暢な日本語を話す必要はありません」

SKYWORKSを利用する学生は理工系の大学の出身者。電気や機械系の業務を覚えるのに問題はない。会社のメンバーや地域の方々とのコミュニケーションは、ある程度の日本語を覚えていれば大丈夫。また現地の言語というのは、生活していれば自然に習得するものだ。加えて、SKYWORKSでは、eラーニングで日本語を学べるサポートも無料で実施するなど、受け入れ後のサービスにも力を注いでいる。

「SKYWORKSに登録している学生は、日本語でのコミュニケーションが最低限身についていると言われる、日本語能力検定3級程度の学生が多いのが特徴です。日本語能力検定1級でないと困るという企業もありますが、日本語能力検定1級にターゲットを絞ると登録者数は激減し、マッチングがうまくいきません。日本語能力検定3級程度から採用されることで、3万人の登録者の中から、より自社に合う人材を選定することが可能となります」

本気で日本で働きたい学生を選りすぐって紹介

外国人採用は一般的に4つのクラスに分かれている。経験と技術を兼ね備えた人材「エキスパート」、大学を卒業して学歴と専門知識を持つ「ミドル」、学歴はないが経験はある「特定技能1号」、学歴も技術もない「技能実習生」。外国人採用において最も活用されている技能実習生制度は、採用後の失踪や勤務態度の問題が度々指摘されている。これも、日本企業が外国人採用に踏み切れない理由のひとつとなっているという。

「技能実習生制度は、5年後には帰国しなければならないため、長期雇用が難しく、採用しても人材育成や長期ビジョンでの育成が困難です。また、技能実習生制度は人材のスクリーニングが十分でないため、モラルの低い人や就労意欲に欠ける人までもが、日本で働いているのが現状です。その結果、外国人労働者全体のイメージが悪くなり、日本で真面目にキャリアを築きたいと願い、勉強してきた優秀な外国人学生にとってはマイナス要因となっています」

Skyworkでは理工系大学を卒業した「ミドル」をターゲットにしており、現地での面接を徹底して行い、日本で一生懸命に働きたい学生だけを企業につないでいる。SKYWORKSを利用し日本に訪れた外国の学生たちが日本企業で活躍すれば、日本の「外国人労働者」への“偏見を含んだイメージ”は払拭されるだろう。と加藤氏は語る。

ブローカーの存在と外国人労働者への偏見の理由

日本の「外国人労働者」への偏見といえば、「外国人=犯罪者」という“勝手なイメージ”を抱いている日本人も少なくない。もちろん日本を訪れた外国人の全てが犯罪者である訳はないが、程度の差こそあれ、偏見を含んだイメージを外国人に抱いているケースは決して少なくないように思われる。加藤氏は我々日本人が外国人に対して“偏見を含んだイメージ”をもっている点に、一つの問題提起をする。

「SKYWORKSを始めたきっかけのひとつが、増え続ける個人事業主レベルの外国人労働者斡旋ブローカーの存在。アジア各国の『労働力の輸出』に関する現状が問題鬱積しています。

現地に日本語学校を設立して生徒を集め、留学生制度や技能実習生制度を利用して日本に渡航させます。お金のない学生に高額な料金を請求し、支払いが困難な人は“貸付”として不当な借金を背負わせられ、海外出稼ぎに駆り出されます」

在留期間内では借金を返済できないことから、不法滞在をして働いている外国人労働者が多い。日本へ渡航する目的が「お金」であることから、違法行為に手を染める外国人も少なからず存在する。そのため、「外国人=犯罪者」というイメージが植え付けられてしまっている。

「“働く”ということは『人の自由』のはずですよね。借金で身動きが取れないように仕向け、不当に働かせることは問題と感じ、Skyworkを立ち上げました。弊社では、日本へ渡航し、働かれる外国の方々からはお金をいただきません。人材によっては、当社で渡航費用を負担することもありますし、雇用先の企業が出してくれることもあります」

日本経済の未来を一緒につくり上げる「新日本人」

他社に先駆けて、無料で日本企業の就職先を紹介するこのサービスは、特にベトナムの大学生からの支持が多かった。登録件数が3万人を超え、現在も(70名/1日)増加している。Skyworkを介することで、日本企業への就職希望者は直接雇用を実現させ、「不当に高額な仲介費」を支払わなくても済むようになるという。

「ブローカーと呼ばれる人たちが、日本で働きたい外国人と日本の企業、その両者から不当な手数料を得る業者が跡を絶たないのが現実です。『学生は無料』というSKYWORKSのスタイルを広め、“日本で働くことで、借金に苦しむ人”をなくしていきたいと思っています」

留学生制度や技能実習生制度を利用して働く外国人は、ブローカーに支払う資金さえ用意すれば、誰でも日本に来ることができる。中には犯罪歴がある人や反社会勢力とのつながりがある人もいるだろう。その点、SKYWORKSでは、日本に渡航する学生へ厳重なチェックを行ったうえで、日本政府の出入国管理局の審査を経ている。また、現地スタッフによる面接により、学生の実家や親族のことまでも把握しているという。

そして「大学卒業」を最低条件として設けているため、ベトナムの中でも中流家庭以上の家庭で育った学生たちが多いのも特徴。このように日本企業も安心して雇用できるインフラを整備した。そして、『外国人が増えたからといって日本の治安悪化を危惧する必要も少ないと考えています』と加藤氏は主張した。

「日本の労働力不足を解決するには、外国人に働いてもらうしかありません。ただ、誰に働いてもらうかを見極めないと、日本の安全神話は崩壊すると考えられます。

Skyworkでは、ただ闇雲に労働力を受け入れるのではなく、“共に日本の将来をつくり上げていける外国人を日本に招く必要がある”と考えています。日本で規律正しく豊かな生活を営みたいと願う外国人を受け入れ、共に『新日本人』として歩むということが、日本の経済持続化には欠かせません」

“日本のものづくり”の仕事に夢と憧れを持ち、共に未来の日本を支えてゆく意思を持つ海外の若者たちに光を注ぎ続けてきた加藤氏の目と言葉には、世界とつながり、未来の日本を支え続けるという強い意思と光を感じた。

Skywork、まさに「独創性のかたまり」のような会社だ。「加藤氏の考える“独創性”とは何か」、次の取材で明らかにしていく。きっとヒントを教えてくれるだろう。

【動画インタビュー】人材採用の常識を変える、Skyworkの挑戦

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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