【イノベーション】中古車「ライブオークション」成功の秘密は優秀な外国人エンジニアの獲得(後編)|カープライス株式会社 梅下直也/林耕平|ヒラメキから突破への方程式|SUPER CEO

ヒラメキから突破への方程式

【イノベーション】中古車「ライブオークション」成功の秘密は優秀な外国人エンジニアの獲得(後編)

カープライス株式会社

代表取締役

梅下直也/林耕平

写真/高橋郁子 文/箱田高樹(カデナクリエイト) | 2018.05.12

中古車を売りたい個人と、それを仕入れたい中古車販売店を、ネット上の競売システム「ライブオークション」でつなげる――。2015年創業のカープライスは、日本の中古車流通に風穴をあけた改革者だ。同社のビジネスモデルを影で支える大きなカギが、オリジナルの“査定アプリ“だ。後編では「埋もれた才能をアサインできたからこそできた」という、その誕生秘話に迫った。

カープライス株式会社 代表取締役 梅下直也/林耕平(うめした なおや/はやしこうへい)

梅下直也/東京大学経済学部卒。2002年 三井住友銀行入行。2006年にロシアへ渡航、現地銀行設立プロジェクトの中核メンバーとして実務に携わる。2013年よりロンドンにてEMEA新興国(旧ソ連、東欧、中東、アフリカ)の現地企業向け大型ファイナンス組成などを手がける。2015年に銀行を辞し、同年11月にカープライス株式会社を創業。

林耕平/Babson CollegeにてMBA取得後、株式会社オーディアを設立し、オープンソース系のシステム開発サービスを提供。2010年にピクメディア株式会社にて日本初フラッシュマーケティングベンチャー「Piku(ピク)」の立ち上げに参画。その後も、ベンチャー企業と投資家をつなぐコミュニティーサイト起ち上げ等を経て、2015年11月にカープライス株式会社を創業。

前篇 はこちらからどうぞ。

ハードルだった「中古車査定」

ネットを介した「ライブオークション」によって、クルマを売りたい個人と、クルマを仕入れたい800の提携中古車社販売店を直結。これまで間に入っていた卸し業者を省き、中間マージンを削減することで売り手は「より高く」売れ、買い手は「より安く」仕入れられるようにする。

カープライスの画期的なビジネスモデルを支えるのは、言うまでもなく「ライブオークション」というネット競売システムだ。

カープライスの「ライブオークション」のイメージ。中古車のCtoB取り引きをネットオークションで行う。

もっとも、その成功を後押しした、もう一つのイノベーティブな仕組みがある。

中古車査定用のアプリ「カープライス査定」だ。

現物を見られないネットオークションのネックは「買い手がモノを直接、査定できないこと」に尽きる。とくに扱うモノが中古車となれば、査定項目も多く複雑。買い手がプロの業者にもかかわらず、売り手が素人の一般ユーザーとなるCtoBの「ライブオークション」では、ここに不安が生じそうだ。「素人の自己評価で、しっかりと正しい査定ができるはずがない」と仕入れるプロ側が考えるのは当然だ。買取専門業者や卸し業者が間に入っていたことは、この不安を担保できることにあったともいえる。

この課題を解決するため、カープライスではまず「プロに査定を任せる」スタイルにした。

具体的には、全国に数多ある自動車整備会社や板金工場とパートナー契約。クルマを売りたいユーザーはWebや電話でカープライスに無料査定を申し込むと、その後、150あるうちの最も近いパートナー企業が紹介される。店舗に直接訪問、もしくは出張査定で訪れたスタッフが、クルマの状態を無料検査。市場価格を参考にしたうえで“ウリキリ価格“を決めて、「ライブオークション」に出品する。そこに全国800の提携する中古車販売店がアクセス、10分間のオークションを経て、入札額が最も高い販売店が落札する、というわけだ。

「つまり、個人ユーザーが出品するとはいえ、プロの目でしっかりとした査定データが提示される。入札する中古車販売店にしてみたら大いに安心感が出るわけです。とはいえ…」とカープライス代表取締役の1人、梅下直也氏は言う。

「査定者がカンや経験だけで査定する、これまでの業界のスタイルでは品質が揃わない。また『中古車業界をフェアにオープンに…』という僕らの理念にもあわないなと考えたのです」(梅下氏)

