2017.06.02
ガラスという素材に取り組み続けるアーティスト西中千人が、「アートで地球資源の循環型社会を考える」をテーマに、ガラスびんメーカーとの共同プロジェクトによるインスタレーション作品を完成。日本橋高島屋1階のホールに展示中だ。
2mにも及ぶ煌くガラスのオブジェが立ち並ぶアート空間は、見る人の感覚や認識を解放し、自由なイマジネーションの世界へと誘う。光の彫刻、枯山水の庭、広大無辺の宇宙、理想郷、古代の神話、未来への想いなど、「見る力」「想像する力」を心地よく刺激する空間になっている。
このインスタレーションは芸術性、新規性に加え、もう一つのコンセプトがある。それは、びんのリサイクルから一歩進んだ、アートが環境問題を訴えるアップサイクルの実現だ。
市場から回収したガラスびん70%をリサイクルしたガラスを溶かし、巨大なアート作品を制作するのは、世界初の試みだ。作品は「一瞬と永遠」をテーマに、循環する命、資源について、一人ひとりが考えるきっかけを作ることを目指したという。
このプロジェクトは、ガラスの循環型社会を担う日本耐酸壜工業株式会社とのコラボレーションにより始動。日本企業の最先端技術と融合することで生まれたアート空間は「地球資源の循環型社会」に思いを巡らす契機となることだろう。
ガラス造形作家 西中千人
西中千人は、砕けたガラスの不完全な美しさの中に生命の儚さ、強さを表現してきたガラス造形作家。カリフォルニア芸術大学でガラスアートと彫刻を学んだとき「欧米の物真似ではない、日本人の感性から生まれるべき、私自身の表現を追い求めた」と言う。
茶碗のヒビ割れを敢えて金で継ぎ、景色として愛でる「金継」や、禅の思想から生まれ、侍の文化と共に発展した 砂利と石だけで滝や大海、宇宙観を表す「枯山水」庭園などにインスピレーションを得た、斬新なガラスアートで知られている。
「ガラスは割れる 人は死ぬ だから、今この一瞬を生きる」というメッセージとともに、彼の作品が発するのは「生命のエネルギー」。西中千人が新たに挑んだガラスアートの瞑想空間は、訪れる人に「一瞬に煌めく永遠」を体験させてくれる。
「悠久の種」W44 x D32.5 x H18cm
光(ガラス)の粒で生命の煌めきを表現した作品。
「穏やかな未来のために祈る」W61 x D16 x H43cm
森の空気のように静謐に佇み、穏やかな未来に向かって光と時間(とき)を導いてゆく ”トビラ” を 表現した作品。
「転生 焔(てんしょう ほむら)」W19.5 x D19.5 x H26cm
ヒビで生命の儚さと強さを表現した作品。
【プロフィール】
西中千人(にしなかゆきと)
1964年、和歌山県生まれ。星薬科大学卒業後、カガミクリスタル勤務を経て、カリフォルニア芸術大学にてガラスアートと彫刻を学ぶ。帰国後、1998年、ニシナカユキト GLASS STUDIO 設立。ロンドン、ニューヨークのアートフェア、国内百貨店美術画廊、美術展で作品を発表。自ら作った器を叩き壊し再び溶かして継ぐ「ガラスの呼継」、日本庭園にガラスを取り入れた「瑠璃庭園」など日本の伝統を礎にした新しい表現に挑む。2014年、吉川美術館 爲三郎記念館での西中千人展、ガラス=光を取り入れた日本庭園と数寄屋建築の中でのインスタレーション「夢で見た花」「補陀落」が注目される。第1回現代ガラスの美術IN薩摩」大賞、WIRED主催「CREATIVE HACK AWARD 2013」グラフィック賞受賞。
【問】日本橋高島屋 TEL:03-3211-4111(代表)
西中千人 公式サイト
http://www.nishinaka.com/
vol.56
DXに本気 カギは共創と人材育成
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
代表取締役社長
井上裕美