スーパーCEO列伝

次代を創るビジネスに挑む!

株式会社 U-NEXT

代表取締役社長

宇野康秀

写真/宮下 潤 文/髙橋光二 マンガ/M41 Co.,Ltd | 2015.10.13

26歳で、将来の労働人口減少社会を読み人材ビジネスを手がけるインテリジェンスを創業。35歳で父親の後を継いだ大阪有線放送社(USEN)では来るべきブロードバンド時代を確信し“Fiber to the Home”に着手。45歳で立ち上げたU-NEXTではいち早く動画配信やMVNOを事業化。そして52歳の今、来る電力自由化に向け新電力事業参入を表明。

常に時代の先を読み、「10年後に花開くビジネス」にアプローチし続ける宇野氏。これまで3社を上場させ、経営者として結果を残す。そんなチャレンジを支える“信念”とは?

株式会社 U-NEXT 代表取締役社長 宇野康秀(うの やすひで)

1963年8月、大阪府生まれ。1988年、明治学院大学卒業後、リクルートコスモス入社。1989年6月に株式会社インテリジェンスを創業する。人材派遣サービス、人材紹介・人材コンサルなど総合人材サービスを展開し、2000年にはジャスダックに上場を果たす。その後、父の病をきっかけに、1998年7月に大阪有線放送社(現:株式会社USEN)の代表取締役社長に就任。それまで同社が抱えていた電柱の無断使用といった問題を改善するとともに、ブロードバンド事業に参入。2001年にマザーズへ上場する。2010年USEN代表取締役を辞任し(現取締役会長)、株式会社U-NEXTを設立。USENから譲渡されたインターネット動画配信サービス「U-NEXT」などを手がけ、2014年に自信止めとなるマザーズ上場を果たす。

将来を見据え、チャレンジする!宇野康秀の発想法

世の中にまだ認知されていない段階でも「10年後には絶対に来る」と確信。たとえ周囲から「クレイジー」と言われても、果敢に挑む。そんな法則で、数々の革新的なサービスを立ち上げてきた。代表的な5つの事業に、どんな思いで取り組んできたのか?

[発想法01]終身雇用の時代が終わる! 人材ビジネスの創業

新卒でマンション開発大手のリクルートコスモスに入社し、2年目にリクルートグループの仲間3人とインテリジェンスを創業しました。事業を検討している時に「日本では少子化が進行し、18歳人口が減少を始めている」という興味深い“事実”を知ったのです。このままでは、労働人口が減少する時代が来る。

当時、未来を予測する本が売れていましたが、これは予測ではなく100%確実な未来。ならば、新卒の終身雇用だけに頼ってはいられなくなり、必ず女性やアルバイト・パート、派遣、外国人を労働力として必要とする時代がくるはずと直感しました。

これは面白いビジネスになるに違いない。そう考えて、人材ビジネスに領域を定めたのです。時代はそのとおりに進展し、インテリジェンスは大きく成長しました。

 

[発想法02]高速インターネットが必要になる!“Fiber to the Home”に着手

大阪有線放送社を経営していた父親が病に倒れ、後を継ぎました。実は、同社のケーブル網は無許可で張り巡らせた違法なものでした。まずこれを正さなければならない。

一方、1998年の当時、ネットが進展し始めていましたがISDNすらまだない時代。このままでは日本のネットビジネスの進展は遅れる。ならば、ケーブル網の違法状態を解消する作業とともに、そこに光ファイバーの同軸ケーブルを張り合わせていこうと考えたのです。

すると『1.5メガのADSLで十分なのに、なぜ100メガも必要なのか?』と言われました。情報収集先のシリコンバレーで構想を話すと『クレイジー!』とも。しかし、ネットは速いに越したことはありません。圧縮技術では物足りなくなるはず。そう確信し、日本初の商用の光ファイバー網を構築、“Fiber to the Home”を実現。父から継いだ時の800億円という負債を一掃し、生まれ変わったUSENを2001年に上場をさせました。

[発想法03]個人が端末で動画を楽しむ時代が来る!動画配信サービスを事業化

光ファイバー網でネット環境は圧倒的に快適になりました。これだけ劇的にスピードが上がるなら、大容量の動画も配信し、快適に視聴できるに違いない。ならば、個人が見たい時に端末で動画を楽しむ時代が来る。これは画期的なビジネスになると確信しました。

しかし、この時もさんざん『ネットで映画を観る人なんていない』と言われましたね。映画は映画館か、レンタルビデオ店でDVDを借りてきて観るものでしたから。しかし、10年後には絶対にネットでオンデマンド視聴する時代が来るはず。そう信じて、2005年、USENで映像配信サービス「GyaO」をスタート。10年後の今、ネットにおける動画視聴は、もうすっかり日常の中に溶け込んでいます。

[発想法04]格安モバイルが必要とされるはず!MVNOへの参入

ガラケーに代わって、スマートフォンが劇的に普及し、モバイル通信も大容量・高速化してきています。ますますスマートフォンは便利になり、ユーザーの日常生活にとってなくてはならない必需品になっていくでしょう。

しかし、日本のモバイル通信は3社のキャリアに集約されていて、通信料はまだまだ高い。頻繁に使う人もいれば、あまり使わないという人もいて、もっぱら電話を使う人、データ通信に特化して使う人と様々です。だから、利用できるサービスや料金体系の選択肢は多いほうがいい。

そんななか、2012年にMVNO(Mobile Virtual Network Operator)が解禁されました。ならばチャレンジャーが必要です。我々も「U-Mobile」ブランドを掲げて参入。手がけているコンテンツ配信をサービスに組み込めることが強みと自負しています。事実、加入者伸び率はトップクラス。まだまだ『MVNOって何?』という人が多いですが、市場はかなり賑わってきています

[発想法05]“電力自由化”こそ新たな潮流!新電力(PPS)事業への進出

日本では、それまでの系統電力会社による地域独占体制から徐々に規制緩和が進展し、いよいよ2016年4月、家庭や小規模事業者などへの低圧電力販売が自由化されます。“完全自由化”時代が到来し、7兆円の市場が自由化される非常に大きなビジネスチャンスが目の前に広がっているのです。

東日本大震災で、消費者のエネルギーへの意識も高まっています。そして消費者は、「クリーンな電力を使いたい』『なるべく安い電気料金の電力会社と契約したい」といったニーズで電力会社を選べるようになるのです。こんな社会の大きな変わり目にこそ積極的にチャレンジし、我々のアイデアやサービス力を試したい。

なにせ、生活のライフラインという極めて重大な責務を伴う事業。既存の動画配信やMVNOなどのユーザーを中心に、メリットのあるサービス提供を通じて地歩を築いていきたいと考えています。

 

個人的なビジョンとしては映画撮影にチャレンジしたい

高校時代から映画が好きになり、それ以来映画監督に憧れています。高校3年の時に『汚れた英雄』という角川映画を観ましたが、監督は角川春樹さんでした。

私は経営者でも映画監督になれるのかと思い、ならばまずは経営者を目指してもいいと思ったのです。そして映画を配信するビジネスを手がけてきましたが、いずれはその映画をつくってみたいと今でも思っています。

また、私は登山も好きで、2013年にはアルプスの最高峰であるモンブランにも登頂しました。いずれは世界最高峰のエベレストにチャレンジしたいですね。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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