写真/海老澤芳辰(リンガフランカ)文/竹田 あきら(ユータック) | 2020.12.10
ITテクノロジーが爆発的に進化する現代。DX(デジタルトランスフォーメーション)がバズワードになっていることに象徴されるように、企業のデジタル化は避けて通れなくなっている。
DXとは、データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルをはじめ、組織、プロセス、企業文化・風土までも変革することを指す。
経済産業省は「2025年の崖」という表現で、既存システムの複雑化・老朽化・ブラックボックス化が今のまま解決されないと、国際競争への遅れや日本経済の停滞を招くと警告。企業に積極的なデジタル投資を促している。
各社DXは意識しているものの、中々行動に移すことができないケースも少なくない。そんななか、中小企業こそDXが必要だと、システム開発会社の株式会社リヴィティエ代表、佐藤紗耶子氏は指摘する。
「大企業には人材がいますが、中小企業は人材不足に苦しんでいます。今後、さらに少子化が進めば、その流れは加速するでしょう。デジタル化せずアナログな作業を残していると、事業継承に支障をきたします。たとえシステム化していても、レガシーシステムを使い続けていると、改修の連続で複雑化し担当者以外は把握できずブラックボックス化してしまいます」
システムがブラックボックス化する根本的な要因は、IT技術者の不足。IT技術者がいないからシステムの改修や保守に対応できなくなり、担当者が辞めてしまうと誰もシステムの内部を把握していないという恐ろしい状態になる。適切にシステムを運用できるエンジニアが不在となれば、システム障害やサイバー攻撃といったリスクにさらされる。
「IT技術者が不足している企業向けに、新サービス『ITサポート本舗』の提供を開始しました。Web・ECサイトの更新やサーバ保守、PCリモートサポートやITシステム運用など、DXに関連性の深い業務に対して総合的に対応します」
ITサポート本舗は、リヴィティエに在籍するエンジニアとWebデザイナーが、クライアントのシステムやWebサイトなどを包括的に請け負うサービス。チラシ・パンフレット、ロゴマークの制作や名刺デザイン、データ入力とITとデザインに関する仕事を選んで発注できる。エンジニアの仕事もデザイナーの仕事も、事業にもよるが中小企業からすれば専属を雇用するほどの作業量がないのが普通だ。しかし「ITサポート本舗」を使えば、必要な分だけエンジニアとデザイナーを起用することができる。
簡単便利にITエンジニアとデザイナーを活用することができる「ITサポート本舗」。実はこれが中小企業のDXの窓口になる存在なのだ。
中小企業がDXを実現できない理由は、ITに詳しい人材が社内におらず、何から手をつければ良いのかわからないから。日々の業務や提供しているサービスに対して、ITで解決できそうな課題を感じていても、ITスキルがないと具体的な解決策がわからない。
「社内にITリテラシーの高い社員がいない会社は、簡単なツールやシステムの選定すらできず、WordやExcelでさえも活用できていません。自社の課題をITで解決しようとシステム開発会社に相談すると、高額の見積書が出てきてDXを断念してしまいます。『ITサポート本舗』を使えば、いきなり大規模なシステムを開発するのではなく、既存システムを生かしながら、ITテクノロジーでビジネスと日々の業務をデジタル化することができます」
リヴィティエは技術力に長けたシステム開発が可能なため、いつでも「ITサポート本舗」の枠を超えた規模の開発を依頼することができる。
「システム開発はエンジニアとクライアントの信頼関係があって成功するものです。『ITサポート本舗』で当社のエンジニアを知ってもらい、反対に当社もクライアントのビジネスを詳しく知ることができます。そうすると、DXに向けたシステム開発もスムーズに進められます」
予算が少ない中小企業がDXを進めるには、どうしてもエンジニアやデザイナーを安価に使う必要がある。クラウドソーシングは、その解決策を期待されているが、問題もはらんでいると佐藤氏は指摘する。
「中小企業の経営者と交流する中で『フリーランスのエンジニアに頼んでひどい目にあった』という声を耳にします。開発を途中で投げだしたり、保守・運用を断られたりと。信頼関係を築けて、なおかつエンジニアを必要な時に必要な分だけ使えるサービスがないと、中小企業のDXは進みません」
中小企業こそDXを必要としているにも関わらず、IT業界は大規模なシステム開発を前提にビジネスモデルが構築されており、中小企業のDXに対応しきれていない。リヴィティエのように中小企業が置かれている現状を大きな社会問題としてとらえ、その解決に向けて動き出すITエンジニアが増えないと、日本のDXは進まない。
「自分が持っている知識や企画、発想をITテクノロジーと組み合わせて事業を創造したいというのが、私の起業理由です。10年間、クライアントの事業創造をサポートしてきて、いよいよ自分たちのサービスを立ち上げました。ITテクノロジーを気軽に使えることで、日本のDXは加速すると信じています」
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日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
代表取締役社長
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