ライブオークションの画面を前に説明する梅下代表。

経験やカンに頼らない査定の仕組みを、全国のパートナー企業に実施してもらうにはどうすればいいか――。

その答えがスマホやタブレットで使う中古車査定用の専用アプリ「カープライス査定」の開発だったわけだ。

暗黙知を形式知にするアプリケーション

「カープライス査定」では、目測して経験にあてはめて判断、紙にデータを記していた従来のアナログ的なスタイルを排除。カープライスのパートナー企業に専用のアプリを配布して、スマホやタブレットをタッチすればカンタンに査定データが電子化でき、ライブオークションにそのまま使える、という仕組みを採用したわけだ。

「これまで紙を使っていたアナログな現場を、デジタル化するのはやはり心理的なハードルも生まれやすい。そこで、なるべくスピーディーに直感的に使えるデザインと共に、一部、紙の査定書を踏襲したUIにしました」(共同経営者でテクノロジー担当の林耕平氏)

たとえばクルマのボディを平面の展開図にして表現した。部分ごとにタッチすると、「破損」状況や「修復歴」などにしたがって、手間なくレーティングできるしくみだ。展開図の表現は紙の査定書を踏襲したもの。一方で、レーティングを選択する規準は、査定のプロフェッショナルに丁寧にヒアリングしたデータから導き出したものだ。戸惑いなくアプリで査定できるうえ、査定業務のスピードアップもはかれたわけだ。

中古車用iOSアプリ「カープライス査定」の画面。

クルマの写真を「どう撮ればいいか」を角度ごとに線画でサジェストするしくみもうまい。

うなるのは、アプリシステムの裏側にアルゴリズムを走らせているため、例えば「走行距離が何万キロ以上」で「修復歴が一定以上」あった場合は、「これ以上うえのレーティングは押せなくなる」仕組みになっていることだろう。

「これによって、誰が使っても近似値が出やすい仕組みを実装できました。またアプリは常に現場のパートナー企業の方々からの声もすくいあげてブラッシュアップさせています。だから弊社はエンジニアの数がとても多い。ほとんどすべてを内製しなければ、タイムリーな改善はできませんからね」(林氏)

もっとも、現状、ITエンジニアは慢性的な人手不足な状況で、優秀な人材ほど「取り合い」という状態。スタートアップ間もないカープライスにとって、優秀なエンジニアの獲得は至難の業にも思える。

「確かに大変です。ただ僕らは、エンジニアの獲得に関しても、僕ら“ならでは“の解決法を見出した」(林氏)

林代表。ITエンジニアであると同時に、多くのベンチャーをすでに起こした経験を持つ連続起業家。

グローバルな人材を、続々とアサインできる訳

カープライスが社内に優れたエンジニアを抱えられている理由。それは訪日している外国人エンジニアを狙い撃ちしてダイレクトリクルーティングしているからだ。

「日本で働いている優秀な外国人エンジニアは、大手のIT企業やソフトウェアハウスに入っていることが多い。ただそうした会社はやはり分業的に一部の仕事しか手がけられないことが多く、『とがったベンチャーでサービスの立ち上げをしてみたい』と考えている人も多いのです」(林氏)

とはいえ、日本の小さなベンチャーとなると、英語などの外国語でマネジメントできる人間が大幅に限られる。一方で、カープライスの梅下氏はロシアで赴任と起業の経験もあるマネージャー。林氏もアメリカ留学と海外の起業家といくつもプロジェクトを立ち上げてきたマネージャー兼エンジニアだ。

「まあ、結果的に、ですけどね(笑)。ただ気がつけば、僕らは外国人のエンジニアをちゃんとマネージできる稀有な会社だった。『事業創業期のサービスづくりに携われる』という仕事の醍醐味と共に、『公用語が英語』という働きやすさから、他のITベンチャーと競合せず、彼ら外国人エンジニアを採用できた。このことが、すばやいシステムの改善を支えているんですよ」(林氏)

大手IT企業で不満を抱える「訪日外国人エンジニア」という埋もれていたリソースを、「無駄な手間とコストがかかっていた中古車売買業界」という満たされないニーズのために活用する――。この美しいビジネスモデルそのものこそが、カープライスの強さの秘密といえそうだ。

いずれにしてもカープライスは、システムもサービスも改善し続けていく。中古車市場の改革は、こうして生真面目に、着々と進んでいるのだ。

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vol.36

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ウォンテッドリー株式会社仲 暁子

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